[前編]第一部 第一章 【一】勇者家康の転生
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【登場人物プロフィール紹介】を107話のあとに追加しています。
第一話を修正して約4,500文字に変更しました。(2026/02/24)
女子高生は大統領では、
徳田康代の会話に二重鉤括弧を使用しています。
『 』
皆さまの隙間時間でお楽しみください。
三日月未来
⬜︎プロローグ⬜︎
この小説は大政奉還から300年後の皇国で起きた転生女子高生の物語です。
戦国時代の武将たちが女子高生に転生して家康の生まれ変わりと新しい時代を展開して行く御伽噺です。
神聖女学園に集まる徳田康代《家康》、織畑信美《信長》、豊下秀美《秀吉》・・・・・・。
⬜︎⬜︎⬜︎
『なんで・・・・・・ 』
『わたしなの・・・・・・ 』
無意識の中で、徳田康代は自問自答していた。
『なんで、わたしが選ばれたの? 』
康代は、深い眠りの中にいた。
⬜︎⬜︎⬜︎
ニュースは首都東都で起きたメガフラッシュを伝えていた。
超高層の国会メモリアルセンター上空が突如明るくなった。
夜空を見上げる通行人は慄えて建物の中に避難した。
モンスター級のスーパーボルトが超高層ビルを直撃した瞬間、地響きが都心を揺らし静まった。
「幸い被害は出ておりませんーー 」
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天界の女神アメリアが家康を呼んだ。
「勇者家康よ」
「女神さま」
「現世への転生が決まった」
家康は女神アメリアの言葉に耳を疑った。
「地球では聖女徳田康代として生まれ変わる」
「・・・・・・ 」
「家康よ。魂に男女はないのじゃ」
女神は、家康の前から消えて金色の光になって輝いた。
女神アメリアの神使メリエが白猫の姿で現れた。
メリエが家康の魂を転生の扉の主人の所に連れて行った。
家康の無意識が転生の扉の主人に呼び掛けた。
『転生は幾度目じゃろうかな』
転生の扉の主人が答えた。
「ーー 今回で七度目になります。魂の記録によれば・・・・・・ 」
家康の魂の前世を見た扉の主人は歴史に残る勇者の名を見て躊躇いがちに答えた。
「すべては把握出来ませんが・・・・・・ 」
家康の魂は転生を繰り返す度に国家を建て直す勇者の魂だった。
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目に見えない巨大な転生の扉の前に家康の魂が立った。
天界の空を覆っていた分厚い光の結晶が一斉にキラキラと輝き始め黄金色に包まれた。
転生の扉全体が天空に呼応し白い光の渦が金色に輝き出す。
天界全体が家康の転生の門出を祝福した。
天界の魂には転生への流れがなかった。
時の女神エルミオの神使ルニャ(赤猫)は、天界の女神アメリアの神使メリエ(白猫)に、家康の転生をお願いしていたのだ。
女神エルミオは、すべての記録が書かれたアカシックレコードを見て地球の未来を知った。
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女神アメリアの神使メリエが大きな白猫に変身した。
家康にウインクした瞬間、金色の光の輪が大きくなって家康の魂を包み込んだ。
癒しの光は徐々に強く大きな柔らかな黄色の光の輪に変化した。
やがて透明な光になって家康と共に消えた。
家康の魂が現世へ転生したことを透明な光が告げている。
白猫の神使メリエは元の大きさに戻り虹色の光になって消えた。
天界の空も平時の白い輝きを取り戻し輝いている。
聖女徳田康代誕生の16年前の出来事だった。
⬜︎⬜︎⬜︎
皇国の首都東都では5月になってから蒸し暑い日が続いていた。
春の日差しが心地良く新緑の香りが立ち込める神宮の森の裏参道は別世界だ。
代々木原の地震研究所に勤務する田沼光博士と若宮咲苗助手。
二人は少し早い昼食に出掛ける準備を始めた。
田沼は33歳の地震学者で助手の若宮は28歳だ。
見た目が実年齢と釣り合っていない。
田沼と若宮は同い年に見えた。
