ポチっとダンディー
こんばんわ。この一件のブックマークのお陰で元気100倍です。では、どうぞです。
「言います!言いますから離して!」
「……だめー。ノームルさんがいるし、お前なんか必用ないんだよ。こんがり焼かれるがいいわぁ!」
リントの悲鳴が鳴り響く。それはまさに阿鼻叫喚であり、羽交い締めをしている貞夫は本当の意味で魔王な残虐な対応をしていたんだけど、途中で『マリリンの付き人の貞夫マイナス一』とノームルが発する。
突然のノームルの発言は意味が分からず
「なんだそれ?」
「いえ。別に」
「……ただ、マリリンさんは聖女に最も近い人。ならば、聖女には付き人に誰が相応しいか此方で判断していますの。」
少し考えたのち、羽交い締めはキャンセルに至る。休む休憩を与えず、リントに問い正したところ『そんなのあり得ない』は、マリリンさんのみ 違う階なんてあり得ないという。
更に言えば、アーリンとマーリンがいた場所こそ!闇の神殿の手引きがあり成り立っているので、そこより下の階というのがあり得ないと言う
。
「じゃあなにか、ココより下はお前ら聖女の管轄外ということか?」
ノームルは頷く。そして、基本ダンジョンの構造で下へ行くほどにモンスターが強くなって行く事を貞夫に告げる。
「でっ、でも!……マリリンちゃん生きてるよな!?……な!?ポチ!?」
慌てている貞夫、更に追い討ちをかけるように
「これは誰かの手引きと思われ、マリリンさんは殺されたりはしないとは思いますが、油断しない方が……早く見つけ出さないといけません!」
『原因は、恐らくアイツかもしれませんねぇ』と呟くノームル。リントも『アイツなら、やりかねないわね』と言っている事を聞いて
(正直アイツとかどーでも良い!今はマリリンちゃんが、ただひとつ!!)
「おい!今からこのダンジョンを全て炎にする。だから出ていけ。」
「……ダメです。」
「今から、他の冒険者が来るはず。いえ!もう来ているかもしれません。」
なんだテメェ!という感じでノームルを……見下したいのだが、ノームルの方が背が高いので見上げる感じで『あ?!』とメンチを切る。
更に貞夫に言い続ける。
「アナタは少なくとも魔王なのです。なので、私達聖女にもっとアピールする必用があるはずです。」
「これは警告だと聞いてください。近い将来、マリリンの側を立っているは勇者に成ってしまいますよ?」
(いーやーだぁー!)
「じゃあ……どうすればいいんだ!」
(あら?可愛い……意外と従順なのね。)
「とりあえず、アーリンとマーリンを助けて外へ連れ出して他の冒険者を待つか、二人を背負って奥へ進むかですかね。」
(二人を背負って!?……どうやって?)
(背中に一人で、あとは背中に一人?……どこだろう?)
(まあ!私の案を飲んでくださるのね。)
(というか、考え方が可愛いじゃないの!)
「なぁリント?」
「なによ!」
「俺、今回の事が終わったらお前を襲撃しようと思ってたんだけど、止めてやるよ。」
「その代わりに、アーリンかマーリンどっちか手当てするか背負ってくれないかな?」
「アラ不思議!それって、頼みには聞こえないんだけど?」
「分かった。お前を襲撃する。いつ襲撃するか、楽しみにしとけ!」
「ノームルさん、俺回復魔法出来ないんだけど二人に回復魔法してくれないかな?何なら金貨十枚あるから……。」
「まあ!金貨貰えるのでしたら。」
「では、これは寄付金ということで頂きますね」
ノームルさんの回復魔法で背負う事が無くなったので、急いで先を進む貞夫は魔法を発動する。
ポチを普通の犬サイズにした後、ファイヤーウォールインポチと唱える。
ポチは『ワフッ』と吠え、マリリンちゃんへまっしぐらに向かって行く。ポチが進んだ壁・床・天井は火で包まれ勝手に道標となる。
……
時は少しさかのぼり
「あれ!?マリリンさんじゃないかな?……やっぱりマリリンさんですね。ご無事でしたか?」
(うわ!嫌なタイプが現れたなぁ。)
「勇者様ですね?ああ、良かった。人に会えて本当によかった。怪我は運良くありません。」
「ライト様も御一緒でしたか。」
「マリリンさん一人で心細く無かったですか?」
「ご心配をかけて申し訳ありません。心細くは無かったです。ナゼかあの人の声が聞こえて来て勇気が沸いて来ましたので。」
(魔王……いや貞夫。佐藤貞夫か。)
(俺は、人から奪う快感がたまらないんだよなぁ。それがモシ、美人であれば尚更奪いたくなるんだよなぁ。)
『あの人の声』が誰なのか聞かずに、勇者と聖女とマリリンは洞窟を進む。
このチーム、本当にうわべだけで本当の顔を見せないのだ。ただ単に、嘘の笑顔と嘘の笑い声や嘘の褒め合い等のさまざまに話をやり取りをしている。
(ふーん。コイツ私が『あの人の声』というキーワードを出したのに突っ込んで来ないということは、貞夫君だってことは知っているのか。)
(じゃあ!)
