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私と少女との出会い

満月の夜を迎え百合はいつも通り近くの川原に行き夜空を眺めていた。

田舎だからこそ味わえる数々の星の輝きをただじっと何をするでもなく見つめて過ごす。

それが百合の日課だった。

そのいつも通りの光景にさらに今日は満月が雲に被さることなく見えている。

自然とにやけてしまう、それほどに綺麗だった。

何か悩み事があってもこの時だけは全て忘れられるそんな気がした。

なんでかわからないが、百合には両親の記憶がなかった。

ただ、《きっと》母親であろう人からもらった言葉が百合の心にずっと残っている。


『百合、月にはね、不思議な力があるんだよ。不可能を可能にしてしまう、そんな力が。』


この言葉を百合に伝えたであろう人物の声色ははっきりと覚えているのだけれど、どうしても容姿だけは思い出せなかった。

ただ優しい声だった、それだけはわかる。

百合はそれから少し月を眺めたあと、いつものお気に入りの歌を歌い始める。

あぁ、このときだけは、星も月も夜も私だけのものだ。


「あぁー!気持ちよかった!」


百合は歌い終えると体を起こした、腕をいっぱいに上げ伸びをした。

そして帰宅につこうと立ち上がろうとしたその時、近くの茂みで何かが動いた。

百合は一瞬びくっとしたあと、その茂みを凝視した。

蛇かなにかだったらすぐに逃げよう、そんなことを考えていると、少ししてそれは百合の前へと姿を現した。

なんと茂みから倒れこむように現れたのは金髪の少女だった。


「え?え!?えぇ!?ちょっと!大丈夫!?」


百合は戸惑いつつも少女に歩み寄った。

その少女は服はボロボロで、さらに傷だらけだった。

血はそんなに出ていないようだ。

よく見ると少女が来ているボロボロの服はドレスのようだ。

こんな田舎には似つかわしくない恰好の少女はなぜここに?

しかし、今はそんなこと気にしてる場合ではなかった。


「ひどい!!虐待!?」


百合は少女を抱え込んだ。

すると少女はうっすらと目を開いた。

そして今にも消えてしまいそうなか細い声で「助けて」、と確かにそう言った。


「...当たり前でしょ。助けるよ!!」


百合は少女を背負ってとりあえず家へと連れて帰ることにした。

これは誘拐になってしまうんじゃないかなんて考えていると、耳元で可愛らしい寝息が聞こえた。

どうやら少女は眠ってしまったようだ。

百合は少し興奮した、と言いたいがそれどころではなかった。


「待って...寝られると...さすがに...重い...」


涼しい夜道を汗だらで歩くことになるとは思ってもなかった。

それからも百合は家へ向かう途中色々な思考が巡り巡ったが結局は少女に聞かないと何もわからないと判断し、歩くことへ体力を向けた。

眠った少女を背負ったまま来たときの何倍もの時間をかけて帰宅した。

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