第13話 買い食い
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服屋に着いた俺たちは2人で別れて買い物をする。
理由はお互いの目当てが下着などを含めた着替えだからだ。
いくら幼馴染とはいえ下着を見られることには抵抗はある。
下着はなぜかこの世界にもトランクスがあったので迷わずそれにした。
他の私服は店員さんにお勧めされた物を買ってみた。
地球にいた頃も店員さんに任せて適当に買っていたので、俺自身のファッションセンスはあまりない。
プロに任せた方が無難だろう。
地球の制服が珍しいのだろう。
俺の事を見て何やら店員同士で話していた。
そして現在は店の外で優花の事を待っている最中だ。
やはり女性は服を選ぶのにも時間がかかるのだろう。
まあ武器屋にも道具屋にも行って必要なものは揃えたのだし、服を選ぶのくらいはゆっくりさせてやりたい。
しかしこの時間は暇だな。
地球でならスマホなりゲームなりで時間を潰せるのだが、この世界にはゲームは持ってきていないしスマホは当然使えない。
充電の手段がないので現在は優花のアイテムボックスに入っている。
あの中ならば時間も止まっているので充電が切れることはない。
そうしてただ時間が過ぎていく。
そういえば昼飯を食べていなかったな・・・
どこかに食べに行くには少し遅い時間だ。
優花が買い物を終えたら、何かその場で食べれるような物を買っておくか。
中に居る店員さんに優花への伝言を頼み、ついでに何か摘まめるようなものが売っていないかを聞いておく。
店から少し歩いたところに串焼きを売っている店があるらしいのでそこへ向かう。
歩きながら昨日と今日の出来事を考える。
優花と終業式の後、買い物に行き帰路についたところで突然異世界へ呼び出された。
呼び出された先の城を半壊させ、次の日には冒険者たちから絡まれる。
そうしてベルムさんのところで武器を買い、道具屋では・・・
うん、特に何もなかったということにしておこう。
本当にいろいろあった。
ふと城の方向を見る。
現在急ピッチで再建しており、すでに俺が壊した部分の半分程度は修復が終わっている。
なんでも魔術師が集団で土属性魔術を使い、建築しているとのことだ。
朝食を食べているときに宿屋のおばちゃんが教えてくれたのだ。
この建築のスピードもMPの関係でさすがに限界があるので、魔術師たちはとても大変らしい。
仕事を終えた後倒れることもあるそうだ。
しかしそんな重労働でも、国からのMP回復薬の支給と給料の良さもあって魔術師たちには良い仕事となっているそうだ。
宿屋のおばちゃんの息子も魔術師の卵だそうで修行がてら修繕に行っているのだそうだ。
最初は息子が給料をもらえても修繕費のために税金が重くなると思いあまり歓迎はしていなかったそうだが、何でも王子が追加の税金はとらないとお触れを出したそうで街の住人は安心しているそうだ。
なぜ王子がそのお触れを出したかというと、現国王が部屋に引きこもって出てこないからだそうだ。
近いうちに王位継承が行われるという噂もある。
国王が部屋にこもった理由に心当たりしかない。
しかし王子は頭がよく品行方正な人物らしいので王位継承は町の人々からは歓迎されているそうだ。
あの馬鹿国王からよくそんな人物が生まれたな・・・
鳶が鷹を生んだということだろう。
俺たちに対する追手が全くないのは、俺の事を恐れていただけというわけでもなさそうだ。
そうして串焼きの店についた。
とても美味しそうなにおいがするが何の肉だろう?
「この串焼き買いたいんだけど何の肉を使っているんだ?」
「お、兄ちゃん買ってくれるのかい?これは健脚鳥のモモ肉を使ってるんだ」
「健脚鳥?どんな生き物なんだ?」
「ん?兄ちゃん冒険者みたいな格好しているのに知らないのか?」
「ああ、今日登録したばっかりでね。あんまり詳しくはないんだ」
「そうか新人ならしかたねえな。健脚鳥ってのはその名の通りものすごい健脚でな。水の上を走って逃げたり、崖なんかもすぐに上っちまうから捕まえるのが難しい魔物なんだ。鳥のくせに飛べないんだけどな。その分足の肉は引き締まっていて美味しいぜ!」
ダチョウみたいな魔物なのか?
ダチョウの肉は食べたことがあるが、牛などに比べてかなりあっさりしていて美味しかったから健脚鳥にも期待ができそうだ。
「よし分かった。それなら12本買うよ」
「毎度あり!兄ちゃん一人で12本も食べるのかい?」
「いや連れがいるんでそっちの分も入ってる」
「冒険者仲間かい?それとも彼女か?」
優花が彼女か・・・
「おっ、その顔は彼女の方かね?兄ちゃん顔がいいからなぁ。そんな二人におまけして12本で240クローのところを200クローにしてやるよ」
今まで顔がいいなんて言われたことなかったし社交辞令だろう。
まあ話す相手がいなかったのだが・・・
「彼女じゃないんだけどな。まけてくれてありがとう。気に入ったらまた来るよ」
「おう!そん時は彼女も連れてきてくれよな!」
だから彼女じゃないって・・・
少なくとも今はまだ。
優花に俺の気持ちを伝えたい。
しかしその気持ちを伝えるのは今ではない。
少なくとも俺はある程度、地球に帰るための手がかりを見つけるまでは言うつもりはない。
そう決意し、服屋に戻った。
ちょうど優花も買い物を終えたところのようで外に出てきた。
「おかえりー龍也。どこ行ってたの?」
「ちょっと小腹がすいたから食べ物を買いに。これが優花の分な」
健脚鳥の串焼きを多めに5本、優花に渡す。
「そういえばお昼食べてなかったからねー。んー美味しそう!龍也ありがとー!」
そうして本当においしそうに串焼きを食べはじめる優花。
俺も1本食べてみる。
本当にうまいな、この串焼き
7本なんてすぐに食べられてしまいそうだ。
また買いに行こう。
そして2本目を食べながら、優花の方を見る。
優花は笑顔で串焼きを食べている。
昨日のどこか陰のあった表情ではなく、いつもの優花の笑顔だ。
この笑顔をずっと見ていたい。
自分が優花に惚れていることを再認識する。
この気持ちを何時か伝えることを決意した。
そうしている間に優花は2本串焼きを食べ終え、3本はアイテムボックスに袋ごとしまった。
「あー美味しかった。今は2本だけでいいや、ごちそうさま!」
「これならもう1回買いに行ってもいいな」
すでに7本目を食べ終えていた俺は優花にそう答えた。
今度もう1回買いに行こう。
かなり気に入ったので多めに買って優花に取っておいてもらうのもいいな。
「さて買うものも買ったし、宿屋に戻るか?それとももう少し町を見ていくか?」
「んーと、今日のところゆっくり休んで明日の依頼に備えた方がいいかな?」
「それもそうだな。じゃあ帰るか」
明日は初依頼だ。難しいものなんてないだろうが万全の状態で挑むに越したことはないだろう。
いろいろな準備をすべて済ませた俺たちは宿への帰路へついた。
いよいよ次話で初依頼です




