【一二〇】 新しい敵の駆除に立ち上がる神聖女子高生
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
徳田康代大統領は、神さま見習いセリエの言葉を聞いて行動を起こした。
徳田幕府支部と全国生徒会会議に緊急招集を準備するように神聖女学園生徒会に伝えた。
生徒会室で幹部会が開催され、大統領キャビネットの織畑信美首相、前畑利恵副大統領、豊下秀美副首相、明里光夏大統領補佐官の四名も徳田と共に参加した。
副首相の豊下秀美が挙手して立ち上がる。
「徳田幕府の紀州藩、尾張藩、水戸藩には、先程、通知をしました。
ーー あと、全国生徒会会議にも通知済みです」
大統領補佐官の明里が豊下の説明を受け継ぎ立ち上がる。
「早ければ、明日の冬至に、
ーー ホログラムディスプレイでネット会議開催を検討したいと思いますが、大統領」
『明里さんの案でいいわ。
ーー 学園内も警備強化が必要になるわね。
ーー 但し、幸せ政策は、今まで通り継続よ』
前畑利恵副大統領が挙手して立ち上がる。
「今まで、当たり前と思っていた物の価値が偽物だったことが
ーー ある調査で判明しています」
『前畑さん、よく分からないのですが・・・・・・』
「大統領、例えば、ここに百銭の物があります。
ーー 儲け、人件費、配送費が含まれています。
ーー と考えてみて下さい」
『前畑さん、それじゃ、儲けなど微々たる金額ね』
「徳田大統領、そこに前悪徳政権時代の“秘められたカラクリ”があったのです」
『前畑さん、続けて・・・・・・』
「例えば、植民地支配下の物価推移が擬装されていたとします。
ーー 国民は、物価高に対して、仕方ないと嘆きながらも財布からお金を出します。
ーー メディアを抱き込んだ政策と偽の情報を流していたとしたら」
『前畑さん、何が言いたいのか分からないわ』
「つまり、前悪徳政権は、原価の横ばいを隠蔽して、
ーー 物価の底上げで利鞘を稼いでいた訳です」
『なるほど、それなら、
ーー セールしても、元が取れるどころか儲かるわね』
「それが、それだけなら、まだかわいいのですが、
ーー 実際は、利益を貪るための種を、幾重にも仕掛けていました」
『明里さん、それは、まさか幽霊会社のカラクリですか』
「はい、書類上だけの会社です。
ーー それを挟むことで価格を吊り上げていました」
『つまり、皇国の原価は、戦後二百年変わらず、
ーー 末端価格だけを上げていたのね。
ーー ちょっと、厄介ね』
「徳田大統領、前畑首相と協力して、調査を継続したいと思います。
ーー ただ、今の金融システムに影響はないかと」
「前畑さん、それは違うわよ。
ーー 相手は悪徳な心の持ち主よね。
ーー 利鞘を貪っていた陰の悪党よ」
織畑が言った。
『そうね、織畑首相の意見が正論ね。
ーー この件は、極秘に調査が必要ね』
「康代殿、極秘なら忍者のお仕事でござるよ」
天女天宮静女の言葉に生徒会室の空気が和む。
「そうか、そうだ・・・・・・」
『どうしたの豊下副首相』
「いいえね、徳田御三家の紀州、尾張、水戸の女子高生諜報員を、
ーー 緊急招集したく思いました」
徳田康代は、急に立ち上がり、豊下に言った。
『豊下さん、直ぐに彼女たちをこちらに呼んで下さい。
ーー 出来れば、当分、女学園の学園寮に滞在するようにお伝えてください』
「大統領、承知しました。直ちに」
豊下秀美は、廊下に出て行った。
徳田は、水戸藩の水上泉、尾張藩の尾上ゆかり、紀州藩の紀戸茜の三人の顔を思い浮かべた。
女子高生諜報員には似合わぬ美形の三人だ。
豊下が廊下から戻り徳田康代に耳打ちした。
『秀美、いつも仕事が早いわね。
ーー じゃあ、みんなが支部から到着したら、
ーー 光夏と一緒に入居の手続きをして上げて』
「分かりました。康代さん」
豊下も徳田を真似て小さな声で答えた。
神さま見習いのセリエが水色の制服姿で康代の前に現れた。
「康代よ、段取りは、順調かにゃあ」
セリエの言葉は、黒猫時代の癖が残っている。
『はい、色々と腐敗の実態が浮き彫りになって参りました』
「まだまだ腰を上げたに、過ぎんにゃぁ。
ーー 悪党どもは、水面下におるからにゃあ。
ーー 今度は、裁きの庭直行便を考えておるにゃぁ」
『セリエさま、チャーター便でしょうか』
「康代よ、あそこはにゃあ、天国と地獄の分かれ道にある庭にゃぁ。
ーー 行って無事に戻れる人間は、一握りもいないからにゃあ。
ーー 今回のゴキブリキャッチャーに並行世界は関与しないそうだにゃあ。
ーー あくまでもゴキブリ退治が目的じゃからにゃぁ」
『セリエさま、じゃあ、どうされるのですか?』
「鬼退治にゃぁ」
『鬼退治ですか?
ーー 並行世界のフィルター以外に何かあるのでしょうか?』
「ゴキブリキャッチャーがあるにゃあ」
康代は、セリエとの堂々巡りの会話に頭を抱き込んだ。
「康代よ。時間はあるからにゃあ。
ーー 焦らず、じっくり対処すれば良い。
ーー 奴らの梯子を外せば落ちて来るにゃあ。
ーー 康代よ、政府発行決済カードだにゃあ」
傍にいた前畑利恵がセリエの言葉に反応した。
「セリエさま、あの決済カードは徳田幕府が発注していますが、
ーー いくつか腑に落ちないことが起きています。
ーー 受注入札で民間企業の生き残りが落札していました」
『前畑さん、そこが最も怪しいわね』
セリエが前畑を見つめて微笑んでいる。
「前畑さんの天才の噂を聞いておるにゃあ。
ーー さすが、いい直感をしておるにゃあ」
「ありがとうございます。セリエさま。
ーー 流通通貨廃止で利鞘と考えただけです」
『前畑さんの天才脳は徳田幕府の宝ですわ』
「前畑殿、ババ抜きでござるな」
天女天宮静女が前畑利恵副大統領を揶揄った。
『静女ね、利恵が可愛いそうよ』
康代と静女は笑みを浮かべていた。
「康代殿、今日も綺麗な夕焼け雲でござる」
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三日月未来