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犬と下種9

 それは白馬。

だが、象ほどもあった。

 額には六本の捩じれた角を持っている。

 その巨大な獣は、人間を見つけると一直線に跳びかかった。

 クロガネは慌てて飛びのいたが、司教は後ろを向いていた分反応が遅れた。

「ぎゃわっ!」

 蛙の潰れたような声を上げ、司教は吹っ飛ばされた。

 獣の角の数本がその体を抉っていた。司教はそのまま茂みに突っ込む。

『クルルルルル……』

 獣がクロガネの方を向く。

 その眼は怒りに燃えていた。

「お前を閉じ込めたのは私じゃない……と言っても聞くわけないか……」

 クロガネは立ち上がるが、武器はない。

 いや、魔剣はあるが、それを使うわけにはいかなかった。

 倒れ伏す騎士の武器を奪うという手もあるが、そんな隙を見せれば間違いなく殺される。

 拳。

 それがクロガネに残された武器だった。

「……くそっ」

 クロガネは構えを取った。

 右手を前に、半身に構える。武術を習ったことのないクロガネの、唯一知っている構えだった。

 白馬――六角獣はそれを見て、どこか笑みを浮かべたように見えた。

 六本の角が低い唸りを上げて回転する。

 刺し貫かれなくても、触れればズタズタだろう。

「……全く、私が何をしたというんだ」

 クロガネは拳を前に走り出す。

 同時に六角獣も走り出していた。頭を下げ、その角で敵を引き裂こうと迫る。

 クロガネは先ほどの炎で露出していた地面の土を蹴り上げた。

 高速で突進していた六角獣は避けられるわけもなく、まともに顔に土を浴びる。

 人間のように二足歩行で空いた手を持つわけでもない六角獣は視界を奪う土をなかなか払い落せない。

 その間にクロガネは真横に回り込んでいた。

「しぃっ!」

 クロガネの拳が六角獣のこめかみに炸裂する。

 めぎっ、そう音を立てたのはどちらの骨だったか。

「ぐっ……」

 クロガネの肉体は、もはや自分が考えていた以上にダメージを受けており、己の攻撃に耐えられないほど消耗していた。

 痛む右腕を押さえながら、怒りに頭を振り乱す六角獣の後ろに回り込んだ。

 回り込んだものの、やはり彼女には相手を仕留めるだけの決め手がない。

 拳や蹴りでは致命傷を与えられないばかりか、痛んだ肉体では先に力尽きてしまうだろう。

 魔剣を抜けば倒せるだろうが、短期間に何度も抜けば肉体への負担は避けられず、その上『敵を増やしてしまう』。

 そして馬相手に逃げるなど論外だ。

 クロガネは怒り狂う六角獣に再び蹴り上げた土を見舞う。

 流石に二度もくらう敵ではないが、隙は生まれる。

 危険な賭けではあるが、その隙に倒れた騎士からまた武器を奪うしかない。

 その目論見は成功した。

 隙が生まれただけでなく、いかなる理由にか、六角獣の動きが止まったのだ。

 クロガネは槍を手に入れ、それを構えたが、相手の動きが止まった理由を知って慄然とした。

『クロロロキュレミレハルロロロロロ……』

「呪文……!?」

 クロガネは自分の迂闊さに怒りすら覚えた。

 あの剣に封じられているのは『魔法が使えるものだけ』だ……!

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