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第19話 救出

優花たちを置いてオークの集落へ向かった俺は、集落かかなり離れた位置で止まり、近くにあった一番高い木の上に飛びのりまずは集落の状況の把握をすることにした。


集落は5つほどの建物があり、周辺を木で作った柵のような物で覆われていた。


その集落の入口には見張りだろう。

槍を持ったオークが2体ほど巡回している。


建物は真ん中にあるものが少し大きく、すぐ傍の小さ目な1つを除いて3つは大体同じくらいの大きさである。


全ての建物の周りに巡回しているオークがいる。


気づかれないように攫われた女性だけ助け出してから集落ごと吹き飛ばすつもりでいたんだが。

女性が囚われているであろう建物だけでも分かれば、気づかれないようにオークたちを無力化しながら助け出すこともできるだろうが・・・


そんなことを考えているとオークの一体が集落の外れにある建物に移動しているのが見えた。

そしてそのオークは建物の中に入っていく。



すると入って間もなく女性の悲鳴が聞こえた。

あの建物か!!!


気づいた瞬間に木を飛び下りた。

そして木を避けながら走り出す。


地球ではあまり出したことのない(安全面の問題でも陸上の世界記録的な意味でも)スピードで走る。


そして数秒で集落の入り口に到着する。


見張りは俺のスピードのせいで何が起きているか気が付いていない、というより理解が追い付いていない様子だ。


呆けている間に俺より高い位置にある2体のオークの頭を両手でつかみ、頭を地面に叩きつける。


悲鳴を上げる暇もなく2体のオークは絶命した。


・・・命を奪うことはあまりいい気分ではない。

でもここで躊躇っても仕方ない事は理解しているので躊躇いはなかった。



ちなみにあの魔剣は置いてきた。

慣れない武器を使うよりも素手の方が早い。


折角武器を見繕ってくれたべルムさんには悪い気もするが・・・


今後の戦いでは剣を使う練習をしよう。

剣で戦った方が目立つのは避けられるだろう。

・・・まあ今回に関しては仕方あるまい。


どこからか「目立つのなんて今更でしょ?」という声が聞こえてきそうだが気にしない。



また走りだし、先ほどの女性の悲鳴が聞こえた建物に到着する。

建物の周りを巡回していたオークが立ち止った俺に気づき叫び声を上げようとしたがそれより早く喉を潰す。

そのまま首を圧し折る。


そうして建物の中にはいる。

俺と同年代くらいの金髪の女性が腕を押さえつけられ、オークに今まさに襲われそうになっているところだった。

女性は涙ながら必死に抵抗しようと身を動かしているのだが力の差のせいで動けない。

その顔がだんだんと絶望に染まっていく。



オークのあの顔はたぶん笑っているのだろう。

女性が泣き叫び絶望の表情を浮かべるのを楽しんでいるのか、オークは嫌な表情をしながら女性に襲い掛かる。


その光景を見せられ怒りがわいてくる。

あの野郎、楽しんでいやがる・・・


「おい」


怒りのせいか思っていたよりも低い声が出る。


オークとしてはいいところ(・・・・・)でいきなり声が聞こえ、振り返ると知らない俺がいたことに驚いたのであろう。

事に及ぼうとしていたオークが叫び声をあげる。


「ブモオオッ!!?」


言語・文字理解のおかげなんとなく意味が分かる気がする。

「なんで人間の雄がここにいるんだ!!?」って言っているようだ。


こっちの言葉は通じるかわからないが一応話してみる。


「今来たところだよ、豚野郎。お前らが種族保存の欲求で子孫を残そうとするのは仕方ない事だろう。でもわざわざ痛めつけるようなことをしているんだ。似たような目にあっても仕方ないだろ?」


