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コント「古本売場にて」

作者: らーゆ

店員「はじめまして!私、みゆきっていいます!今年で4回生になる華の女子大生!そんな私はここ、ブックオフでアルバイトをしています!大好きな本たちにいーっぱい囲まれて、とーっても幸せな日々!だけど、私にはどうしてもこの店で、許せないことがあるのです…。」


客「あのー、すいません。本売りたいんですけどー。」


店員「本を売る方ぶっ飛ばす!(本を売るならブックオフのリズムで)」


客「痛っ!!ええ!!!??なんで!!!!俺客だよ??なんで叩かれたん!!」


店員「そうやっていとも簡単に売り払って、あなたこの子たちの気持ち、考えたことあるの!??」


客「はい?この子たち??何の話!?」


店員「売られる本の気持ち、考えたことあるのかって言ってるのよ!!」


客「売られる本の気持ち!?」


店員「あなたと出会ったのは、町中にある小さな本屋でした。」


客「なんか始まった!」


店員「たくさん並んでる本の中から、私のこと、手にとってくれたよね。」


客「何?本のこと?いや確かに面白そうな本があるなあと思って、選びましたけど。」


店員「私嬉しかった。私なんて、周りから見たら全然大したことない、売れ筋でもない本だから。」


客「なんなのこれ?何を聞かされてるの俺は?」


店員「お店で私を買ってくれた時、私に似合うと思って、服も着させてくれたよね。」


客「……ブックカバーのことかな!?」


店員「はじめてのプレゼント、今でも大切に身につけてる。」


客「あんまりプレゼントとかそういう感覚ではなかったんだけど…。なんなの?この本、女性なの?」


店員「そのあとすぐに私の手をとって、あなたは家に連れて行ってくれた。」


客「そりゃ買ったら自宅に持ち帰りますから。」


店員「そしてその日の夜、気づいたら私はベットの上。」


客「まあまあ寝る前に読もうとしたらそうなりますね。」


店員「大胆だなって思った。」


客「バカじゃねえの?なんなのこれ?何の話をしてるの!?」


店員「そのあと毎晩毎晩、あなたは私の話をいつだって真剣に聞いてくれた。」


客「いやまあ真剣には読みますよそれは。」


店員「私の話に時には笑ってくれるあなた。」


客「面白い場面ですかね。」


店員「私の話に時には泣いてくれるあなた。」


客「感動する場面でしょう。」


店員「あなたのいろんな顔を見ることが、いつの間にか私にとって何よりの喜びで幸せだった。」


客「そんなに考えます?ちょっと本に感情移入をしすぎじゃないですか?」


店員「でも、そんな日も長くは続かなかった…。」


客「もしもし?もう僕帰りますよ?」


店員「一度読み終わったらすぐに飽きたのか、もう私の話なんて全然聞いてくれない。」


客「そういうつもりじゃないんですよ。」


店員「手にもとってくれなくって。私寂しくて、しばらくの間一人で泣いてた。」


客「帰りたい…。」


店員「そしてある日私は目を疑った!あなた、違う本をベットの上に連れてるじゃない!」


客「いやそりゃ違う本も読むでしょ!何その浮気したみたいな言い方!」


店員「それに私に見せてくれた時と同じ顔!私と違う本にもしてる!」


客「めんどくせえこいつ!何なのたかが本で!」


店員「私のこと、遊びだったの?」


客「やめろや!誤解されますよ!周りの人が今ここだけ聞いたら。」


店員「そして気づけばあなたはとっかえひっかえ違う本を…。」


客「全然怒られる内容じゃないんだけど。いやあの、ほんとそういうつもりじゃないんで!」


店員「いいのわかってる!!」


客「何があ!?全然こっち理解してないんだけど!」


店員「いいのわかってる…。どんどん日に日に紙質も悪くなってくし、どんどんボロボロになっていく。売られて、たまに買われて、少しだけ相手にされたと思ったらまた売られて、そうやっていろんな男に触られて私はどんどん汚れていく。」


客「買う人、男の人だけじゃないでしょうに。」


店員「売られて買われて売られて。買われて遊ばれてまた売られて。そしてそんなこと何回も繰り返して月日が経って!そして誰も手に取ってくれなくなった頃に私は一人気づくの!!ああ私、安い女に成り下がっちゃったんだなあって。」


客「女じゃないんだよ!本だから!!一冊の本!!」


店員「もうイヤ耐えられない!!そうやってあなたも他の男みたいに、簡単に売り払うんでしょ!!」


客「だあ!もうわかりましたよ!!」


店員「…え?」


客「わかりましたよ。確かに、この本一度しか読んでないし。もう一回読み直したらまた違った面白さに気付けるかもしれません。冷静に考えて手放すのは少し早かったと思います。もう一度こいつとちゃんと向き合ってみようかなと思います。だから売るのは今日は止めにしますよ。」


店員「お客様…。」


客「これで、いいんでしょ?」


店員「いや…、あの…、お店の形態的に、売ってもらわないと商売が成り立たなくて困るんですけど…。」


客「結局どうしてほしいんだよ!!」


店員「大切にして!!」


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