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13.出発

 早朝、私はお父様とお母様に謁見し、別れの挨拶をした。

 きょうだいたちも集まってくれて、私は涙ながらに別れを惜しんだ。


 お姉様は、その場には来られなかったけど、侍女が手紙を渡してくれた。

 後で読もうと、大切に手荷物の中へしまった。


 私は侍女のグレーテルと共に馬車へ乗り込む。

 長旅仕様だけど、スピードも出すため、乗り心地は良くない。

 6~7日は馬車の中で過ごさなければならないことを思うとうんざりする。


 たくさんの家臣や貴族が見送る中、馬車は出発した。

 宰相もいて、深々と頭を下げた。

 顔を上げた宰相の表情がひどく不安そうで、私は訝しむ。


 私は懐かしい故郷を目に焼き付けようと、窓から懸命に外を見ていた。

 さようなら、私の生まれた場所。

 さようならお父様、お母様、きょうだいたち、育ててくれた人。

 そして私を育んでくれた、メンデエル王国…

 

 先に出発したクラウスや二コラ、そのほか従者たちのことを考えると心配になる。

 一刻も早く追いつきたい、けど徒歩(かち)の彼らを追い越してしまったら、彼らの行軍は今よりもっと大変なものになってしまう。

 だから、慌てず急がず、かといってゆっくり過ぎずに進んでいかなければならない。


 そもそも私は国外どころか、国内、城の外へ出たのもほぼ初めてだ。

 だけど全然浮き立つ気持ちはない。

 大国ルーマデュカ。

 どんなところなのだろう。


 王太子にもう少し期待できたなら、この旅ももうちょっと心躍るものになったのかもしれない。

 誰でもいい、とりあえずメンデエルの王女でありさえすれば、といった事情が露骨に透けて見える嫁入りなんて、どういう心構えでいればいいのだろう。


 結局、王太子という人が、どんな顔なのかも全然判らないままだ。

 まあ、見た目どうあれ、向こうは私に興味なんてまるっきりないんだから、どんな風体でもいいけどね。

 

 とにかく無事にルーマデュカに着いて、新たな生活を構築することが大事だわ。

 私が表に出ることはほとんどないんでしょうから、好きに暮らせそう。

 それだけが唯一の心の支えだ。


 ルーマデュカ王国についての基礎知識は、教育係のユーベルヴェーク子爵に一通り教わった。

 メンデエル王国に比べれば新興国ではあるけれど、豊かな国で各国との貿易も盛んで、今の王様は英邁な君主だとの呼び声高いらしい。

 王妃様がお洒落で流行りものがお好きだそうで、宮廷は最新のファッションや音楽、芸術に溢れているそうだ。

 交易が盛んなため、珍しい食べ物なども集まっているみたい。

 

 それは楽しみだわ。

 私はそんなことをつらつら考えながら、ひたすら馬車に揺られてルーマデュカ王国を目指した。


 

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