そのオークが何事か叫びだす前に頭に踵落としを喰らわせて叩き潰す。

そして建物が揺れ、俺の足元には血だまりが広まっていた。


女性は何が起きたか分かっていないようで呆けている。


「大丈夫か?助けに来たぞ」


俺が話しかけるとフリーズ状態が解けたようだ。


「!!助けていただいて、ありがとうございます!!」

「いやいいんだ。俺はこのオークの討伐依頼を受けた冒険者でな。アンタを助けることも以来の内さ」

「それでも本当に助かりました。あのままだったら私、オークに穢されてしまうところでした・・・いっそ舌を噛み切って死のうと思っていたところでした」

「そうか、それならよかった。それとこれ」


そういって俺は一番上の上着を女性に渡す。

先ほどから服が破かれているせいかなかなかきわどいところが見えそうになっていて気が気ではなかったのだ。


「ちょっとオークの返り血とか付いてるだろうし、男物の上着なんていやかもしれないけどとりあえずこれ着てくれ」

「あ、ありがとうございます・・・」


俺の言いたいことが分かったのだろう。

受け取った上着を急いで羽織った。


「アンタ以外に捕えられてる人はいるのか?」


周りの音を聞いてみたがオークたちの声以外には特に聞こえなかったので、一応女性に尋ねてみた。

他の建物はすべてオークたちしかいなさそうではあるが・・・


「私が連れてこられたときには、私以外はいませんでした。前に捕まっていた方は・・・」

「分かったから言わなくてもいい」

「・・・はい」


急成長した集落。

オークの数が増えた理由は言わずとも分かる。

おそらく体も心も限界で亡くなってしまったか、自ら命を絶ったのだろう。


俺が来るのが少しでも遅ければこの女性も同じような運命をたどっていた可能性が高い。

俺が今ここで集落を壊滅させに来なくても、ギルドの方から確実に集落を潰せる能力を持った集団がやってきただろうが、それまで命があったとしても心に消えない傷を負うことになっていたのは想像に難くない。


