04.「フレンド登録者数はゼロ」
4話目にしてようやくゲームにログインしました(汗)
……久しぶりにエオルゼアやってみようかな?
「……ん?」
次に目を開けた時、俺は“∞”の世界に立っていた。
どうやらここはプレイヤーがログインした際に出現する場所のようで、俺の回りには数多くのプレイヤーが同じように立っていた。
「おおお! ついにっ! ついに来たぜえぇぇ!」
「へえーこれが“∞”かー」
「めっちゃリアルだなぁ。すげぇ……」
「探、検♪ 探、検♪ た、ん、けーん♪」
老若男女、まあアバターなので外見は弄ってあるだろうが、みんな興奮した様子で大声を上げたり、目を輝かせて周囲をキョロキョロと見ていた。
「よし! さっそくモンスターとバトってみっか!」
「我々は今後ギルドを作る予定です。興味がある方がいらっしゃいましたら、私“ジェット”に声を掛けて下さい。もちろん後からコールなど使って連絡して頂いても構いません」
「誰かPT組みませんか?」
「後衛募集中でーす。回復、支援よろしくお願いしまーす」
中にはさっそくモンスターと戦いに行くようなアクティブなプレイヤーもいるようだ。
今この瞬間もあちこちで数人のグループが出来ていて、さらに道行く人に声を掛けている様子も見られる。
「“∞”よ! 私は帰ってきた!」
「いや、そこのあんた。帰ってきたも何も、まだこのゲーム始まったばっかりだろ」
「コール……あ、もしもし、オレオレ、オレだけど」
「そこのあんたは怪しすぎるぞ。何だよそれ、詐欺か」
「はぁ、はぁ、はぁ!」
「おっおい! あんた大丈夫か!? どこか具合でも悪いのかっ」
「け、け、獣耳! 獣耳はどこにいる! ネコ娘にイヌ娘にキツネ娘にバニーガールはどこだあああっ!?」
「ちょっ! 人の近くではぁはぁ呼吸を荒げるな! しかも何だその欲望丸出しな願望は……あれ? 最後なんかおかしくなかったか?」
「俺は――この街の――いや――この世界の――神になるっ!」
「もう何なのこの人達!? このゲーム碌なプレイヤーいねぇのかよ!?」
……ちょいちょい怪しいことを言っていた人もいるが、きっとテンションが上がっているせいだろう。
きっとそうだ。
そうだと思いたい。
あとそれに付き合って律儀にリアクションしている彼。
頑張ってくれ!
俺を含め大勢のプレイヤーが大きく距離を取りながら見守っているぞ!
だから近づいてこないでね?
「さて、俺も春香にコールしないと」
俺はオレオ○詐欺風の人を見て思い出し『コール』と声に出す。
すると丁度胸の辺りに半透明のウィンドウが現れた。
どうやらこのウィンドウからコールする相手を選ぶ仕様になっているらしい。
「フレンド登録者数はゼロ。まあ今始めたばっかりだから当たり前か」
ウィンドウには『フレンド登録なし』の文字。
登録した相手ならその名前をタッチするだけでコールすることが出来るようだ。
だが今回はウィンドウ右上にある『入力検索』に春香のアバターネームを入力して直接呼び出すことになる。
俺は別ウィンドウで現れたキーボードをタッチした。
「えっと、シャ…ロ…ン、っと」
春香のアバターネームは『シャロン』という。
何でも昔からゲームで主人公の名前を付ける時はこれなんだとか。
どうしてこの名前にしたのかは本人も忘れたらしいけど。
プ、プ、プ、プ、プ――。
通話の呼び出し音のような音が聞こえる。
プ、プ、プ、カチッ!
『もしもし? どちら様ですか?』
呼び出し音が止まると聞き慣れた妹の声が耳――というより頭の中に直接聞こえてきた。
「あー、俺だけど」
不思議な感覚に戸惑ってつい先程の怪しい奴みたいな事を言ってしまった。
「えっと、俺って言ってもお前の兄の京谷だけど」
言ってしまってから思わず訂正した。
『もー、声を聞いたらわかるよ』
どうやら心配しすぎだったようだ。
春香はカラカラと笑っていた。
「それで、俺はどうすればいい?」
何たって俺は初心者だ。
ここはβ版からプレイしている春香の指示に従うのが得策というものだ。
『えっと私は今北広場にいるんだけど、そっちはどこの広場?』
このゲームに初ログインしたプレイヤーは一律に一つ目の街『フォート』にある東西南北、それぞれの広場に出現する。
「どうやって確認するんだ?」
春香に聞くと各広場中央にある大樹――屋久島の縄文杉を思わせる――を見ると《~広場》と表示されるのでそれで確かめるか、ステータスから【マップ】で確認出来るらしい。
その指示通りジッと大樹を見てみると《南広場》と大樹にから文字が現れた。
「俺は南広場だな」
丁度春香とは真逆の位置関係だ。
『じゃあ中央広場に向かってそのまま北広場まで来てくれる? 道がわからなかったらマップを見ればいいよ』
俺は『マップ』と呟いて地図を表示する。
どうやらこの街フォートの主要な道と広場が表示されているらしく、小道のような細かい表示はされていなかった。
そして地図を見てわかったのだが、ここフォートの街には東西南北に加えてもう一つ中央広場という広場があり、全部で五つの広場は丁度サイコロの五の目みたいな位置となっていた。
「今確認したからそっちに行くよ。北広場の大樹の下辺りで待っててくれ」
俺は歩を進めつつ待ち合わせ場所を伝える。
『りょーかい。じゃあ待ってるからねー』
返事を聞いてコールを終了する。
まずはこのまま中央広場へ。
そして春香のいる北広場へと向かうことにしよう。
最後までお読み下さってありがとうございます^^
ようやく本編はゲームにログインすることが出来ましたね。
ちょっとネタ臭がプンプンするプレイヤーもいたようですが……
彼らに今後出番はあるのでしょうか!?
誤字脱字報告、感想、評価して頂けたら嬉しいです!
それではまた次話にて。