[後編]第六部 第二十四章【一◯八】近江と新世界の始まり
この連載小説のジャンルはローファンタジーに設定しています。
【登場人物プロフィール紹介】を一〇七話のあとに追加しています。
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
徳田康代は、神社の境内でクリスタルガラスのような透明な青空を見上げて寒さを覚えた。
両脇には、神さま見習いのセリエと天女の天宮静女がいる。
時よりつむじ風が吹き、落ち葉が宙に舞い上がっていた。
「康代、そろそろ秋も終わるにゃあ」
「康代殿、冬支度でござるよ」
『セリエさま、静女、季節の変わり目ね』
神社の社務所の扉が開き陰陽師の安甲晴美が現れた。
「徳田さん、早いわね」
『お天気が良かったので・・・・・・』
「他の人たちは」
『もうじき見えるわ。先生』
神聖女学園の水色のブレザーに水色のプリーツスカート姿になったセリエが、康代と静女以外に接触するのが初めてだった。
「その女子高生は?」
『安甲先生、姿でなく波動を見てください』
康代の言葉に従い安甲は陰陽師の力で、女子高生の波動を見て小さな声を上げた。
「まさか、セリエさま」
「陰陽師よ、さすがにゃあ。
ーー 褒めて差し上げよう」
「なんとも、神々しいお姿に」
「そうにゃろう。余は神見習いだからにゃあ」
セリエは上機嫌に笑っている。
しばらくして、前畑利恵副大統領、織畑信美首相、豊下秀美副首相、明里光夏大統領補佐官が現れ、徳田康代大統領が女子高生姿のセリエを紹介した。
神々の力を見ている四人は神見習いのセリエへの対応に悩んだ。
「みなさんは、心配しすぎでござるよー」
「余は、お忍びの姿にゃあ、杞憂にゃあ」
姫乃水景、和泉姫呼、逢坂めぐみ、由良道江、松山八重が遅れて到着した。
宝田劇団の朝川夏夜、夜神紫依、赤城麗華、大河原百合、朝霧雫も到着した。
安甲晴美が大きな声を上げた。
「じゃあ、みんなバスまで移動するよ!」
「夜神さん、なんか修学旅行みたいね」
「朝川さん、近江への旅行だからね」
大型バスが二台並んでいる。
二号車には、かるた部の部員が乗車していた。
康代たちは、一号車に乗車して、近江を目指す。
「前は羽畑第二空港から近江に飛んだのよね」
『そうよ、今回も空港まではバス移動よ』
「バス旅行と勘違いして、えへへ」
『秀美は、早とちりよね』
「えへへ」
『そうやって、笑って誤魔化す』
今回は大人数もあって空中浮遊自動車を避けて空港まで移動した。
第二空港は、神聖学園都市から近い。
空港ターミナルに到着すると、静女とセリエが見えない。
康代はテレパシーでセリエと会話する。
[セリエさま、どうされましたか]
[余と静女は、転移魔法で先に移動したにゃあ]
[どちらに]
[稲葉旅館にゃあ]
[セリエさま、じゃあ、あとでよろしくお願いします]
[心配にゃい。じゃあ康代、あとでにゃあ]
康代はセリエとのテレパシーを終えて安甲先生に報告した。
『静女とセリエさまは、先に移動したそうです』
「神々は便利ね」
安甲と康代が笑っていた。
「徳田さん、わたしたちも使いたいわね」
『先生、それは非常時以外は許可されていませんよ』
「そうね、私用で使ったら怒られるわよね」
徳田康代たちが稲葉旅館に到着して、手荷物を部屋に置くと静女とセリエが康代の前に現れた。
「康代、これからどうするにゃあ」
『みんなで神宮に参拝します』
「人間は不思議な動物にゃあ」
『セリエさま、どういう意味でございますか』
「あそこは聖地でも意味が違うにゃあー」
『セリエさまの意味、分かりますわ。
ーー わたしたちは、目に見えないものへの畏怖があって
ーー 神社や寺が祈りの対象になってしまったわけです』
「まあ、いいわ」
今度は、静女もセリエも自動車に分乗して移動することになった。
静女は二度目、セリエは空間から見ていたので、初めてと言う認識がない。
神宮に到着した一行は、前回来た参道を辿る。
「由良先生、ここの参道、長いですね」
「逢坂さん、なにおばあちゃんみたいなこと言っているのよ」
徳田康代が逢坂と由良の会話に笑っている。
『逢坂さん、また、ここに来るなんて夢みたいですね』
「きっと徳田さんの夢ね」
『逢坂さんも、最近、きついわね』
「そんなことないわよ。
ーー わたしたちの人生は幻と変わらないわ。
ーー 気付けば、おばあちゃんになって
ーー 気付けば、来世よ」
『そうね、人間の人生は、あっという間。
ーー 世界は統一されて犯罪も戦争も消えたわ。
ーー けれども私たちには、課題が山積しているのよね。
ーー それは国民の幸せを守ることなの』
「徳田さんは、忙しいのに沢山の事をこなす。
ーー 私たちの憧れの人ね」
『逢坂さん、褒め殺しは良くないわね』
逢坂めぐみは舌を出して笑って誤魔化す。
「みんな、今日は、お参りだけして旅館に戻るわよ。
ーー 明日からの競技かるた日本選手権に参加する人
ーー 応援する人、それぞれが勉強よ」
安甲晴美は説明を終えると、由良先生と松山先生と一緒にお参りをした。
「東都と違い、紅葉が綺麗ね。安甲先生」
「そうね、気候の違いかしら」
由良は安甲の言葉を受けて松山先生を見る。
「松山先生は?」
「わたしは、あまりそういうこと得意じゃないの」
「由良先生は、どうなの?」
「天智天皇の聖地と言うだけあって緊張しますわね」
安甲、由良、松山の三人は言葉のキャッチボールを楽しんでいた。
徳田と逢坂のライバル同士は修学旅行気分を楽しむ。
「徳田さん、A級の個人戦ね。
ーー どこで当たるか楽しみよ」
『わたしは、安甲先生やクイーンと当たらないことを願うわ。
ーー 沢山、試合したいしね』
「康代、先に戻るにゃあ」
「康代殿、旅館に戻るでござるよー」
神さま見習いセリエと天女天宮静女は言葉を残し、その場から転移した。
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