表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/34

第十七話 圧倒上位

「すげー!本物のリルだよ!」


「噂以上に可愛いわね。とんでもない美形だわ…」


「あの立ち上る闘気…やはり凄まじいな」


 クラスメイトが遠巻きから私を観察し、賛辞や畏怖の言葉を口にしている。

 しかしだれも近寄ってくる者はいない。

 まあ強すぎるから仕方ないね。私の気分を損ねたりしたら一瞬で殺されると考えているんだろう。


 そんな蛮族思考であると思われるのは癪だが、まあ仕方ないということにしようか。

 あらゆる悪は無知より生じるらしいし。


 そんなことよりアルンに会いに行こう。


「…なんの用ですの?」


 私が近寄ると、面白くなさげな声で刺々しい言葉を放つアルン。


「いや、なかなかいいセンスしてそうだなと思ってさ。エリートには負けたくないんでしょ?私の弟子になりたくない?あと友達にもなってほしいな」


 この誘い文句はどうなんだろう。

 前世はコミュ障で今世でもコミュ障だ。

 キョドったりオドオドしたりすることはなくなったけど、それでも会話のノウハウなんかは持っていない。

 だから判断はつかんが…乗ってきてほしい。


「…どうせ私を裏切る気でしょう?どこかに行ってくださいな」


 フラレたか。

 だけどこんなもんでは諦めない。


「裏切る気なんてないよ。どんな酷いことがあったかはわからない。信じられないかもしれない。でも、できれば信じてほしいな」


 できるだけ優しい口調で語りかける。

 しかし届かなかったようで…。


「そうやって嘘をついてきた人間を何人も見てきましたわ。私をコケにしたいだけのくせに…」


 またフラレた。

 この子も闇が深い系か?

 まあ没落してるんだからそうなるのも無理はないな。


「あー、駄目ですよ。そいつは大逆罪を犯して滅びた家の娘。どんなことをするかわからないですわ」


 さっき陰口を言っていた少女のうちの一人がいつの間にか近寄ってきてそんなことを言う。

 相当性格悪そうだなこの子。

 というかさっきまで近寄ってこなかったのに、私がアルンに優しげに話しかけてたから大丈夫だと判断したのか近づいてきたな。

 まあドミノ倒しのこの世界だしこの子も性格を歪められた被害者でしかない。

 しかし大逆罪かぁ。

 結構な大貴族だったしそんなんでもしないと没落しないよなぁ。 


 アルンは少女を憎々しげな目で見ている。


「たとえ性格が歪んでいたとしても私なら簡単に叩き直せる。そしてそもそも反骨心はあれど性格はある程度まともそうに見えたから、心底どうでもいい情報だったよ。一応ありがとう。もう一生話したくないからどっかに行ってほしいな」


 そもそも私はゲーム時代からアルンが好きな方のキャラだったのだ。

 コメディリリーフだったし憎むような要素はあんまりない。そしてなによりかわいい。

 性格はあんまり良くなかったけど。

 ほとんどのエンドにおいて最後は没落していたけど正直かわいそうだった。

 そこまでのことしてないだろうと。


 だから、さっきはああ言ったけど、性格がゲームの頃より更に歪んでいようがどうでもいい。

 この世界では幸せな未来を掴み取ってほしい。


 そんなアルンとどうでもいい名前も知らんやつ、どっちを取るかと言われたらもう答えは決まっていたからなぁ。


「しっ、失礼な!お父様に言いつけて…」


「その頼みの綱のお父様とやらは私に勝てるの?私はその気になれば国一つを簡単に滅ぼせるけど?家の一つを滅ぼすくらいどうということはないわ。ああ、謀略で私の家をどうこうしようって考えもあるかもしれないけど、そんなのは私が直接出向いたらどうとでもなる問題だからね」


「くっ、覚えてなさい!あなた程度、簡単に踏み潰してやるんだから!」


 少女は去っていった。流石に酷いこと言いすぎたかな。

 まあどう落とし前をつける気もないけど。

 思い入れのある人に対して嫌な態度を取り続ける人間に良い印象など持てようもない。


「行ったね。…これでも私の弟子になりたくない?」


 口ぶりからするに、彼女の家は結構な大貴族の家のはずだ。

 その誘いを厳しい口調で追い払ったんだから信じてくれても良さそうだけど…。


「こ、こんなのではまだ信じませんわよ!」

 

 間違いない、動揺している。

 でもまだ信じられるほどではではないと思っているようだ。

 そしてどこかに行ってしまったようだ。

 

 あれ、もうそろそろで早速入学式だけど教室にいなくていいのかな?


「よう、さっきのすげーじゃねぇか。天下のデモルザート家に喧嘩を売るなんて。でも大丈夫なのか?」


 オゲムがいつの間にか私の後ろに来ていて話しかけてきた。

 

 私にはナオイエ率いる暗殺者集団『仏捨刀ほっしゃとう』がいる。 

 この前名付けと組織の長を決めたばかりだが、実力自体は国の暗部より下、そのレベルの暗部なのだからデモルザート家?とやら程度に負けるようなヤワではない。

 そしてそもそも私に毒は全く効かないし、腕っこきの暗殺者に刺されたとしても皮膚に刺さらない可能性すらある。

 あと、察知する能力にも長けてるし気づかないこともないだろう。

 お姉ちゃんやメイスに関しても大丈夫だ。

 お姉ちゃんは魔法の得手だから察知するのには長けているし、メイスはそもそも超人だ。


「まあ大丈夫だよ。真正面からの戦争では負けないし、暗殺もいろんな意味で効かないから」


「そうかよ?まあ気をつけておけよな〜」


 そんなこんなで入学式やらを済ませて、学園と同じく王都にある私の別荘に帰ることにした。

 英雄になったし金はまだ腐るほどある。

 使わなくちゃ意味がないんで節制もあんまりしない。

 家族や恋人のために最低限は貯めるけど。

 だからあんまり使わないはずなのに高い別荘を買った。無駄遣いだけどいいよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