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女子高生は大統領 〜家康が女学園の女子高生に転生した〜  作者: 三日月未来(みかづきみらい)
後編
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第二十五章【一一二】全員初戦突破でござる!

康代の会話は二重鉤括弧を使用しています。

『  』

 神聖女学園のかるた会の精鋭四人が指定された席に着いた。

司会が試合会場中央横の壇上から、参加者全員に注意を申し渡している。


 着物に袴姿のかるた協会専任読手(せんにんどくしゅ)が入場して参加者に簡単な挨拶をした。

A級一回戦の個人戦は、暗記時間終了のあとに始まった。


 専任読手が壇上から序歌(じょか)を詠み上げた。


「なにわずに さくやこの 花冬ごもり

ーー いまを春べと 咲くやこの花・・・・・・

ーー いまを春べと 咲くやこの花」


 空気が張り詰め凍りつくように思える時間がむず痒い。

夢星瑤子専任読手の手がゆっくりと箱の中に入れられた。

一枚のかるたを拾い上げ詠み始める。


 三字決まりの[は行]の(かみ)の句は、四枚ある。


ーー はなさそふ

ーー はなのいろは

ーー はるすぎて

ーー はるのよの


[はな]が二枚。

[はる]が二枚。


 小野小町(おののこまち)の和歌だった。


「はなの・・・・・・」


 安甲晴美元クイーン、徳田康代、逢坂めぐみ、朝霧雫の四名が幸先の良い立ち上がりで連取して始まった。


 空札(からふだ)が四回続いても四名は微動だにしない自陣戦略の守りかるただ。

四名の自陣には大山札(おおやまふだ)がなかった。


 大山札の上の句の六枚が読まれても無視するように安甲は指導していた。

自陣だけで有利に運ぶ戦略だ。


[あさぼらけ]二枚

[きみがため]二枚

[わたのはら]二枚


 大山札の六枚は、すべて空札(からふだ)で終わった。


 安甲のフェイント戦略が功を奏して相手は“()()()()”を繰り返した。


 安甲、徳田、逢坂の順に勝ち抜け、宝田劇団の大スターの朝霧が残り一枚の札を待っている。


 朝霧の手元の下の句は紫式部の

[くもがくれにし]


上の句は、[めぐりあひて]

一字決まりだった。



 専任読手が運命を決める札を箱から抜いて詠み始める。


「め・・・・・・」


 朝霧雫の身体が微塵も動かずに、右手が優しく自陣の札を押さえた。


 対戦相手との挨拶を終えて、四人は試合会場の廊下に移動した。


 次の試合までの合間の休憩時間を四人はそれぞれに楽しんでいた。




 安甲は薄い水色の着物に紺の袴に着替えていた。

徳田は薄ピンクの着物、逢坂は黄色の着物、朝霧は朱色の着物だった。

袴の色は全員紺色だ。


 朝霧の着物と外の楓の色が似ていた。


 一方、地下のB級会場の唐木田葵と森川楓も初戦を勝ち抜けた。

二人も紺色の袴に水色の着物を着ていた。


 朝霧雫の元に、赤城麗華、大河原百合が駆けつけた。

徳田康代の元には、朝川夏夜、夜神紫依が応援に駆けつけている。


『夜神さん、朝川さん、朝霧さんが初戦突破よ』


「徳田さんは知らないと思うけど、

ーー あの子はね、土壇場の力が天才的なのよ」


 徳田が、夜神と会話していると朝霧が赤城と大河原とメディアの取材陣を沢山引き連れてやって来た。


「大名行列でござるよー」

気付くと側近の静女が瞬間移動して(そば)にいた。


 織畑信美首相、豊下秀美副首相、前畑利恵副大統領、明里光夏大統領補佐官の姿もあった。

みんな、神聖女学園の水色のジャケットを着ている。


「康代さん、そのお着物は、どうされましたか?」


『朝霧さんのファンの紹介でね。

ーー 近江の着物レンタル店から借りています』


 康代は秀美に伝えて思い出した。




 神さま見習いのセリエにテレパシーを送った。


[康代にゃあ、その件は女神さまが処理済みだからにゃあ。

ーー 問題にゃあい、杞憂(きゆう)じゃよ]


『セリエさま、ありがとうございます。

ーー ところで、今は、どちらに』


[東和大陸に転移され皇国人となった者達を監視しておるにゃあ]


『セリエさま、神さま見習いでしたね。

ーー お忙しいところありがとうございます」


[康代、心配無用にゃあ]


 康代はセリエとのテレパシー交信を終え、山積している雑務を思出だして憂鬱になった。


「康代殿、余計な心配は、お身体に悪いでござるよー」


『そうね、起きてもいないことで、

ーー 悩むなんてね』


「左様でござるよー。康代殿」


『静女は、いつも私の心を支えてくれるのね。

ーー ありがとう』


珍しく静女が照れている。




 康代は、さっきまで気付かなかった事を思い出した。


『静女、そのお着物は?』


 静女は紫色の髪と瞳を意識してか、紫色の着物姿になっていた。

妖艶美少女見参という雰囲気である。


「康代殿、変身でござるよー」


『そうね、忘れていたわ。

ーー 最近、見ていなかったものね』


「康代殿は、紫色の和装が似合うと思うでござる」


 静女の太鼓判を聞いた豊下秀美が、近江の着物レンタル店に連絡を入れた。


「康代さん、明日の準々決勝までには準備できるそうです」


『秀美、いつも秀美が傍にいて助かるわ』


「康代さん、買い(かぶ)りですよ・・・・・・」



 安甲晴美が二回戦の相手を確認しに行こうと、徳田、朝霧、逢坂を呼びに来た。


「どれも強敵ね。

ーー ここから先が茨の道よ。みんな」


『先生、分かっていますから出来るだけ頑張ります。

ーー 明日は、静女のアドバイスで、着物の色を変えて挑みます』


「康代さん、その前に二回戦突破よ。

ーー じゃあ、神聖女学園かるた会は、会場に移動するわね」


 夜神、朝川、赤城、大河原は応援席に移動した。

朝霧は、劇団仲間の激励を受けていた。




「康代さん、このまま進めば、どこかで対戦ね」


『くじの神さまに、逢坂さんと当たらないようにお願いしたいわね』


「康代殿、くじの神さまなどないでござるよー」


『じゃあ、静女はどう思うの?』


「それは、人生を決めるのは運でござるよー」


『そうね。運も実力ですものね』


「じゃ、二回戦の席に着いて」

安甲晴美(あきのはるみ)だった。




 安甲、徳田、逢坂、朝霧の順に席に着いた。

司会がアナウンスをしたあとで、専任読手が会場正面に移動した。


 正午まであと少しの時間だ。

窓から時より風の音が聞こえている。

大会スケジュールには余裕があって、ゆったりとした流れの中に全員がいた。


 かるた会四名が、自分自身との闘いを覚悟する時間の中にいた。




 徳田康代の耳には、セリエの応援の声が届いていた。


[康代、冷静ににゃあ]


『セリエさま、ありがとうございます』

 お読みいただき、ありがとうございます!

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三日月未来(みかづきみらい)

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