第一話 テンセイ
「リルちゃんすきぃ…はぅ〜なんでこんなに可愛いのかな?」
布団の上で俺はお姉ちゃんに撫でられながら抱きしめられている。
肉体は女の子だけど心はまだ男だから正直凄くドキドキする。
「くんくん…あぁ…いい香り…」
お姉ちゃんの顔は見えないが、きっと恍惚の表情を浮かべていることだろう。
「さすがに恥ずかしいよ…」
お姉ちゃんの愛情表現は日に日に増していく。
今はまだ行き過ぎた姉妹愛程度で収まっているが、そのうち貞操奪われるんじゃないか?
いや、本当に。
どうしてこうなった…。いや、本当にそうなったら望むところでしかないんだけどね。
だってお姉ちゃんのことは大好きだし。
▽
かつての俺の名前は古河義氏。
どこに出しても恥ずかしいニートだ。
なぜこうなったか。それは簡単。俺が極端な怠け癖だからだ。
頭脳や肉体、センス自体はそこらの人よりちょっとは上だったと思う。間違っても天才ではなかっただろうけど。
だって何もしなくても努力をする普通の人よりちょっとだけ下程度におさまることができたのだから。
しかしその程度の才能ではなんにも為すことはできない。
何するにも面倒くさい。好きなことすらたまにやる気が起きない。
そんな俺は一日中ネットサーフィンをしてから眠るだけの日々を送っていた。
んで、俺には妹がいたのだが、彼女はいわゆる乙女ゲーマーだった。
特にハマっていた乙女ゲームはロフティ・ドリームというものだった。
内容はステータス上げをして、イケメンを出現させて、デートを繰り返し結ばれる、みたいなやつ。
いわゆるときメモみたいなやつだ。
なぜか妹はそういう素養がない俺にも貸し出してやらせてきた。
うん、なぜかハマったんだこれが。
俺の名誉のために行っておくがイケメンには欠片も興味がない。
俺がハマった要素は乙女ゲーのくせに主人公を含めて女キャラのデザインがやたら可愛かったことが一つ。
萌え絵じゃないのにやたら萌えた。
そしてもう一つ。こっちのほうが重要なのだが、ハマった最大の要因はステータス上げだ。
現実世界で努力をしたくてもする気が欠片も起きない俺にとってはとてつもなく楽しかった。
努力の結果を認められるのが嬉しかった。
なんなら妹よりハマってたと思う。
んで、なんでそんな話をしているかって?
それは…俺がそんな世界に悪役令嬢の取り巻きの妹として転生したからである。
いや、まじでどうしてこうなった?
前世の記憶を取り戻したのは8歳のとき。
というか一昨日。
目覚めたときは困惑したね。
だってゲームの世界に転生するとか意味不明だもの。
このゲームもハマっていたはハマってたけど、どうせならギャルゲーやエロゲーの世界に転生したかった。
それはそれで世界を間違ったらナチスの残党相手にギロチンで立ち向かったりしなきゃならなそうで嫌だけど。
しかし、お姉ちゃんの姿を見た瞬間にその考えは覆った。
…そう、めっちゃ可愛かったのである。
そして、一瞬で心が奪われた。
俺はこの姉と添い遂げたい。そう、思ってしまうほどに。
この世界では同性愛はそこまでタブーではない。普通に認められている。
そして貴族の間では血のつながった関係による婚姻はむしろ半分推奨されてすらいる。
だが、同性愛に関しては偏見はあるし、俺も姉も貴族だ。
きっと政略結婚の道具にされてしまうだろう。
だが、光明は見えた。
この世界では英雄がとてつもなく崇められる。
原作のヒロイン(ヒーロー?)の一人である貧乏貴族の五男坊アルコルはルートによってドラゴンを討伐したことにより、子供がいない大貴族の跡継ぎとして引き取られ、原作主人公と結ばれる。
この世界における過去の事例として、アンデッドの王を名乗るモンスターを倒した孤児の女性が貴族の女性を娶ったというのがある。
ということはだ。俺もとんでもない功績を残せばお姉ちゃんと結ばれることができるのでは?ということだ。
そして俺にはステータスが見える。
RPGというよりギャルゲー的な。
これは本来主人公の特権だ。主人公はステータスの上がり幅が大きく、なおかつ成長制限がかからない。
つまり俺は努力さえすればお姉ちゃんと結婚できるのだ!
前の世界では目標がなかった。だからだろうか、欠片も努力できなかった。
いや、おそらく脳の欠陥だろう。
脳の欠陥、ということはだ。この世界に来て脳が変わったんなら努力できるんじゃないか?
事実、記憶を取り戻す前まではできていた。
よし、努力しよう。
まずは容姿から上げることにしよう。
今の容姿はごく普通の幼女だ。年齢相応にはかわいいけど他の子と比べてたら大して可愛くない。
フツメンのままは嫌だ。美少女になってお姉ちゃんと結ばれたい。
「……リル、なにしてんの?」
お姉ちゃんが俺に話しかける。くっそ嬉しい。
でも結構冷たい目で見ている。
まあ、ギャルゲー的に言えば好感度不足かな?
「お姉ちゃんに好きになってもらうために努力してる!」
「あぁ…うん、頑張りなさいね」
お姉ちゃんはきっと姉妹愛として捉えているのだろう。
そして俺にはあまり興味がないようだ。
それ以上は追求してこなかった。
このサイト面白い小説いっぱいで自分も書きたいなーと思って始めました。
ハルジオンとかセガサブとか淡海とか良いですよね。
まあそれらの作品と違って私の文章は駄文ですが楽しく読んでいただければ幸いでっす。
お褒めの感想など頂いたら泣いて喜びます。