断罪者を断罪する罪人9
最上階、執務室。
大司教は、部屋の隅にあるガラスの円筒にシイタケを詰めようとしていた。
「くそー! 止めろー!」
縄でぐるぐる巻きにされたシイタケは、足をバタつかせて抵抗するが、無論その程度で妨害できるわけもなく。
「確かにイキがいいのう。たくさんのアクシオンが絞れそうじゃ」
「てめー! クロガネにぶっ飛ばされても知らねーからな!」
「ふはははは! 何をバカな。さっきの侵入者のことか? わざわざお前のような小悪魔を助けに来るものか。戦争でイカレタ傭兵くずれあたりじゃろう」
「イカレてんのはおめーだガキジジイ!」
「ふん。所詮は悪魔よ。儂の威光もわからぬとは。どちらにせよ侵入者などすぐに始末されるわ」
そこに、ドアが開かれる音がした。
「ほれ、もうその報告が来たわい」
そう言って笑いながら振り向いた大司教だったが、
「はて?」
紫煙の向こうに、おかしなものを見つけた。
黒服で、禍々しい意匠の剣を持つ女。
あんな格好の部下はいなかったはずだが――
「クロガネ!」
シイタケが叫んだ。
「クロガネ? それはさっきお前が言ってた……」
と、そこで彼はやっと気づいた。
「バカなあああああああっ!?」
「遅いぞクロガネ」
「黙れ。これで最速だ。感謝しろ」
絶叫する大司教をよそに、二人はいつものように話す。
「お前何瓶なんかに入ってるんだ。変な趣味でもはじめたか」
「うるさいな。さっさと出してくれよ」
「いや。この方が便利かもしれん」
「おい!」
「ははは。冗談だ」
「へへっ。当たり前だろ。冗談じゃなかったらぶっとばすぞ」
二人は笑った。
「く、警備は何をしておるんじゃ!」
「知らんな。昼寝の時間じゃないのか」
クロガネはつかつかと歩いて行く。
「貴様! ここをどこだと思っておる! 大司教の執務室じゃぞ! この無礼者めが!」
大司教は顔を真っ赤にし、つばを飛ばしてどなるが、
「なんだちび助。大司教の孫か? そういう口調はダサいから真似するのはやめておけ」
「くーーーーっ!」
大司教は赤い顔をさらにゆでダコのように赤くして怒りのあまり地団太を踏んだ。
「いや、クロガネこいつは……」
「この無礼者がーーーっ!」
「教会関係者はそればかりだな。聖書以外に辞書を読め。語彙が少なすぎる。もういいからどけ。子どもだろうが邪魔する奴は許さん」
「儂を誰じゃと思っている! 全世界を支配する教会の教皇に次ぐ実力者、ペイン大司教なるぞ!」
「へえ。……お前が。で?」
「え?」
大司教は目を丸くした。
クロガネは止まらない。
「だから何だと言っている」
「何じゃと……この儂は大司教で、神の威光に満ち溢れた……」
「要するに貴様がシイタケをさらわせた張本人というわけだろう」
クロガネは剣を構える。
切っ先を突きつけられる形となった大司教は、恐怖ではなく怒りに体を震わせた。
「たわけおって! 目的は何じゃ!」
「そこのバカを返してもらいに来た」




