【一一四】競技かるた大会の二日目が始まるでござるよー
神聖女学園のかるた会の出場選手は、安甲晴美先生と同じ紺色の袴を全員が着用して二日目の試合に参加した。
会場の安甲は淡い水色の着物、逢坂は原色の黄色の着物、朝霧は明るい朱色の着物を着ている。
三人は前日と同じ着物でA級選手権大会に賭けた。
天女天宮静女のアドバイスを傍で聞いた豊下秀美が、近江着物レンタル店から取り寄せた紫色の無地の着物を、徳田康代大統領は着用していた。
安甲晴美が、徳田、逢坂、朝霧を呼びに来た。
「二日目の抽選があるそうよ。
ーー 一番から八番が二枚ずつあるそうよ。
ーー 同じ番号の人と当たることになるわ」
前日の試合の勝者の十六名は、予め決めた籤引き順に従って、組み合わせカードの番号札を取ることになった。
最初に安甲が箱の中から番号札を取り出した。
「安甲晴美です。五番です」
と、安甲は係に告げた。
ホワイトボードのトーナメント表の五番に安甲晴美の氏名を係が書き入れている。
徳田康代の番が来た。
「徳田康代です。一番です」
朝霧雫が番号札を取り係に告げた。
「朝霧雫です。四番です」
最後に逢坂が、目を瞑り祈りながら、箱の中に手を入れ番号札を取り出した。
「逢坂めぐみです。八番です」
安甲が三人に言った。
「神聖女学園の同士討ちは準決勝まで無くなったわね。
ーー この先は、あなたたちの運次第よ。
ーー 本番も練習と同じ気持ちで頑張りましょう」
徳田康代大統領キャビネットの明里光夏は、インターネット配信を全国女子高生会議に報告している。
豊下秀美も明里を積極的にサポートした。
織畑信美、前畑利恵の二人は、マイペースで康代の応援に徹していた。
神さま見習いのセリエと天女の静女は、まだ到着していない。
徳田幕府の女子高生支部は厳戒警備を継続している。
徳田幕府の諜報女子高生も見張りの位置に着いた。
水戸藩の水上泉、尾張藩の尾上ゆかり、紀州藩の紀戸茜の三人だ。
徳田康代が第三世界の大統領だからだ。
「徳田大統領、水上です。
ーー 警備は、万全ですからご安心ください」
『水上さん、いつも悪いわね。
ーー 今夜、良かったら三人で私の所に来てください』
「そんな、勿体ないお言葉」
と、尾上が言った。
紀土も頭を下げている。
『さあさあ、頭を上げてください』
安甲たちは、トーナメント表に書かれた氏名を確認した。
現役かるたクイーンの川霧桜は、Bブロックの七番だ。
八番の逢坂めぐみが準々決勝に進出すれば、川霧と当たることになる。
「逢坂さん、あなたラッキーよ。
ーー 現役クイーンと対戦できる可能性があるわ。
ーー 先ずは目の前の勝利よ」
「先生、ありがとうございます」
Aブロック
一番二名、徳田康代。
二番二名
三番二名
四番二名、朝霧雫。
B
ブロック
五番二名、安甲晴美。
六番二名
七番二名、川霧桜
八番二名、逢坂めぐみ
トーナメント表を見ていた安甲に川霧が声をかける。
「安甲さん、今回は準決勝で当たりそうね」
「川霧さんと違い、
ーー 私なんかは、目の前の試合しか見えませんよ」
川霧と安甲は、目には見えない女の闘いの火花を散らしていた。
朝霧と逢坂は、二人の火花を感じて武者震いに似た心の昂ぶりを感じた。
『朝霧さん、朝川さんと夜神さんの今日のご予定は』
「あのお二人は、地下のC級会場です。
ーー C級開催は一日だけだそうです」
『朝川さんと夜神さんは、頑張り屋さんですから・・・・・・。
ーー 早く上に来るよいいわね』
「あら、徳田さん、お誘いですか」
朝川だった。
『地下で試合じゃなかったの』
「夜神がね、気になるからトーナメント表を見て来いと言うのよ」
と、朝川が言った。
『夜神さん、本当、そう言うところありますね』
徳田が朝川に言って振り向くと夜神が徳田を見ていた。
「徳田さん、私たちの試合は、
ーー 誰も注目していないけどね。
ーー ここは違うのよ」
『分かるわよ。夜神さん、
ーー でもね、C級勝たないとB級には上がれないのよ。
ーー だから、頑張って下さい』
「そうよ、先輩、早く戻って頑張って下さい」
朝霧が、朝川と夜神に言った。
朝川夏夜と夜神紫依は、渋々A級会場を離れて行った。
「徳田さん、昔は、会場があちこちに離散していたけど、
ーー この新しい会場には、いくつもの部屋があるので便利になったわ」
『私は、昔から同じなのかと思っていましたわ、先生』
女子高生警備に田沼と若宮が職質を受けている。
豊下秀美が駆け寄り、警備に説明をしていた。
警備は、豊下に頭を下げながら注意を伝える。
「このお二人に、入場許可証バッジをお渡しします。
ーー 今から衣服の見える場所にお付けください」
「豊下さん、ご迷惑をお掛けして・・・・・・。
ーー ごめんなさい」
と田沼が、気不味そうな低い声で言った。
田沼の若草色のスカートスーツと、若宮の水色のスカートスーツが競技かるた大会会場には不釣り合いに見えた。
「田沼さ、若宮さん、
ーー じゃあ、応援席に行きましょう」
織畑信美、前畑利恵と合流して五人は応援席に着いた。
明里光夏大統領補佐官は、インターネット配信準備に忙しかった。
安甲が徳田、逢坂、朝霧を呼んだ。
「ちょっと時間が早いけど、
ーー みんな会場に入るわよ」
初日の勝者の十六名が次々に会場の中に消えた。
中では、担当の司会者が応援席に向かって注意事項を説明していた。
明里が、手配した配信用カメラが大きな部屋の四隅に配置されている。
地下会場と違い、カーテンの隙間から時より冬の木漏れ日が斜めに差し込んでいた。
専任読手が入場して、審判もそれぞれの位置に着く。
専任読手の合図で参加者がかるたを並べ始めた。
かるたが並べ終わり、専任読手が時計を見ながら、暗記時間十五分の開始を宣言した。
「暗記始め」
応援席の端に、神さま見習いセリエと天女天宮静女が現れ、テレパシーで会話を楽しんでいる。
「セリエさま、始まるでござるよー」
「そうにゃあ、静女、始まるにゃあー」
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三日月未来