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第三十話 悲嘆剣・魂折り

「師匠、第一回戦はメルスト・ベイク殿らしいですわ」


「おっ、ありがと。…まあ、この人相手にならよほど素晴らしい隠し玉でも持ってない限り負ける気はしないかな」


 入場式が終わり、とうとう試合が始まることになった。

 今、私は控え室にある魔導TV(マギ・ヴィジョン)で試合を観戦する。


 魔導TVはよほどの寒村でもない限り各村に一台はある、地球のTVに似た機械だ。

 庶民向けのガス抜きとしてスポーツやらの娯楽を放送しているのだが、私は一応貴族の娘だから庶民が集まって見るような場所に行ってはいけないなどと言われて時折貸し切りにできるときしか見れなかった。

 …シーズン中は毎日、シャイニンズの試合見たかったのに。



 試合内容は、まあ私よりは技術がある人がほとんどで見応えはあるんだけど、やっぱり単純な強さが足りない人が多い。


 ――師匠はこの世界の人間にしては超早熟な肉体だったようで結構前に全盛期を過ぎている。

 日々高まる技術によって老いを隠してはいるものの、完全にではない。

 確実に弱っているし、技術と肉体の力の総量が最も高かった全盛期の頃の師匠と今の師匠が戦えばすぐに決着がつくであろう程度には違う。


 そんな全盛期をとうに通り過ぎた師匠に全然及ばない人ばかりでなんだかなぁと思う。


「…『容姿』以外のこの世界の住民の能力値は軒並み跳ね上がってるのになぁ…」


 


「嬢ちゃんが俺の相手かい?…その、悪いことは言わねーからとっとと棄権したほうがいいと思うぞ。ここは君のような者が生き残れる場所ではない」


 とうとう、私の試合が始まることになった。

 メルストはその巨大なマッスルに見合わずに困惑と心配を織り交ぜた表情で私に話しかけてくるが、問題ない。

 『そうか、よかったな。しかし私のほうが強い…』という感想だけだ。


 あ、ちなみにこの大会では私は不思議の国のアリス的な服装をしている。

 私にはこういう服装が似合うからと、三人が案を出して練り上げたアイデアを実は昔から服飾に凝っていたらしいナオイエに依頼して作り上げられた。


 この服はめっちゃ可愛いので気に入っている。

 しかし最近、前世の時に持っていた日本人的な見た目な上にイケメンなわけでもない自分には到底似合わない格好いいファンタジー的な服装を着たいという欲求も強くなってきた。


 もちろん、こんな見た目になった以上顔は隠したくないが。

 某国民的RPGの11に出てくるキャラクターが着ているような漆黒の騎士鎧に身を包んだ美幼女、萌える…萌えない?


「怖がってるのか?やっぱりいまからでもいい、棄権したほうが…」


 私の沈黙を怯えていると勘違いしたのか、メルストが心配してくる。


 うん、この人めっちゃいい人だ。

 でも、敵を侮っているという意味では好きになれない。

 善悪はないが好悪はある。こういう私を侮るやつは叩き潰してやる。


「心配はいりません。ですがあなたこそ、抵抗するというのならかなり痛い目を見ますがよろしいですか?」


「!? …はっはっは!そこまで言えるんなら問題ねぇな。よし、その伸びた鼻っ面へし折ってやるよ」


 観客席が(にわ)かに騒然とする。


『なにやら火花が散っておりますこの二人!見た目を見れば全く敵いそうにありませんが、リル師範はどこまで立ち向かえるのでしょうッッッ!!!注目のカード、いよいよ始まります!』


「メルスト流の武、相手が童女だろうがとくと見せてやる!」


「深刀流師範、リル・ミルフィル、いざ参る!時代遅れのメルスト殿は地獄で判官にでも挑んでおるがいいわ!」


 そして声を張り上げ、


「始め!」


 戦いの火蓋が切られる。


「まずは小手調べ!慈眼流・ニの秘剣、鳥王(ちょうおう)冥剣(めいけん)!!!」


 ゆったりとしたフォームから投げ込まれる超スピードのストレートのようにして剣を振るう。

 インパクトの瞬間に超絶強い一撃を…!


「ぐおおおおっ!?」


 …あぁ、反応できてないよこの人。

 とっさに身をひねってみてはいるものの、間に合わなくて余計にダメージ受けてる。


「この程度もかわせないの?ならその伸びた鼻っ面、叩き折ってあげるよ」


『おおおおおお!!!まさか、慈眼流の技すら使ってきた、リル師範!あのメルスト開祖を一撃で圧倒しております!』


「くっ、メルスト流・秘奥が一、勅死(ちゃくし)霊絶(れいぜつ)(けん)!」


 メルストの拳から、気力と魔力が混ざりあって練り上げられた暴力的な赤いオーラが溢れる。

 それが振りかざされる瞬間、


「ふーん、クールな技名ね。でも、勝てなきゃ意味ないんだよね。深刀慈眼複合!悲嘆剣(ひたんけん)(たましい)()り」


 二の太刀は要らない、そんな深刀流の究極奥義と慈眼流の精神が混ざり合って昇華された絶死の一撃。

 このフィールドには出場者全員が合意することで誰も死ななくなる魔法がかけられているから死なないけど…痛い目は見てもらうぞ!


 私の剣がメルストに触れる。瞬間、肉体がじゅばぁと灼き切れてゆく。


 その熱は全身へと伝い、メルストは灰も残さず焼死した。


「しょ、勝負あり!」


 その後、魔法が発動し無傷のメルストが復活した。

 とんでもない量の冷や汗をかいてるけど、流石にやりすぎたな。

 あの技は苦痛はほとんどないから人道的ではあるけど復活するとなれば恐怖は結構凄いだろうな。

 まあ確実に立ち直れるだろうと見込んだ人にしかやらないから大丈夫。きっと。メイビー。


『何ということでしょう!リル師範!あのメルスト開祖を灰も残さず消滅させました!凄まじく強い!ありえないほど強い!これが新世代のスター、リル・ミルフィルの実力なのかあああああっっっ!!!!』


 そして、スローモーションの映像や実況とは別にいる解説による説明や聞いて状況を理解した観客たちが歓声を上げた。


「うおおおお!!!!あのロリっ子、メルスト・ベイクを倒しやがった!」


「可愛くて強い!最強じゃねぇか!」


「おおおおおお!!!すげえいいにおいしそうな髪の毛モフモフクンカクンカさせてくれえええええ!!!!」


 なんか11歳の(おんなのこ)に対してセクハラ発言しているモテなさそうなおっさんもいたが、まあ私も中身は5割ちょっとおっさん…ではないけど男ではあるから許してあげよう。

 ファンサービスとして、目いっぱいの笑顔で観客席に手を振る。

投稿ペース遅いけど前よりは早く投稿できたから許してね♥

一話2000文字だと結構物足りないし一話3000文字くらいにしようかなとも考え中。

その場合も更新ペースはこれ以上は落ちないと思われます。

まあ元が遅すぎるんですがね。

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