表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/37

断罪者を断罪する罪人7

 塔の中に侵入したクロガネが見たのは、檻だった。

 正面奥には階段が見えるが、部屋の両脇は大きな檻がずらりと並んでいるだけである。

 明らかに人間用ではない。大きすぎる。

 だが、クロガネは気にもしない。

 一直線に階段へ向かう。

 シイタケは最上階だ。

 なんの根拠もないが、クロガネはそう決めつけてただ前に突き進む。

 その行く手を遮るように、一つの影が現れた。

「まさか、生きてるとはな。その上、ここに攻め入るとは、全くイカれてんじゃねえか?」

 言葉の内容に反し、その声は弾み、嬉しさを隠しきれないようだった。

「貴様にだけは言われたくないな、アリゲイター」

 クロガネは足を止めた。

 この相手は外の雑兵のように簡単に蹴散らせる相手ではない。

「その回復力は認めてやるがな。俺に勝てねえってことはわかってるだろ?」

「知らん。頭は悪いものでな」

 クロガネは両手を大きく開き、二刀で斬りかかる。

 アリゲイターもまたトラバサミを両手に構えて迫る。

 直後、常人では見ることも出来ない高速の攻防が起きた。

 瞬き程の間にクロガネは二十三撃放ち、アリゲイターはその全てを弾くと、三十撃の攻撃を放った。

クロガネはその全てを弾こうとはせずに、致命の攻撃のみ弾いた。浅くあちこち肌が裂かれる。

お互い大きなダメージはない。

だが、この一瞬の攻防で、実力差をお互いがはっきりと認識していた。

「……やっぱまだまだだな。この程度じゃあ俺には勝てねえ。また出てくるぐらいなんだから強くなってやがれよ。雑魚が」

 興が醒めた、そんな様子のアリゲイター。

 一方、クロガネの方は、ゆったりと、まるでこれから風呂にでも入ろうかというように立っていた。体のどこにも力が入っていない。

 そして、ゆっくり腰の剣に手を伸ばし、

「……あの時は抜けなかった」

 ぽつりと呟く。

 その言葉は誰に向けたわけでもなかったが、アリゲイターの耳にも届いた。

「あぁ? 何だ。この前は抜けなかった奴を今回は抜くってか?」

「もっと前だ」

「はぁ?」

 クロガネの掌が、悪魔の手を模した柄に触れる。

 魔剣シェイクハンド。

 その名の通り、この剣を抜くという事は、悪魔と握手し契約するという事である。

 一たび抜けば、悪魔の力――アクシオンを吸収し、更に上位の力に変換したもの――が流れ込む。

 それは肉体を作り変えてしまうほどの力。

 いや、正確には、そのあまりに凄まじい力に耐えられる肉体へと変えてしまう。

 抜くたびに流れ込む量は増え、それに耐えうる肉体に更に変わっていく。

 それが最大になった時、それは悪魔と同じ肉体になる。なぜなら、悪魔の力に耐えられるのは悪魔だけだからだ。

 そして、クロガネの肉体もまた――表面上はそれまでと大差ないが――確実に筋肉や骨格のレベルから変貌している。

 もしあと一度でも抜けば、クロガネは完全に悪魔と化してしまうだろう。

「好きでも嫌いでもなかったはずなんだがな……」

 だが、それでも――

「……今なら抜けるぞ」

 クロガネは悪魔と握手(シェイクハンド)した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