「私!誰も言えない秘密があって……実は、貞夫様の事が好きで好きで……」
マリリンの嫌がらせ発動!こんなキャラじゃ無いのにムカつく女子に大変身した。
(秘密って言っておきながら言うのか!って言うか知っているわ!)
勇者は、少しキレそうになりながらも冷静に
「ああ、あの貞夫さんですか……どこが好きなのかな?」
「それは、もう!全部っ!全部が好きなの!」
「あえて言うならぁ、私を大好きなところ。」
(ああ、ガマン出来ないって感じかな?コイツ沸点低いわねぇー。)
(あんなクズオ!魔王の仕事も出来ずクビになった奴を何が好きなんだ!!……落ち着け!)
「……僕は勇者だ!君は聖女に成れる器をもっている。それは、横にいる聖女ライトもそう言ってる。」
勇者の隣には静かに聖女ライトが立っていた。勇者が、マリリンの器は聖女に成れるという言葉に無言で頷いていた。
一人の聖女が、一介の巡礼者に聖女の才能有り!と言われるのは極々僅かである。そんな、一人の聖女の助言を無視し言い返すのはマリリンだった。
「それは、ライト様の見立てでしょうか?私が知っているのは、三人以上の聖女の同意が無いと聖女に成れないと聞いていますが?」
「まさにその通りですね。ですが、それは三人以上というか聖女が複数いて……という前提でしょ?だったら、聖女は私だけだったら?」
『ホラ!見てください』とライトが言うと、地面が黒の影が出来ると、ソコからグニョッと形が変化し一体のモンスター?が出てくる。更に、モンスターは一人の女性に刃物を突き刺しており、女性は瀕死状態だった。
刃物が刺さった女性はライトと瓜二つという感じで似ていた。マリリンがまさか!?という気配を感じ取ったライトは
「ふっ!そうよ。双子の姉のブラッシュなの。」
「アナタの思惑通り、ブラッシュは闇の聖女なの。」
「コラコラ。シャドーもライトも勝手話を進まないでくれよ。マリリンさんが困っているだろ?」
それはそれは悪という名が相応しく、悪巧みというヤツである。
尚も、黙っているマリリンを誘う勇者は[とっておきの話]を持ち掛ける。
「僕も聖女を無下に殺すなんて事はしたく無いんだ。だけどね知ってもらいたい!この世界を支配するには、属性を極めれば良いと僕は気付いたんだ。」
「そして、聖女の文献を読んだらねアルことが判明したんだ!それは、聖女と寝ると属性を半分頂けると言うことさ。」
「そう!今の僕は、光・氷・風・地と闇を持っているのさ。ま、闇は半分だけどね?」
「僕は、全ての属性を手に入れて世界を魔王の手から救ってあげるよ。」
「だから、あんな魔王と別れて僕と一緒に成ろうよ。」
マリリンは一切考えず!感性で言い放つ!
「闇の聖女を殺害しようとしているということは、他にも闇の属性を渡すのが嫌だから殺すのかしら?」
「……もしくは、初めての相手のみに属性を渡すのかしら?」
「君はあんなキャラじゃ無い!ってことは知っていたけど。想像以上に頭の回転が早いんだなぁ?ますます、欲しくなったよ!」
勇者がそう言った時だった。ノペッとしたシャドーと言われていたモンスターが突然
「何かが、猛スピードで迫って来ます!」
「ワフン!」
ポチ参上!
「ぷ!フフフ。ハハハハハ!犬コロが何か用か?」
目の前の犬は、一般家庭で飼われているサイズ。色は銀がベースで所々に黒がマダラに入っている。ぶっちゃけ、シベリアンハスキー犬に似ている狼。
「侵害だな。我の名はポチ・助衛門!。」
「お前らごとき、我と我が相棒の手に掛かれば世界は火の海となるのに……主は実に優しい御方よ。」
いきなりのポチの発言は驚愕だった。皆が弱々しい只の犬と思っていた口から、渋いダンディーな声がダンジョン内に鳴り響いた。
(たしか……佐藤は時代劇が好きだったハズ!)
(であれば!もう一体がいるということか!)
「勇者様!向から水の聖女と風の聖女が来るわ!」
「く!早いな?!……まあいい。闇の聖女は死んだんだ。では近い内に、向かえに行くからな。」
勇者とライトはノペッっとしたモンスターの上に乗ると『どぷん!』黒の水溜まりへ入ったかと思ったら……もう、そこには二人の影は無かった。
代わりに、闇の聖女がアレから何回か刺されたのか……もうピクリともしない。
ありがとうございました。明日もどうか、よろしくです。