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スキップをする女子高生

窓越しに見る空はオレンジがいっぱいに広がっていた。

あぁ、夜が待ち遠しい!なんたって今夜は.....


「百合!チャイムなったよ!」


後ろから声をかけられハッと我に返る。

前を見ると国語担当の田島先生が授業に使うプリントや教科書をしまい始めていた。

いつの間にか授業は終わっていたようだ。


「どうしたの?ぼーっとして」


先ほどから私に声をかけてくれている彼女は友達の愛美。

長く伸びた綺麗な黒髪が特徴的で、私より少し背が高くスラッとした理想的な体形。

まぁ要約して言ってしまうなら、可愛い!その一言に尽きる。

ダメなところを探す方が難しい。


「あの...百合?そんなジロジロ見られると恥ずかしいんだけど...。っというかほんとにどうしたのよ」


しまった、あまりに愛美が可愛いから無意識のうちに見とれてしまっていたみたいだ。


「ごめんごめん!チャイム鳴ってたの全然気づきかなかったよ。」


そう言いながら帰る支度を始める。

っといっても机に出ている教科書と筆箱を鞄に雑に詰め込んで終了だ。

愛美は呆れたような表情でそれを眺めていた。

初めこそもっと綺麗にいれたら?など声をかけていたがもう諦めていた。

今だって本人は満足したように鞄のチャックを閉めている。


「さぁ!帰ろう愛美!」


「うん、かえ....うわ!」


愛美が返事をするより先に手を引っ張って教室を飛び出す。

廊下にいた他の生徒達は驚きつつも道を空けた、そうしないと危ないぐらいのスピードで走っていた。

後ろの方から先生の声が聞こえた気もしたがお構いなしに門まで走り続けた。

愛美は後日呼び出される覚悟たった今決めた。


「ちょっ、ちょっと百合!」


門を出たところで愛美が足を止めて息を切らしながら言う。


「ん?どうしたの愛美」


「どうしたのじゃないよ...なんで今日そんなに急いでるの?」


愛美は普段こんなに急いで帰ったりしない百合のことが少し気になった。

そんな質問をされて百合はニコッと笑った。


「んっふっふー、知りたい?」


なぜか自慢げな顔である。


「もったいぶらずに教えてよもう」


深く息をもらしながら言う。


「今日はね!」


「今日は?」


「今日は満月なんだよ!」


一瞬場が凍り付いたように感じた。

してやったかのようなどや顔な百合。

何を言っているんだと言わんばかりの愛美。


「.....は?」


先に口を開いたのは愛美。

美人な顔を台無しにしてしまいそうな勢いの顔になってしまっている。

しかし百合はぶれない。


「今夜は満月なんだよ!」


「.....あぁ。そっか、そうだったね」


愛美はいきなりのことで忘れてしまっていたことを思い出した。


「百合は夜空を眺める趣味があったね、それでか」


「うん!そうだよ!もうほとんど毎日見てるよ!」


ほんと普段の百合からは考えられないロマンチックな趣味だ、愛美は口に出さずそう思った。


「理由はわかったよ。でもね、百合」


「ん?」


「百合が急いでもね、夜は急いで来てくれはしないよ」


憐れむような口調で愛美は言った。


「.....わかってるよ!!もう、またそうやってバカにしてー!」


百合は拗ねたようにほっぺを膨らませた。

ごめんごめん、と愛美が頭を撫でてあげるとすぐ機嫌は戻る。

扱いにくいのか扱いやすいのかよくわからない。

そんなやりとりのあと今度は走ることなく歩いて帰宅を再開する。

他愛もない話をしながらしばらく歩くと十字路になっているところでいつも通り二人は別れた。

一人になった途端百合は少し早足になった、それほど今夜の満月が楽しみでしょうがなかった。

前の満月の夜は雨で見ることができなかったのだ。

それもあって今夜はいつも以上に楽しみだった。

考えれば考えるほど楽しみになっていき、最終的に早足を通り越してスキップになっていた。

今ここにスキップで帰宅をする女子高生が確かに存在したのだ。

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