田沼と若宮がお揃いの水色ジャケットをロッカーから取り出し忘れ物の確認を済ませた。
ジャケットの左胸には地震研究所のエンブレムが誇らしく貼り付けてある。
田沼は無地の淡い緑色の膝丈くらいのワンピースに黒いストッキング姿で、花柄の水色のワンピースに白いストッキングスタイルの若宮が田沼の準備を待っていた。
田沼光の背丈は170センチで、若宮咲苗は168センチだった。
22世紀の皇国女性の平均身長に近い。
田沼は黒髪のショートヘアを七三分けにしている。
若宮の茶髪のセミロングは、ジャケットの肩に掛かっていた。
「田沼先生、少し早いですが、出掛けませんか」
「若宮さんが言うなら、わたしはそれで構わないわよ」
田沼と若宮は代々木原の小さな地震研究所を出た。
神宮の代々木原側の大鳥居前に到着した。
小柄で人の良さそうな神宮の守衛が田沼に近付き挨拶した。
「先生、おはようございます。通り抜けは禁止されていますよ」
「おはようございます、守衛さん」
「お参りしてくださいね」
「守衛さん、必ずお参りしますから大丈夫よ」
田沼と若宮は代々木原側の守衛前を抜けた。
長い参道の反対側にある山崎線原口駅側の大鳥居へ通じるルートだ。
ショートカットで原口駅ビルのレストランに向かう。
二人は地震研究所から原口駅への近道に神宮の参道の中抜けをする常習犯だった。
神宮大鳥居の守衛は、毎回二人を注意して諦めていた。
「先生、あまり時間がありませんね」
若宮が田沼に言った。
「もう!こんな時間? 急ごうか! 若宮さん」
「はい先生、急ぎましょう! 混まないうちに」
二人は足早に歩を進めたが参道の玉砂利が行く手を阻む。
代々木原駅と原口駅のひと区間に相当する参道は真っ直ぐ長い。
バスが二台並んで通れるほど幅が広かった。
木立が鬱蒼と茂り、昼間でも薄暗く空気がひんやりとしている。
二人が歩く度に玉砂利の音が森にこだました。
いつもと違い静かだ。
田沼は森を見上げた。
鳥たちの鳴き声が一切していないなぁと気付いた。
「変だなーー おかしいよ!・・・・・・」
「え! 」
田沼の独り言に若宮の無意識が反応した。
田沼光33歳の専門はマグマ天体地震理論による地震予知だ。
田沼の天体地震理論は、地球規模の巨大地震を予測する最新の地震学として脚光を集めていた。
田沼と同性の若宮咲苗助手28歳は、隣を歩きながら田沼に話し掛けた。
「先生、今月も月アプローチが地震リスク上昇期間に入りました」
「注意しないとね」
「まもなく月が最大離脱ポイントを通過しますが・・・・・・」
「そろそろ危ないかも知れないーー 」
「関係部署への報告を上げて置きました」
「うん」
「どうも危機感が薄いようで心配です」
若宮が田沼に呟くように言った。
「今日あたり危ないね、杞憂ならいいのだが」
月や複数の惑星のデータを利用した複雑な計算データが、度々マグニチュード7以上の地震予知に成功していた。
「先生、今日は、珍しく鳥さんたちの鳴き声が聞こえませんが・・・・・・ 」
田沼が再び周囲を見上げた。
樹木の息吹きが聞こえる程の静寂があった。
「鳥さん何処かに遊びに行ったのかしら」
若宮が呟いた。
「逃げ出したとしたらーー もう時間が残っていないかも・・・・・・ 」
「先生、そんな怖いことは、ご勘弁くださいね」
⬜︎⬜︎⬜︎
原口駅前に到着するころには気温も上がっていた。
二人は蒸し暑さを強く感じた。
原口駅前から渋丘方面の遠くの景色が霞んで見えている。
スモッグも霧も発生していないのに・・・・・・。
水色のジャケットにワンピース姿の田沼と若宮の二人は駅前に到着した。
原口駅ビルのレストランの窓際の席に案内される。
窓の遠くには、国会メモリアルセンターの超高層ビルが霞んで見えた。
その時、電車の通過音に混ざって大きな地鳴りの音が幾度もした。
田沼たちがいた最上階の席には地鳴りが聞こえていなかった。
田沼と若宮は職業病のような胸騒ぎをしきりに感じていた。
天変地異の前兆気配が東都に忍び寄っていた。
一部の人間以外、誰も知らなかった。
⬜︎⬜︎⬜︎
徳田幕府時代の大江戸城跡は、国会メモリアルセンターや政府官邸より低い位置にあった。
