第三十三話 超・能・力!
「次の対戦相手の……ショーメルとかいう女にはお気をつけください」
試合前の控室で炭酸水を飲みながらナオイエから報告を受ける。
「……ナオイエがいうんなら厄介なんだろうけど、正直負ける気はしないよ?それに、人質作戦とかなら仏捨刀でなんとかなるだろうし」
私の貧弱な思考回路ではこれ以外の驚異はあんまり思いつかない。
せめてもうちょっと勉強でもして頭を良くするべきだったか。
「信頼はとてもありがたいのですが……そうではなく、彼女には特殊な力があるようですので。私の『眼』には見えるのです。それに、アガストとの関係も怪しい。ですので、十分なご用心を……」
ナオイエの観察眼には相当なものがある。
ならばそういうことなんだろう。
「アガスト、か。本当祟るね。ナオイエの眼は信用しているからせいぜい気は抜かないようにするよ」
そうして、控室から会場へと進む。
「ふふ、お手柔らかにお願いしますねぇ?」
「こちらこそ」
そう言って蠱惑的に微笑むのは4回戦の対戦相手の女性だ。
ナオイエは何やら気をつけろとか言っていたけど……やっぱり負ける気はしないな。
うん、肌の露出が凄いな。でもなんかな……恋人が出来てから時間が立つたびに、他の女性に心躍らされ辛くなっていった。
お姉ちゃんのときが一番効果があったかな。
二人目だからか、あるいはメイスの場合は付き合い始めの時から同情とかそういう感情が強かったからか、そこまで効果は強くなかった。
途中からボディーブローのようにジワジワと効いてきたけど。
だからか、完全に平静を保てている。
まあ、かなりビッチな私が言っても説得力はないかもしれない。
「ありがたいわぁ…お互いに頑張りましょうね、うふっ」
そう言うと同時に相手の女性の目が一瞬赤く光ったように見えたが気のせいだろう。
「……えっ!?そんなまさか…でもあの様子を見る限り…嘘っ!」
小声でなにやら動揺しているようだが…うん、これはあれだな。なんか仕掛けようとしてきたな。
「……これ、ハニートラップだよね?」
「…!」
魅了の魔法、あるいは超能力的な何かを使ってきたんだろう。
いや、多分魔法ではないな。
号令がかかる前に技を仕掛けるのはルール違反で締め出される。
そして魔法は感知が簡単だ。闘気も同様。
そして魅了魔法なんてものは聞いたこともない。
超能力的ななにかならその個人の資質によるものが大きく、すべてを特定するのは不可能に近いしね。
その中でも典型に近いものならともかく。
ちなみにではあるが、メイスの超身体能力や私の超成長はこの超能力とかそういうのに区分されると思う。
詳しいことがわからないから確実とは言えないけどね。
設定資料集より情報が集積されていると言われていた専用Wikiみてもそんなことは一言も書いてなかったんだもの。
ミザールの超成長に関してはそれっぽいことは書かれてたけど、これは超能力とかそういうのに区分されるのかな?
まあわからないな。どうでもいいか。
「性別に関係なく、女性に一定以上の興味がある時点で回避不可能のトラップ…そんなところかな?そして、多分そんなに何回もは使えないんじゃないかな?一生のうち何度かってところ?」
毒婦さん(仮)が身を震わせていた。
顔面は蒼白で、わけのわからないものを見るような目で私を見ている。
「なんでこいつには効かないんだ!?なんて顔をしているね、特別に教えてあげる」
なんてことはない、簡単だ。シンプルすぎる答え。
この人の技より私の肉体、魂のほうが圧倒的なエネルギーを持っていただけ。
「大火事に対してじょうろで水をかけたとして、どうにかなると思う?そういうことだよ」
「…!」
ありゃりゃ、絶望顔だなぁ。
たぶん、戦闘における実力も相応にあるし、なによりこの技には圧倒的な自信があったんだろう。
それを破られて絶望しちゃったんだろうね。
……なんか私めちゃくちゃイキってるような気がするけど、このあと因果応報とばかりに負けたりしないよね?
不安になってきた。うん、優越感に浸ったように煽るのはもうやめとこう。
「じゃあ、戦ろうか。油断なくあなたを叩き潰すよ」
「ひぃっ!」
その後、あっさりと私が勝利することとなった。
試合前に仕掛けてきたことに関しては、私が問題視しなかったためそのまま試合が行われたが、これから毒婦さんは出場停止になるらしい。
たとえ勝っていても駄目だった。
まあ、ルール違反は駄目だよね。そこだけは競技である以上守られなければならない。
本物の戦場ですらルールや作法はあるんだ。
競技には更に必要だろう。
「あとから家のものが向かうけど……自殺とかはしないでよね」
アガストと本当に関係があるんなら放っておくわけには行かない。
「は、はひぃ…」
うん、『悲嘆剣・魂折り』を喰らわせたからか、随分素直になったね。
痛くはないけどあれ怖いからなぁ…。仕方ない。
そのうち恐怖を克服できるだろうから、頑張って。




