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犬と下種1

「犬を殺した人……いや人でなしがいるんですって?」

 ララシフルを統括する極光教の教会、その司教室。

 いくつもの蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れる一種幻想的な光景とも言えるその部屋。

 だが、そんなものよりももっと異様なものが、その幻想性などを訪問者に与えないだろう。

「は、はい。旅人のようなのですが……どういたしましょうか」

 司教に報告している男は、緊張して言った。

 おおん、犬が鳴く。

 そう、部屋には犬がいた。

 それも一匹や二匹ではない。何匹も部屋中にうずくまっている。

 その首には輪がついており、糸の束のようなものがそこから伸びていた。

「いい? あなたは当然わかっているでしょうけども、犬を大切にしないということは、人間性を持たないということ。つまり人間ではありません。だから、駆除しなさい」

「は……そ、それでは警備隊に連絡を……」

「寵愛騎士団を呼びなさい」

「な、寵愛騎士団ですか?」

「丁度スパイキーがいたはずです。狩らせなさい。今すぐに」

「は、わかりました」

 男は緊張した面持ちのまま部屋を辞した。

 部屋に残る司教は、蝋燭の薄明りの中、自分の膝のそばに寄せた犬たちの頭を撫でた。

「可愛いわぁ。貴方達。……そんな貴方達を殺すなんて……絶対に許せないですよねえ」

 ララシフルを実質的に支配するシアン司教は、どこか妖艶な笑みを浮かべた。

 しかしやはり、その瞳は怒りに満ちていた。

 犬たちもその気配を察してか、顔を上げる。

 その首輪から伸びている黒い束、それはそのままシアン司教に繋がっていた。

 それは髪だった。

 長く伸びた髪の、その端が、何匹もの犬の首輪に繋がっていた――

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