「よしとりあえず安全な場所に避難しててもらうか。ちょっと失礼」

「キャッ!!」


そういって女性をいわゆるお姫様抱っこの形で抱きかかえた。

女性は顔を真っ赤にしている。

会ってから間もない男にお姫様抱っこされるのは恥ずかしいのだろう。

少し我慢してもらうしかない。


「ちょっと早いから舌噛まないように気を付けて」


あまりスピードの出過ぎないように注意しながら走り出す。


そうして集落から少し離れたところまで連れてくると、俺を追ってきたのだろう優花たちの姿が見えた。

先に帰って村の護衛頼んだと思ったんだが。

まあ逃がさないように仕留めればいいか・・・


そうして女性を下ろしてラグネスたちに向かって話しかける。


「村の護衛を頼んでいたはずなんだけど、ちょうどよかった。この人を助け出したから守ってやっててくれ」

「ちょうどよかったじゃないぞ!!本当に一人で行きやがって・・・」

「タツヤさんが強いのは知っていましたがまさかこの短時間で、しかも一人で助け出してしまうなんて驚きました・・・」


ライとシリアがそう答えた。

他の面子も俺のこと心配していてくれたようで安心したような顔をしている。


「だから問題ないって言ったじゃないか」

「それでも無傷で助け出してくるなんて吃驚したよ。どうやったんだい?姿を隠すスキルでも持っているのかい?」

「ラグネスさん、冒険者のスキルの詮索はご法度よ」


マリーがラグネスを窘める。

気になるのも仕方がないとは思うが俺自身説明ができないしな・・・

スキル詳細不明(アンノウン)です、なんて言えない。


「気にしないでくれとしか言いようがないな。・・・優花、なんか不機嫌?」


ふと優花の方を見るとすこし不機嫌そうな顔をしていたので尋ねる。


「別に不機嫌じゃないよ。ケガとか無いか心配してただけ。大丈夫だとは思うけど・・・」

「気のせいならいいんだが、大丈夫だ。心配してくれてありがとうな」


確かに不機嫌そうな顔していたと思うが・・・

そう思いつつも優花の頭を撫でる。

笑顔で優花も頭を撫でられている。

俺が無事なのは優花が一番分かっていたとは思うが、心配してくれたことは素直にうれしい。


「うわ・・・」

「あれは素で気づいてないのですかね・・・」

「私はたまにタツヤは鋭いのか鈍いのかよくわからくなる・・・」

「ユーカもユーカで頭撫でてもらって機嫌治っちゃったし・・・」

「・・・お二人は付き合ってるんですか?」

「それがまだ付き合っていないらしいんですよ・・・」。


外野が何かを言っているがあまり気にしない方がよさそうだ。


それよりもオークの集落の件だ。

優花も来たことだし素手でオークたちを仕留めなくてもよくなった。


「さてオークの集落を叩き潰しに行くか」

「タツヤがいくら強くたって単身乗り込むのは危険だぞ?やはりここは増援が来るのを待ったほうがいいと思う」


ラグネスが提案をする。


「いや別に乗り込む(・・・・)わけじゃないさ」

「乗り込むわけじゃない?なら何か策でもあるの?」



不思議そうな顔をしてマリーが尋ねてくる。


「まあ任せてくれ。優花、近くに行ったら土属性魔術で1mくらいの岩を出してくれ」

「龍也が考えていることが分かったよ・・・」


優花は付き合いが長いだけあって俺が考えていることが分かったようだ。


「分かったか?ならよろしく頼む」

「龍也らしいって言えばらしいからね。何個くらい出せばいい?」

「とりあえず10個くらいあれば大丈夫だろ」


そうして集落の近くまで移動し、優花に岩を出してもらう。

女性はシリアたちが少し離れた位置で守ってもらっている。

ラグネスたちも俺たちが何をするのかをシリアたちの近くで見ている。


「よし、これで大丈夫だろう。サンキュー優花」

「どういたしまして。岩が足りなくなったら言ってね。で、私はマリーのとこまで避難してたらいい?」

「それでいいぞ。足りなくならないと思うがその時はよろしく」


優花がシリアたちのところまで行く間準備運動をする。

肩を念入りに回し、手首の運動も終え準備が整う。


見たところオークの死体が見つかったようで集落は厳重に警戒がされている。

しかし集落の中で起きたことなので外への警戒よりも中での監視が強くなっているらしくこちらには気づいていない。


「さて第一球行きますか!」


岩を1つ掴み、野球のボールのように思いっきり投げつける。

ものすごいスピードで飛んで行き建物の一つに着弾。

建物とその周辺の地面を吹き飛ばした。


「続けていくぞ!」


ボンッ!!と到底岩が飛んでも出なさそうな音が聞こえ岩が飛んで行く。

2つめ、3つめ、4つめと投擲をしてオークの集落は壊滅した。

周辺の地形も少し(・・)変わってしまっただろうが問題ないはずだ。


岩10個も必要なかったな。


「よし終わったぞー」


優花たちの方に向かっていき声をかけるが返事が無い。

優花は苦笑いをしているが他のメンバーは固まっている。


復活した時にどんな反応をされることやら・・・


「お疲れ、龍也。さすがだね!」

「まあこれが一番安全でかつ手っ取り早い方法だったろ。後はラグネスたちの反応だが・・・」

「怖がられたりはしないと思うよ?いい人たちだしね。今は現実の認識ができていないみたいだから少し待って説明かな?」

「そうだといいが・・・ま、なるようになるか」


何てラグネスたちにに説明しようか・・・

あっ、そういえばあの女性の名前聞いていないな。

それも後で聞かないといけないな。


そうして俺と優花は2人で話しながらラグネスたちが再起動をするまで待つことにした。

そんなスピード出して物体が飛んで行ったら、ソニックブームとか出て周辺も龍也もタダじゃ済まないだろう!というのは気にしないでください。

まあ例えマッハ波がでても龍也君ならケガはしなさそうですが。


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