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Boys Kiss  作者: mimuka
8/29

先輩とのキス

 オレには好きな人がいる。

 でもその人は高校三年生で、オレは高校一年生。

 しかも部の先輩、後輩。

 …あげくの果てには、男同士。

 絶対、ムリっ!

 だって先輩、大学生になったら彼女欲しいとか言ってたし!

 ……オレのこと、いつも


「可愛い後輩」


 としか言わないし。

 絶望的だ…。

 でも…告白しない方向はナシで。

 先輩と会うたびに、気持ちが爆発しそうになる。

 だから終わりにするんだ…。

「何だいきなり呼び出して」

 放課後、部活が休みの時に、先輩を部室に呼び出した。

「あの…言いたいことがあって」

「うん? 何だ、相談か?」

 先輩は何も知らず、ニコニコしている。

 …ちょっと罪悪感を感じる。

「あの、先輩ってオレのこと、どう思います?」

「可愛い後輩だ」

 ……何だろう? 今、イラっときた。

「一年生の中でも、俺に一番に懐いているしな。顔も性格も可愛いしな」


 ブチッ★


「…も、良いです」

「そっか? そんで、何の話なんだ?」

 この人には言葉よりも、行動で伝えた方が良いみたいだ。

「ちょっと屈んでもらって良いですか?」

「こうか?」

 ムカツクことに、先輩の方がオレより頭一つ分身長が高い。

 なので顔の位置がちょうど良くなったところで、オレは先輩の頭をガシッと掴んだ。

 そして―キスをした。

 唇をただぶつけるようなキスを。

「っ!」

 そしてすぐに離れる。

「―オレの言いたいことは、コレだけです」

 そう言って部室から飛び出した。

「おっおいっ!」

 そのまま廊下を走り出す。

「待てって!」

 でも10メートルしか進んでいない所で、先輩に捕まってしまった。

 後ろから抱き締められ、先輩の匂いや体温を感じてしまって…オレは逃げられなかった。

「…すみません」

「何で…謝るんだ?」

「先輩、彼女欲しいって言ってたのに…キス、してしまったから…」

「そんなのダチとの会話の社交辞令みたいなモンだ。…本当に欲しいなんて、思っちゃいない」

 オレを抱き締める先輩の腕に、力がこもる。

「…それで、俺に言いたいことって?」

「えっ?」

「ハッキリ言ってくんなきゃ、分からないだろ? 特に俺は鈍いから…」

 鈍い…。

 確かに先輩は鈍い。

 だからはっきり言わなきゃ…。

「…きです。好きです、先輩」

 精一杯声を振り絞った。

「…こっち向け」

 言われて、オレは顔だけ振り向いた。

 先輩は真っ赤な顔で、キスしてきた。

「んっ…」

「やっぱり可愛いよ。お前は」

「…それって褒め言葉ですか?」

「もちろん。俺はお前しか可愛いと思わないから」

 …なるほど。

 それはつまり―愛の言葉か。


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