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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
後編
119/169

【一一七】海路の日和を待つ神聖かるた会 その一

この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。

【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。


女子高生は大統領では、

徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。

『  』


皆さまの隙間時間でお楽しみください。

三日月未来(みかづきみらい)

 安甲晴美(あきのはるみ)は、試合前に、徳田、朝霧、逢坂に昔の(ことわざ)を伝えていた。


「私の好きな(ことわざ)は、”待てば海路の日和(ひより)あり“だ。

ーー 意味はな、知っていると思うが、今は状況が悪くとも、

ーー 焦らずに待っていれば、幸運はそのうちにやって来る・・・・・・」


「だからな、先生の言いたいことは(あせ)るなだ」


『先生、私もそう感じています。

ーー 焦りはミスの火種(ひだね)にしかなりません』


「徳田さんの言う通りだ」

安甲が言った。


 神聖女学園かるた部とかるた会は、近江大会で全員が紺色の(はかま)を着用していた。

着物は自由だったので、徳田康代は天宮静女のアドバイスで紫色を選んだ。

朝霧雫(あさぎりしずく)は鮮やかな朱色、安甲晴美は水色、逢坂めぐみは鮮明な原色の黄色を選んで準決勝に参加していた。




 Bブロックの安甲と逢坂の試合は中盤に動いた。

安甲のフェイント戦略に逢坂がお手付きを重ねて、逢坂は安甲にリードを許した。


神聖女学園の応援席は、固唾(かたず)を飲んで見守っている。


「セリエさま、康代も苦戦でござるよー」


「静女、心配ないにゃあ。康代で決まるにゃあ」


Aブロックも、朝霧のお手付きで徳田と朝霧の残り枚数が並ぶ。


 徳田康代は安甲晴美のようなトリックを使わない。

もっぱら正攻法を得意としている。




 応援の織畑信美(おりはたのぶみ)と豊下秀美が複雑な表情を浮かべていた。


「秀美、勝っても茨の道は変わらんな」


「信美さまの言うとおりでございます」


「この試合に勝者はいないあ、秀美」


「仰る通りでございます」


「秀美、()()()()、直せと言ったろう」


「はい・・・・・・」




 専任読手が札を取って、前の札の下の句を()みあげる。


 徳田、朝霧、安甲、逢坂の腰が浮き、四人は前傾姿勢となった。


 逢坂や朝霧は練習会で一字決まりの取りこぼしをしないように、徹底練習を重ねていた。

お経のように、声に出して口ずさんでいた。



 一字決まりと言えば、七枚すべてが黄金札と変わらない。


【さ】

“さびしさに”、

(しも)の句は、”いづくもおなじ“

【す】

“すみのえの“、

下の句は、“ゆめのかよひぢ”

【せ】

“せをはやみ”、

下の句は、“われてもすゑに”

【ふ】

”ふくからに“、

下の句は、“むべやまかぜを”

【ほ】

“ほととぎす”、

下の句は、“ただありあけの”

【む】

むらさめの”、

下の句は、”きりたちのぼる”

【め】

“めぐりあひて“、

下の句は、“くもがくれにし”



読手の声が会場に響いた。


「ほ・・・・・・」

空札(からふだ)だった。




 応援席では、前畑利恵と明里光夏が大きなため息を()く。


「前畑さん、かるたの空札って意地悪くないですか」


「まあね、ゲームですから、

ーー 空札ないと、トランプと変わらないでしょう」


「なるほど」

光夏だった。




【う】の二字決まりは、二枚だ。

“うかりける“

(しも)の句は、”はげしかれとは“


”うらみわび”

下の句は、”こひにくちなむ”


「ただありあけの・・・・・・、ただありあけの・・・・・・」

「うか・・・・・・」


 安甲と徳田は、【う】を聞いた途端に自陣札を押さえていた。

”うらみわび”が既に空札(からふだ)として出ていたからだ。


 競技かるたでは、出た札を把握できれば、相手より有利なれることを徳田も安甲も知っていた。

朝霧雫も逢坂めぐみも記憶域が限界に近づいている。

二人とも肩で息をしていた。


 安甲と徳田は()()()()()を使わない。


 右脳中心による()()()()()を使用していた。

文字でなく画像を脳裡(のうり)に浮かべる方法だ。


 僧侶が長い経文を覚える方法も()()()()()と言われているらしい。




 再び、読手が一字決まりを()み上げた。


 徳田と安甲の自陣にその一枚があった。

朝霧と逢坂が狙っていたが瞬時の差で押さえられる。


 試合は大きな変化が無いまま、徳田と安甲が残り一枚になった。

相手がミスすれば、決まる展開に徳田と安甲には余裕が(うかが)える。


 Aブロックは、徳田康代、Bブロックは、安甲晴美の勝利となって、決勝戦の相手が決定した。


 逢坂めぐみが安甲晴美先生に挨拶(あいさつ)している。


「先生、この試合が次で役立つように精進します」


「そうね、逢坂さん、素敵な試合でしたよ。ありがとう」

逢坂は、会釈して控えの間に消えて行った。


 朝霧雫も、徳田に挨拶して控えの間に移動する。




 C級会場準決勝で敗退した朝川夏夜(あさかわかよ)夜神紫依(やがみしより)の二人は、A級会場に徳田の応援をしに来た。


「徳田さん、決勝進出、おめでとう」

朝川だった。


 夜神も同じ挨拶をして宝田劇団の朝霧雫を励ましに行った。


「雫、残念ね」


「大丈夫よ。あのレベルになると運が大きく左右するわ。

ーー 大きなミスもしていないしね」


「なら、良かった。かるたもいいけど舞台もよろしくね」


「夜神さんに言われなくても、もう、頭の中は切り替わっていますから」


 朝川、夜神、朝霧の三人は声を上げて笑い合っていた。


「しかし、雫、そのド派手な着物、目立ち過ぎよ」


「そうかしら、夜神さんたちも地味に見えませんが、

ーー それに、ファンサービスにもなるわ」




 赤城麗華(あかぎれいか)大河原百合(おおがわらゆり)も駆けつけた。

後ろには、金魚のなんとかのようなメディアが付いて来ている。


「徳田さんの決勝が終わったら、今夜も稲葉旅館よ。

ーー そして、明日は東都に帰るわよ」


 宝田劇団のスター五人はスケジュールを確認していた。




「康代さん、お疲れ様です」


『光夏、ネット配信はどうですか』


「順調に再生回数を伸ばしていますよ。

ーー このまま行けば、第二次かるたブーム到来ですね」


『光夏の言う通りになるといいわね』




 ()()()()()()セリエと天女天宮静女(あまみやしずめ)が女子高生姿でやって来た。


「康代殿、決勝でござるよー」


『静女、まだ時間じゃないわ』


「康代にゃあ、これで終わりじゃにゃいからにゃあ」


『セリエさま、まだ、何か・・・・・・』

 お読みいただき、ありがとうございます!

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投稿後、加筆と脱字を修正をする場合があります。


三日月未来(みかづきみらい)

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