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犬と下種4

 寵愛騎士団は、国家から独立した教会の最高戦力。

 百十三の部隊が存在し、教会の敵を葬るために活動している。

噂によれば、神の寵愛を受けたその強さは常人のそれを遙かに超えると言う。

「待ち伏せされていたか……」

 監視の視線は外れていなかった。

 であれば仲間に連絡をとれたはずが……

「違うわよぉ。全てはお犬様のお・か・げ」

 騎士団の中でもひと際大柄な男が言った。

 その言葉通り、傍らには、黒い犬が居た。

「成る程。そいつの鼻というわけか」

「そう。伊達や酔狂で飼ってると思った?」

「どうでもいい。躾がなっていればな」

 クロガネはちらりとテトラの方を見た。

 妙な術が使えるとはいえ、寵愛騎士団から逃げられるとは思えない。

「……交渉は」

「しても無駄よん。私たちは神の意志の執行部隊。裁きはもう下ってるわ」

「そうか……」

 だが、とクロガネは言い、

「こちらもむざむざ死ぬつもりはない」

 安物の剣を引き抜いた。

「あら、戦うの? 神に歯向かうのと同じよ? 普通は泣きじゃるものなんだけどねえ」

「黙れ」

 問題は、いかにこの敵の囲いを突破するかということだ。

 それもテトラを連れてとなると、かなり厳しい。

「……やるしか、ないか」

 クロガネは走り出した。

 正面の大男にではない。

 背後のテトラに向かってだった。

 そして、その胸倉を掴み、

「え? え?」

「逃げろ!」

 思い切り投げ飛ばした。

 その体は囲いなど易々越え、信じられない勢いで飛んで行く。

 浮いているということは重さがないということ。ゆえにそれは軽々と――正確にはそれすら感じないのだが――飛ばすことが出来た。

 慌ててそれを騎士たちが追いかけようとする。

「待ちなさい! 追わなくていいわ!」

 それを大男が一喝した。

「討伐対象はあいつじゃないし、どっちにしろお犬様が居る以上逃げられはしないわ」

「く……ふざけた口調の割には冷静な判断じゃあないか」

「ふざけた? あたしは全然ふざけてなんかいないわよ。ええ、確かに男のあたしがこんな喋り方をしてたら不思議かもしれないわね。でもね、これは試練なの。わざと男の肉体に女の心を入れて。神がお試しになっているのよ」

 大男はうっとりと陶酔の表情を浮かべた。

 完全に自分の世界に入り、ぺらぺらと喋り続ける。

「あたしは、寵愛騎士団第三師団団長スパイキー。知ってる? 九十九人狩りのスパイキー」

「知らんな」

 思い出そうともせず、言った。

「そう、残念ね。今ね、あたしは九十九人の罪人を裁いてきた。あなたで百人目。百人裁けば、あたしは天国へ行けるの。天国ではちゃんと女の体でいられるわ。魂の世界なんだから」

「御苦労なことだ」

「だから、死んで」

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