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狩人を狩る狩人2

 極光教。

 およそ五〇〇年前、その名の通り極光――オーロラの中に神の姿を見たとされるルクレイティウスが起こした宗教である。

 その後の五〇〇年でそれまで一般的であったアニミズムや多神教を駆逐し、世界宗教にまでなった。

 その理由としてほかの宗教があくまで民族宗教でありその民族の構成員しか入れない宗教であったのに対し、この宗教が誰でも入信可能だったということもあるが、何より人々の信条まで変えさせたのは「奇跡』であった。

 始祖ルクレイティウスは数えられないほどの奇跡を行使したとされ、それによって多くの信者を獲得したのだ。

 現在では国家よりも力を持ち、王といえど教皇に破門されてしまえば終わりである。王の権威は王権神授説に依るゆえに、神の代理人たる教皇にそれを否定されてしまえば、権威の根拠が消滅するからだ。

 しかしながら、極光が示すとおり北方で起こった宗教ゆえに、南方ではその影響力は弱い。

 ココトクリ王国は極光教発祥の聖地ロローレラ教皇直轄領の隣に位置するため、教会の影響が特に強い地域である。また国土も比較的広い。

 つまり、教会に目をつけられたクロガネたちは細心の注意を払わなければならない移動が、長く続くということである。

 教会のマークがついた馬車は目立ちすぎるために、まずララシフル南のテテククリという小さな町の外れに停め、それから変装したテトラが幌を買ってきて付け替えた。

 また、テトラはクロガネの替えのマントと剣を何本か買ってきたが、剣は宝石を不用意にまた出したらしく吹っ掛けられたうえになまくらだった。

 そこでクロガネが行くことになったのだが、黒い剣士はもともと名が売れていたこともあり、黒服はあまり目立つ。

 再度テトラに町に行ってもらい、変装用の服を買ってきてもらったのだが――

「……なんだこれは」

 テトラが持ち帰った袋を開けたクロガネが、半ば呆然としながら呟いた。

 それもそのはず。

 袋から出てきたのは、純白のドレス、それもフリルがこれでもかとついている、かなり「キツい」服だった。ウエディングドレスではないが、どこぞの姫だ? と言いたくなるような本格派であった。

「ほら、黒い剣士って有名だろ? だったらその逆を行けばカモフラージュできるんじゃない?」

「だからってこんなのクロガネに似合うわけないじゃん。あははははははははははははははは!」

 シイタケは腹を抱えて空中を転がった。

「あははははは……は」

 その頭が掴まれる。

「ほう。そんなに可笑しいか。そうだな。筋肉と傷だからけの体だ。似合うわけがないよなあ」

 クロガネはにっこりと笑って言った。

 もちろん、目は笑っていなかった。

「あは……いや、似合わないことも、ないとボクは思うナア」

「無理するな。片言になっているぞ。そうだ。お前も純白にドレスアップしてやろう」

 クロガネはシイタケの頭を掴んだまま車外に体を乗り出すと、空いた手で地面から雪を掬い取った。

 そしてまったく躊躇なくシイタケの口にそれをねじこんだ。

「はぐうううう」

 テトラはそれを苦笑がちに見ていたが、

「それじゃあお気に召さなかったみたいだし、替えてもらってくるよ」

「あ、いや、わざわざ行ってもらったのに悪いだろう。……仕方ないがこれを着るさ」

 テトラが持って行こうとした服をひったくるように奪って、どこか顔を上気させながら言った。

「え? でも剣の時は替えるって……」

「い、いいんだ。そうだな変装にいいじゃないか。これならまさか私だとは誰も思わんだろう」

「なんだかなぁ……」

 わけがわからずテトラは頭をかいた。

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