「小説に不向きな題材8選」を考察してみる
「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、言葉だけで情景を説明するのは非常に困難を極めます。そして、小説は基本的に言葉だけですべてを伝えなければいけないジャンルなので、どうしても向き不向きというものが生まれます。
よく言われるのがホラー小説。クトゥルフのような狂気を描いた作品だとまだなんとかなるのですが、ゾンビものやスプラッターのような視覚に訴えるタイプのものをチョイスすると、どうにもこうにも料理しづらい題材となります。
今回は、こうした「小説に不向きな題材8選」を考察していきます。
1.手術モノ
医療小説にも「白い巨塔」のような名作がありますが、あれは院内政治がメインとなっています。これが、「ブラックジャック」のような手術メインの作品となると非常に苦労します。一般的な読者は臓物や筋肉の名前を書いても情景が想像できないからです。
例えば「チーム・バチスタの栄光」では作者が現役医師なのですが、彼をもってしても手術シーンはものすごくあっさりしており、物語のウェイトはやはり院内政治がメインです。
2.精神医療モノ
では精神医療ならどうなのかというと、これはこれで難しいです。といいますのも、精神医療というのは非常に長いスパンが必要であり、またメリハリがないものなので、どうしても劇的な展開というのが描きにくいからです。
一つだけ思いついた抜け道としては、患者視点での日記形式ならばかろうじて成立するものと思われます。
3.アクションメインのもの
アクションの爽快感を描くには、やはり小説は不向きと言わざるを得ません。「餓狼伝」「ニンジャスレイヤー」のような名作もありますが、やはり読者をうならせるアクションを描けるのは達人の領域でしょう。ニンジャスレイヤーは攻防を「イヤーッ」「グワーッ」で描写するという荒業で解決しています。
4.料理モノ
これも難しい題材です。漫画ではかろうじて絵で料理の凄さを表現できるのですが、小説ではそれも難しい(「食戟のソーマ」のノベライズなど、あるにはあるのですが)。例えば、世界三大珍味の味を頭に思い浮かべられる方はそう多くないと思います。「野武士のグルメ」のようなB級グルメを扱ったものなら比較的味の想像が及びやすいかと思いますので、勝負するならこの路線でしょうか。
5.音楽モノ
これは小説だけではなく漫画でも難しい題材です。「響け! ユーフォニアム」のような名作もありますが、他にあまり音楽小説を見かけないことからも難しさがご理解できるかと思います。
6.きらら系
意外と見かけないのがこの手の作品。ひとつは外見的な萌え要素の表現がし辛い点と、「視点」が定めにくい点でしょうか。
7.声優ラジオ系
「なにそれ?」と言われそうですが、「gdgd妖精s」や「てさぐれ! 部活もの」のような作品というとご理解いただけるでしょうか。面白い人を三人集めて録音して、会話形式でリプレイ風に書けばなんとかなるかも知れません。
8.巨大ロボットモノ
巨大ロボットの魅力はその格好良さですが、これを小説で描写するのは極めて困難です。
ロボットは人型であること以外はデザインがまちまちで(中にはゾイドのような獣型もありますが)、細かいフォルムを読者に言葉だけで伝えるのはとても難しいです。例えば、「RX-78」と「O-ガンダム」の容姿の違いを言葉だけで簡潔に説明できる人はまずいないと思います。
小説出身でアニメ化するほど人気になったのは「ARIEL」「フルメタル・パニック!」「ナイツ&マジック」ぐらいですが、前者2作は挿絵付きのラノベだからこそぎりぎり成立できたものだと思います(ナイツ&マジックについてはWEB原作未見につきコメントを控えます)。
以上、ざっと8つの不利な題材を考察してみました。皆様の御創作の一助になれば幸いです。