17.美味しい食事
居室に戻ってみると、食事の支度がされていた。
メンデエル王国では見たことのないような料理の数々に目を奪われる。
えー…なにこれ、美味しそう!
私は吸い寄せられるように卓に近づく。
温かい料理がある!
ルーマデュカってすごい…
メンデエル王国はやっぱり、いろいろな意味でこの国より文化の面で遅れている気がする。
飲み物の種類も豊富だわ。
豊かな国なんだろうな。
ソレンヌというルーマデュカの侍女に給仕をしてもらいながら食事を摂る。
「これは何?」
「レバーと豆と茸のテリーヌ・ド・パテでございます」
「テリーヌ…」
それは、豚の脂を型に敷いてすり潰したレバーと豆と茸を詰めて焼いたものだそうだ。
口の中でねっとりと溶けてコクがあり、口当たりがよくいくつでも食べてしまいそう。
「これは?」
「羊肉のパイ包みでございます」
サクサクのパイというものの中に、トロっとペースト状に煮込まれた羊肉が入っている。
一緒に口に入れると、バターの風味と羊肉の味が混ざって、えも言われぬ美味しさだ。
パイというのは…なんて贅沢な食べ物なのだろう。
バターと小麦粉をこんなにふんだんに使っている食べ物を初めて見た。
ひとり感動しながら美味しい食事とデセールを味わい、お腹いっぱいになって食後のカフェという苦い飲み物を飲んでいると、背後の扉が開いて『姫様!』と誰かが駆け込んできた。
『クラウス!ニコラ!』
私は思わず立ち上がって二人を迎え入れる。
『無事に着いたのね、良かった』
『姫様もご無事で…』
私は涙ぐむ二人と再会を喜ぶ。
『道中はどうだった?
二人とも身体が小さいから大変だったでしょう?』
いたわる私に、二コラがうなずいて答えた。
『はい、皆さんに追いつけなくなってしまって、途中から荷馬車に乗せてもらいました』
『まあ…』
私は絶句する。
『それは…怪我とかしなかった?』
『大丈夫です。姫様が思ってるほど、乗り心地は悪くなかったですよ』
にこにこして二コラが話す。
クラウスは、他の侍女たちがいるのでだんまりを貫いている。
そう、先ほどこの二人が入ってきたとき、はっきりと部屋の中の空気が変わった。
嬬人と、如何にも身分の低そうな娘。
メンデエルから連れてきた侍女たちはともかく、初見のルーマデュカの人たちは異質なものを見るような思いだろう。
『今日は遅いから、また明日話をしましょう。
あなたたち、夕食は?』
『あ、ちゃんとルーマデュカの人が用意してくれました。
すっごい、美味しいご飯でした!』
『そうよね!
私もびっくりしちゃったわ』
盛り上がる私たちを、何とも言えない表情で眺めるルーマデュカの侍女たちは奇異なものでも眺めるような目で見ている。
私の、庶民みたいな言葉遣いを理解できたら、もっと驚くでしょうね…