永畑町の地形は丘ではなく、低い起伏のある山のように盛り上がっている。
伝えによると、神社のあるところには、重大な意味が隠されていることが多い。
「先生、東都って、山の中みたいに起伏が多いね」
若宮の分析は正しかった。
「若宮さん、山ならさぁ、アレが、隠されているかも」
田沼が若宮をからかった。
「アレって、なんですか」
「アレって、ほら、アレですよ」
原口駅ビルのランチ帰りのいつもの会話だった。
隠された大自然の不都合だった。
⬜︎⬜︎⬜︎
皇国を支配している偽物の民主主義に民たちが立ちあがろうとしていた。
田沼と若宮はランチ帰りにサラリーマンの声を聞くことがよくあった。
「娯楽時代劇ならいいがね」
「今の時代にも、悪代官みたいなのが沢山いるんだよね」
「本当、困りものです」
「サラリーマンは汗水流して働いているのにね」
「税金を搾り取られるだけなら無抵抗なサンドバッグと同じだよな」
「まあね、気晴らしするしかないでしょう」
「そうだなーー 今日は居酒屋へ行こうか?」
「いいね、アイツにも声かけるか」
田沼と若宮は、通りすがりのサラリーマンたちの他愛もない会話の声に微笑んだ。
⬜︎⬜︎⬜︎
敗戦より二百年もの長い独裁政治が維持される奇跡は偶然ではなかった。
古くさいアナログスタイルの投票箱の移動トリックが独裁政権の奇跡を支えていた。
インターネットチャンネル配信から聞こえてくる噂があった。
「間違って投票用紙が捨てられるか」
「投票率を下げる裏技だよな」
庶民の声は犬の遠吠えのようにかき消される。
ネット投票が解禁されない不都合を追求する者もいた。
投票用紙に鉛筆スタイルの焼け野原政治の敵では無かった。
ベニヤ板の掲示板が設置されてポスターが貼られるという不効率が二百年間変わらないスタイル。
ネットの声は単発花火のように散った。
「カネのかかる仕組みを変える勇者が現れないと国民はジリ貧だよ」
「まあーー 俺たちには何もできないし・・・・・・」
「立候補者は名前を連呼しているがーー 誰か知っている?」
「知らない。町中を宣伝カーで巡回する騒音装置か」
やってますスタイルに庶民の呆れた声がネットから溢れている。
そんなおかしなことに異議を唱える者は現れては消された。
有権者は暴虐非道な政治に歯向かうこともなく叩きのめされ増税と搾取に甘んじた。
「真実が伝わることがあるなんて、無いわ」
「信じているなら、大馬鹿よ」
居酒屋では女性記者が酔っ払いながら喚いている。
国民の負の感情の無意識が自然災害にも影響を与える・・・・・・。
⬜︎⬜︎⬜︎
因果関係を知る陰陽師ーー 安甲晴明の子孫は負の連鎖の仕組みを知っていた。
陰陽師の子孫である安甲晴美は、私立神聖女学園の教師で占い部の顧問をしている。
独裁政治の利権者は負のエネルギーの因果関係に気付こうとしない。
⬜︎⬜︎⬜︎
東都の都心部では皇都大の中立デモ隊がプラカードを掲げ練り歩いている。
シュプレヒコールが原口駅付近に聞こえて来た。
学生は抵抗していたが、大きな力の前では無力に近いと思っていた。
魔法でも働かない限り・・・・・・。
デモに参加した学生が居酒屋で討論している。
「選挙の度、疑惑が浮上し投票箱のすり替え疑惑が起きるんだよ」
「そして、毎回揉み消されれる、この国ってやばくない」
「同じ筆跡の投票用紙がインターネットなどで公開されているよね」
「疑惑があっても調査もしない無神経さだよ」
200年もの独裁政権を維持し続けたカラクリを声に出して疑う者は多かった。
追求した正義感のある国会議員の多くは始末され消えた。
⬜︎⬜︎⬜︎
家康の魂が天界から転生して長い歳月が流れたある日の地球。
地球の守護神女神アセリアの意識が神使セリエの意識に伝えた。
「天界の神使メリエにお伝えてください。まもなく始まりますと・・・・・・」
黒猫姿の神使セリエが答えた。
「分かりました女神アセリア様・・・・・・ 早急にお伝えします」
セリエは消えて光り輝いた。
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