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断罪者を断罪する罪人3

「……それが私とシイタケの出会いだった」

「精霊さんもシェイクハンドに封じられていたのか……」

 六角獣などに比べれば魔力が弱い存在であるから、真っ先に封印から解放されるのは自然な事だった。

「ああ。そしてアイツはこう言った」


「お、あんたが解放してくれたのか。百年くらい封印されててキツかったぜ。サンキュー! ……よっし、決めた! あんたに恩返しすることにするよ!」


「……!」

「わかるか? アイツは人間に百年も封印されてたんだ。それなのに恩返しだぞ?」

 語るクロガネの口元は僅かにほころんでいた。

「……私は、後になって人間が憎くないかとアイツに聞いたら、『百年前に自分を封じた奴なんかとっくに死んでるだろうしさぁ、恨む相手なんかいないじゃん』と言ったんだ」

 テトラも息を飲んでいた。

「……なぁ、テトラ。あいつは悪魔だと言われているが……悪魔はどっちなんだろうな」

 クロガネは立ち上がった。

 もう、テトラも止めようとはしなかった。

 代わりに、

「……僕も行くよ」

「ダメだ。死にに行くようなものだ。お前は魔道書を集めるという目的があるんだろうが」

「……目的か。それももうどうでもいい。……確かに僕は魔道書を集めている。これは全ての記述を突き合わせて『完全なる書』を作るためなんだけど、それ自体を作る理由はね、僕の半身を取り戻すためなんだよ」

「半身?」

「ああ。僕は教会の人間ではないけれど、ある程度魔法を使える。……僕の半身が精神世界に連れていかれたからなんだ。そっちで深悪魔と今も接続しているから魔法を使えるんだ」

 テトラが魔法を使えることは、クロガネも知っている。

 しかし、敢えて理由を聞こうとはしなかった。それは自分も似たようなものだったからだ。

 だが、深悪魔というところまで近似しているとは思っていなかった。

「なんでそんなことに……?」

「僕はもともと狂人だった」

「な……!?」

 驚きのあまり目をむくクロガネ。

「強力な魔道書には人を狂わせる力がある。それは記述を読むことで深悪魔のいる領域まで精神が接続してしまい、人のそれでは耐えられないからなんだ。だけど、僕はもともと狂っていたから、逆にいわゆる正常になった。自分の中の狂った面が向こうに引きずられちゃったんだ」

「そんなことが……」

「でもね……僕の心はあらゆる意味でぽっかり穴が開いてしまったんだ。この耐えがたい欠落感は、狂人たる自分を取り戻さない限り埋まらないのさ」

 テトラは自嘲気味に、いやもっと空虚に笑う。

「わかるかい? 僕の目的が果たされたとしても、結局僕は狂人になるだけなんだ。だから、僕の人生に意味なんて無いんだよ」

 だから、とテトラがクロガネについて行こうとした、その足を、

「甘えるな」

 クロガネは蹴り折った。

「がっ……な、何で……?」

 テトラはその場に立って居ることも出来ず倒れ込んで呻いた。

「護衛対象を死地に連れていくなど笑い話にもならん」

「バカな……一人で行くつもり……」

 クロガネはガウンを無造作に脱ぎ捨てると、部屋の隅のカゴに入れてあった黒服と簡易鎧を素早く纏った。魔剣は枕元にあったので勿論真っ先に持っている。

 そして、ドアを開けざま振り返り、

「お前は自分の隙間を埋める方法を考えろ。……空っぽってわけじゃあないだろう?」

「……!」

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