【一二一】 諜報女子高生の編入
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
豊下秀美副首相と明里光夏大統領補佐官が、宝田劇団が入居している学園寮で待機していた。
豊下のホログラム携帯が鳴った。
「明里さん、徳田御三家の諜報女子高生三名が、まもなく到着するそうです。
ーー 管制塔から連絡がありました」
「豊下さん、大統領をお呼びしますか?」
「いいえ、その必要はありません。
ーー 大統領は執務室で待っているそうです」
黒塗りの空中浮遊タクシーが、豊下と明里の前に止まり、愛らしい顔立ちの女子高生が三人降りて来た。
神聖女学園と違う制服だった。
「豊下さん、明里さん、ご無沙汰しています」
水戸藩の水上泉だった。
「この間、近江でお会いしましたね」
明里が言った。
「そうよ、水上さん、あまり時間が経っていないわよ」
紀州藩の紀戸茜だった。
「まあ、どっちだっていいじゃない」
尾張藩の尾上ゆかりが間に入る。
明里が説明を始めた。
「みなさんは、ご存知かと思いますが、
ーー この度の特殊任務にあたり、
ーー みなさんには、しばらく学園寮で暮らしていただきます。
ーー 部屋に手荷物を置きましたら、私とご一緒してください」
諜報女子高生の三人は、明里の説明に従い私物を部屋に置き鍵を閉めた。
明里と豊下の後ろについて学園寮の地下に降りる。
五人は、リニア式水平移動エレベーターに乗り、女学園の地下玄関前に着いた。
「このエレベーター、横G凄いわね」
水上が言うと豊下が答えた。
「そうなんです。
ーー 稀に苦手な人がいます」
「やっぱり」
尾上が明里を見て微笑んでいた。
明里の表情が緊張している。
「じゃ、みなさん、徳田大統領の執務室に参りましょう」
「明里さん、ありがとうございます」
紀戸が言った。
徳田康代大統領と前畑利恵副大統領、そして織畑信美首相が待っていた。
生徒会役員の門田菫恋も一緒だ。
門田の手には、神聖女学園の真新しい制服が三着あった。
「お待たせしました」
『明里さん、ご苦労様』
「大統領、再びお会い出来て感謝しています」
尾上が三人を代表して言った。
「説明に入る前に、門田さんから制服を受け取ってください」
明里は、そう言うと門田を手招きした。
「みなさんの制服をご用意しました。
ーー デザイン以外の素材は前の物と同じ特殊素材になっています」
門田が言った。
特殊素材は防弾防刃に対応している。
徳田大統領と大統領キャビネットの制服も同じ特殊素材だった。
三人の諜報女子高生は生徒会室の更衣室を借りて着替えを済ませ徳田の前に戻った。
『水上さん、尾上さん、紀戸さん、
ーー 今回の任務は長くなるかもしれないの。
ーー あなたたち三人は、神聖女学園に編入となるわ。
ーー 元の学校に戻る選択肢は、自由よ』
「大統領、よくわからないのですが」
水上が言った。
徳田に代わり織畑が水上に説明した。
「今回、大掛かりな偽装詐欺の調査を御三家の女子高生支部に依頼したところ。
ーー 臨時転校が浮上して、
ーー 協議の結果、神聖女学園在籍となったのよ」
「織畑さん、私たち三人は、徳田幕府本部勤務ですか?」
「水上さんが言う通り、そう言うことね」
織畑のあと、前畑が本題に入る。
「この調査の目的は、悪の巣窟の一網打尽です。
ーー 偽装決済カードで原価率を操作しているグループが存在します。
ーー 皇国幸せ政策を妨害する者たちが暗躍しています」
「前畑さん、私たち三人が、その調査をして鬼退治するということですか」
『紀戸さん、鬼退治は、神々の仕事なので、裏取だけで十分です』
徳田は、そう言うと、天女天宮静女と神さま見習いのセリエを見た。
「康代よ、それで十分だ。炙り出すだけです」
「徳田大統領、こちらの方は?」
尾上の言葉を受けて徳田が紹介を始める。
『私の隣が側近の天宮静女、彼女は天女よ。
ーー そして、静女の隣が、“神さま見習い”のセリエさま。
ーー セリエさまは、最近まで女神アセリアさまの神使だったのよ』
諜報女子高生三人の顔色が、みるみる蒼褪めて行った。
「康代よ、あまり脅かすのじゃないにゃあ。
ーー 予は優しいから大丈夫にゃあ」
『セリエさま、失礼致しましました』
「康代よ。杞憂じゃから、予は失礼するにゃあ」
セリエは消えて光になった。
虹色の光に金色の光が混ざっている。
「セリエ殿、相変わらず派手でござる」
静女が言った。
「今のお方は?」
尾上だった。
「神さま見習いのセリエ殿でござる」
「静女さま、ありがとうございます」
水上が静女に礼を言った。
『じゃあ、みんな、ちょっと身体を温めにカフェに行きましょう』
「康代殿、静女も、“おしるこ”をと思っていました」
『そうね、もうクレープの季節じゃないわね。
ーー 門田さんも一緒に行きましょう。
ーー もちろん、水上さん、尾上さん、紀戸さんの三人もよ』
「康代さん、私が席を確保します」
『秀美、いつも悪いわね・・・・・・
ーー あら、もういない』
「豊下殿は、神出鬼没でござる」
『静女も変わらないじゃないの』
「私のは、転移魔法と変身魔法でござるよー」
康代も周囲も静女の変な言い訳にはぐらかされていた。
大統領たちと側近の静女を加えた六人に、門田とゲスト三人が加わった十人が、ショッピングセンターのカフェに到着した。
冬の夕日が窓から斜めに長く差し込んでいる。
静女は窓に張り付いた水滴を見つめていた。
「康代殿、水滴で窓が濡れてるござる」
『結露ね。新しいガラスが必要だわ。
ーー 最新のガラスなら、結露は起きないはずよ』
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三日月未来