断罪者を断罪する罪人1
とんぼが飛んでいる。
朱色の体を持つ、この地方の種ソラアカネの群れが飛び交っている。
秋が近い。
それを土手でぼんやりと彼女は見ていた。
もうすぐ十三になる。
この地方では十三で成人だ。
珍しくもない。
じきに親の決めた許婚と結婚することになるだろう。
彼女は兄弟がいない。
家を継ぐために、婿として同い年の近所の三男が選ばれた。
特に主義主張もなく、温厚だがどこか臆病な青年――十三であるから少年と言った方がしっくりくる――だった。
話したことがないわけではないが、別段親しいわけでもなかった。
好きではなかったが、嫌いでもなかった。
彼女にとって彼は、そんな存在だった。
村の大人たちと同じように、結婚して子どもを産んで――
要はそういうことなのだろう。人生とは。
彼女はぼんやり考える。
嬉しくもなければ不満でもない。
ただ、実感だけがなかった。
その実感はわかないまま、彼女は誕生日を迎えた。
そしてその日。
彼女の人生は、本人の予想に反し、大きくずれることになる。
きっかけはとても小さなことだった。
その日、冬にはまだ早い上、この地方の気候帯的には極めて珍しいのだが、雪が降った。
いわゆる異常気象であるが、この地方では季節外れの雪を災いの前触れだと言い伝えていた。
その言い伝え通り、ある災いがこの小さな村に訪れた。
雪獅子である。
本来の生息地からは遥か数百キロは離れたこの地に現れた理由はわからない。群れで行動する雪獅子が、なぜ一匹で現れたかも、今もってわからない。
ただひとつはっきりしているのは、体長2メートルの熊を簡単に狩る、象ほどもある大型肉食獣が現れたということだった。
村の大人たちは子どもらを守るために戦ったが、歯が立つような相手ではなかった。
更にパニックになった村では、火災が発生し、瞬く間に広がった。
そして――




