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22.叱責

 急に息が楽になった。

 大きく深呼吸を繰り返し、私はうっすら目を開ける。


 耳鳴りも遠のき、『リンスター様!』というグレーテルの声が聞こえ、私はそちらの方へ顔を向けた。

 『ああ…よかった…

 大丈夫で遊ばしますか』

 『…ええ、楽になったわ』

 私が答えると、グレーテルは涙をこぼして私の手を握った。


 私は自分が寝室のベッドに寝かされていることに気づいた。

 部屋を見回していると、グレーテルが涙を拭きながら言う。

 『ジェルヴェ殿下が、姫様をここまでお連れくださったのです』

 『え、ジェルヴェ殿下が?』

 

 気を失ってしまう寸前に聞こえた「ひめっ!」という声は、ジェルヴェ殿下だったのか…

 それに倒れるところを支えてくれたのも、そうなのかな。

 結構、席遠かったような。

 

 居室の方から男の人の声が聞こえてくる。

 誰かを叱責するような、厳しい声。


 『え、あれは…』

 私は声の主に驚いて、起き上がろうとする。

 グレーテルが慌てて支えて、抱き起してくれた。

 『あ、はい…

 姫様をこのような状態にしてしまったのは誰だと問い詰められて、ルイーズだと判り烈火のごとくお怒りになられて…』


 ええっ!

 ちょっとやめてよ!

 勝手なことしないで欲しい。

 侍女たちとのこれ以上の関係悪化は避けたいのに。

 だからあんなに我慢したのに。


 私はグレーテルに命じて、手早く着替えを済ませ、髪もメンデエルにいたころのように簡素に結い上げる。

 グレーテルに支えられて、寝室を出た。


 『姫様!』

 ユリアナが駆け寄ってきて、一緒に支えてくれる。

 「リンスター王女、大丈夫ですか」

 振り向いたジェルヴェ殿下は、ソファに座った私の手を取って心配そうに問う。

 

 「大丈夫ですわ。

 ここまでわたくしをお連れくださったそうで、ありがとうございました」

 私はジェルヴェ殿下の手を振りほどきながら微笑む。


 ジェルヴェ殿下は眩しそうな表情で私を見て「良かったです。あなたをこのような目に遭わせた、侍女は許さない」と怒りをにじませた声で言って、背後にいるルイーズを振り返る。

 ルイーズは顔に恐怖を浮かべ、グレーの大きな瞳を見開いて身体を細かく打ち震わせている。


 怖いよね…

 私は思わずルイーズに同情した。


 外国の王女の侍女になれって言われてただ仕事しただけなのに、恐らく身分的に今まで顔も見たこともないような王弟殿下とかいう途方もなく権力のある、雲の上の人に怒鳴られるなんて…


 「ジェルヴェ殿下」

 「殿下は要りませんよ。

 私も、リンスターとお呼びしてよいかな?」

 ジェルヴェ殿下は優しく言って、私の頬を撫でる。


 は?…何で??

 私は訳が分からず、しかしとにかく話を進めようと口を開く。

 

 「ルイーズを叱らないでやってくださいまし」

 

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