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06.「しつこく迫ってきた」

この第6話の前に日中第5話を投稿しております。

ご注意下さい。

 

 


「それにしても、かなりの人出だな」



 広場と広場を繋ぐ石畳の通りは大体だが二車線道路と同じくらいの道幅がある。

 だが実際には先程のポーションを買ったような露天やら、オープンテラスのようにテーブルと椅子を店先に並べている飲食店らしき店もあり、一車線分ほどしか歩くスペースがない状態だ。



 そして今日は公式スタート初日と言うこともあり、NPCに加えプレイヤーのログイン率も高いようでごった返していた。



「急ぎたいんだが、これ以上は無理か」



 本当なら【早駆け】のスキルをテストも兼ねて使って先を急ぎたかったのだが、この様子では無理だろう。

 正直なところ今の小走りでも回りからしたら迷惑かもしれないし。



「しかたない。歩いて行くか」



 春香にはすぐ行くと言っておいて悪いが、ここは歩いて行くことにしよう。

 人にぶつかるのはゴメンだからな。



「コール」



 俺は春香にその旨を伝えるべく春香にコールを繋いだ。



 プ、プ、ガチャ。



『あ、イオ? 丁度良かった』



 コールした途端すぐに春香が出た。



「ああ、実はちょっとそっちに行くのが遅れそうでな。それを伝えようと思って」



 俺は道草を食ったことは内緒にして、人出が多くてなかなか進めないと言っておいた。

 いや、嘘をつくのは悪いとは思うけど、本当のことを言ったら怒るだろうしな。

 さすがの俺も怒られるのはゴメンだ。



『ゴメン。何とかしてすぐ来てもらえる? ちょっと面倒なことになっちゃってて……はぁ~』



 春香の面倒くさそうな雰囲気と小さく漏れた溜息がコール越しに伝わってきた。



「……わかった。なるべく早く行くよ」



 俺は同じような春香の雰囲気を現実世界の方で何度か経験しているので、多分またなんだろうなと思いつつ返事をした。



『うん、よろしく。あ、あと今フレンドの子と一緒に居るから』



 俺はわかったよとシャロンに言ってからコールを切った。

 さて、急ぐとしようか。



「すみません! すみません!」



 俺はスキルは使わなかったが人混みの中を走り出した。

 謝罪しながら走る俺の姿をNPCやプレイヤー達は一様に『なんだコイツ?』みたいな目で見ていたのだった。

 


 ご迷惑おかけしまして本当に申し訳ない。



 その後程なくして俺は北広場へと到着した。

 道すがら何度か人にぶつかりそうになったりしたが、実際にぶつかることはなかったのでご勘弁頂きたい。



「えっと、アレだよな」



 北広場の中央に生えている大樹。

 春香と待ち合わせしていた場所だ。

 おそらく俺達以外にも待ち合わせに使うであろうその場所は、今は何故か人気がない。

 


 いや、実際には大樹の根元に数人の人影があるのだが、その人達を遠巻きに見る人で壁が出来ていてちょっとした空きスペースが出来ていた。



「はぁ、やれやれ。またか」



 俺は頭をガリガリと掻いて溜息を吐く。

 ……なんだかあの露店の店主みたいな行動をしてしまったな。



 俺の毛根は大丈夫だろうかと内心心配したが、そういえばこれはゲームだったと思い出し安堵し、遠巻きに出来ている人壁を割って大樹の根元へと足を向けた。



「あっ!」



 そこにいたのは女性二人と男性四人の計六人だった。

 俺の事に気が付いて呼ぶ声に釣られて、歩いてきた俺に全員が顔を向ける。

 その内女性達は俺の登場を笑顔で迎えてくれたが、男性達は不機嫌そうな表情を隠すことなく俺のことを睨み付けてきた。



「イオ! こっちこっち」



 水色の髪を編んで肩越しから前に垂らした女性が俺のアバターネームを呼び、そして俺に対して手を振ってきた。

 最初は髪型と色のせいでわからなかったが、よく見てみるとそれは春香だった。

 何故春香だと断定出来たのかと言えば、顔が現実と同じだったので間違えようがない。

 ただ現実ではロングの黒髪だったのに色もヘアースタイルも変わっていたため、気が付くのに時間が掛かっただけだ。

 そんな春香は某魔法学園の制服のような白のブラウスに黒のミニスカート、その上から黒いマント?を着ていて背中には身長と同じくらいの長さがある木の棒を背負っていた。



 もう一人の女性は、春香がさっき言ってたフレンドの子なのだろう。

 こちらは明る目の茶色の髪色セミロングで、膝と肘にはエルボー&ニーパッドを装着し胸部に焦げ茶色、おそらく革で出来た防具を着込み背中には弓と矢筒を背負っていた。

 春香よりも身長が高く、スレンダー美人でクールな印象を受ける。



 そして女性陣の周りにいる男性四人。

 この人達は春香達を大樹に追い詰めるような立ち位置で取り囲んでいる。



 四人とも揃いの鈍く輝く鉄鎧を着ていて、内二人は背中に幅広かつ長い剣を背負い、残り二人は四角く表面が湾曲した盾を背負って腰に短めの剣をぶら下げていた。

 全員が全員外国人みたいな彫りの深い顔の作りをしていて、世間一般的にイケメンなのだがどこか作り物めいている印象を受ける。



「……何だアンタ。こっちは取り込み中なんだよ。あっち行っててくれ」



 男達のうち剣を背負ったひとりが歩いてきて、俺の事を威圧するかようにやや上から睨み付ける。

 俺の身長は現実のまま一七三センチだから身長は一八○から一九○センチくらいかな?

 


 そこでふと、目の前で仁王立ちする男性の右目に縦一本線の傷跡があるのに気が付いた。

 この男性がひとりだけ前に出てきたところを見るに、この人が集団のリーダー的な立場のようだ。



「何が取り込み中ですか。私たちは先約があると言ったはずです。にも関わらず、しつこく迫ってきたのはあなた達でしょう」



 春香のフレンドの女性がそう言って男性達を非難する。

 やはり第一印象通り淡々と話す様子はクールな感じだった。



「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえぞ! ただPTに誘っただけだろうがっ!」



 未だ取り囲んでいる盾を背負った一人が声を荒げる。



「はぁ、もう……だから遠慮するって言ったでしょ。いい加減しつこいのよ」



 それに対して春香もうんざりした様子でちょっと棘のある言い方をする。

 まったく……。



「やっぱりね――はぁー」



 俺はやれやれと諦めを含んだ溜息をそっと吐いた。

 どうせこんな事だろうと思ってたよ。

 

 

 

 

最後までお読み下さってありがとうございます。


お約束ですが絡んでくる輩が登場しました。

「こんなの実際いないだろ」と私も思っていましたが、GTA5のオンラインの荒れっぷりを見て聞いて体験した後は……いないと言い切れなくなりますね。


誤字脱字報告、感想、評価、よろしくお願いします!


※誤字訂正3/8

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