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03.「ようこそ“∞”の世界へ」

今のところ11話まで書き終えてから見直しもしましたので、順次投稿していきたいと思います。


※加筆4/25

※脱字訂正5/25

 

 

 

「あの、特典ってなんでしょう? それに“称号”と“ドラゴニュートの友”って?」



 一度に色々言われても『なんのこっちゃ?』である。



『まず、特典は“∞”公式スタートに合わせて設けられたサプライズ企画です。特典を入手する条件は多数ありますがお教えすることは出来ません。また、全ての特典内容はランダムに決められます』



 えーっと、つまり今回の特典はデパートとか娯楽施設で偶にある、『来店、来場○○○人目のお客様!』みたいなイベントってことか。

 それを今回偶々俺が踏んだと。



『次に称号についてお教えします。称号とはスキルと別枠の物で条件を満たすと入手出来ます。追加効果を持ちプレイヤーの力となる物もあれば、力にならなくとも持っているだけで箔が付く物、果てには何の役にも立たない物まで様々な称号があります。称号は持っていなくてもプレイするのに支障はありませんが、よろしければ称号入手にチャレンジしてみて下さい』



 称号を手に入れると追加効果とかあるのか。

 中には効果がない物もあるみたいだけど、機会があれば入手を狙ってみてもいいかもしれないな。



「じゃあ今回のドラゴニュートの友はどんな称号なんですか?」



 ドラゴニュートって、たぶんドラゴンのことだよな?

 追加効果があればいいな。



『ドラゴニュートの友の効果は、【ドラゴニュート族との友好度上昇】 【ドラゴニュート族用固有スキルの習得許可】です』



 ヘルプさんは手短だがわかりやすく説明してくれた。

 がしかし、友好度上昇ってのはまあまだどんな物か想像出来るけど、固有スキルとかまたわからない言葉が出てきたぞ。



「すみません。“固有スキル”ってなんですか?」



 質問ばかりで申し訳なく思いつつも、ヘルプさんに聞くしかない俺だった。



『固有スキルとは各種族の中でしか広まっておらず、またその種族しか習得出来ないスキルのことを指します。本来固有スキルは他種族が習得するのは不可能となっています。ですが種族毎に課せられたある条件を満たすことに成功すると、スキル習得の試練を受けることが可能となります。今回は称号の効果により無条件で試練を受けることが可能となります』



 へえーと頷く俺。

 各種族毎に専用のスキルがあるのか。

 ドラゴニュート族のスキルはどういうのかわからないが、門外不出というからにはきっと強力なスキルなのだろう。

 これは是非とも指南を受けてみないとな。

 


『他に何かご質問はありますでしょうか?』



 少し考えてみるが今のところはないな。



「いえ、大丈夫です。アバターメイクを続けて下さい」



 ヘルプさんは『了解しました』と言ってアバターメイクを次の行程へと進めた。



『ではアバターの容姿を設定して頂きます。元となるアバターは現実世界のあなたの姿をしています。性別以外は全て変更が可能となっております』



 説明が終わると室内が薄暗くなり、等身大の俺の姿が空中に表示される。

 試しに頭に触ってみると髪を弄るウィンドウが現れた。

 どうやら髪型や髪色を設定出来るようだ。



「へえ~。結構細かいところまで設定出来るんだな」



 暫く俺はアバターメイク中だということを忘れて、どんなことが出来るのか弄くり回すことに没頭してしまった



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。



 




『アバターの容姿はこれでよろしいですか? Yes/No』



 俺は表示されたYesを指先でタッチする。



 最終的に俺のアバターは髪と瞳の色以外は現実世界と同じ外見になった。

 変更した髪の色を黒から灰色に変えたくらいのものだった。

 灰色好きなんだよ。



 おそらく現実世界の俺を知る人が“∞”内でこのアバターを見たら一発で俺だと気付くことだろう。

 天然パーマで目に掛かるくらいまで伸びた髪で、自他共に認めるモジャモジャ頭だからな。



 いや、最初は確かにもはや俺の原型はない全く別人のような容姿を持つアバターを作ったんだ。

 だけどこんな誰ともわからないアバターがゲーム内とは言え自分自身になるのかと思うと……こう、どうしても違和感があった。

 なので『やはり自分は自分だろう』という短絡的な考えでこうなったというわけだ。



『では次にスキルを習得して頂きます。最初に選べるスキルは全部で八個までです。どのスキルを習得し組み合わせるのも自由です。ただし、スキルは重複(ちょうふく)して習得することは出来ません。またアバターのステータスは習得したスキルによって変動します』



 初期のステータス、つまりアバターの強さは皆一様に同じに設定されているが、そこから習得したスキルによって変動を見せる。

 例えば武器を扱うスキルを習得すると【STR(腕力)】が上がり、魔法スキルを習得すると【INT(知力)】が上がるといった具合だ。

 生産スキルだと【DEX(器用)】が上がるらしい。

 


 現実世界での経験はステータスの値に影響しないが、上手い下手の差は出る。

 例えば同じ【剣】のスキルを習得しても、剣道をしている人と素人では剣を扱う力量に違いが出ると言った具合だ。

 


「さて、何を選ぼうかなぁ」



 とりあえず攻撃手段として武器スキルを習得して、その補助をいくつか。

 あとは適当に便利そうなのを選ぶとしよう。

 生産は……どうしようかな?



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。


 





「よし、こんなもんだろう」



 一応考えて選んだつもりだが、実際に使えるのかどうかはわからないな。

 そんな俺のスキルはこの様になった。



【槍】

 槍を使った攻撃が可能になる。

 New!《二段突き》を覚えました。



【蹴撃】

 蹴り攻撃に補正が掛かる。

 New!《前蹴り》を覚えました。



【火魔法】

 火属性の魔法が使えるようになる。

 New!《ファイア》を覚えました。



【早駆け】

 スタミナを消費して通常よりも移動速度を上げることが出来る。

  


【身体能力上昇】

 アバターのステータスを微上昇させる。



【隠密】

 気配を絶ち、身を隠すことが出来る。 



【薬師】

 アイテムの生産、加工が出来る様になる。

 New!《調合》を覚えました。

 


【幸運】

 ?????



 まず攻撃手段として近距離は【蹴撃】、中距離が【槍】、遠距離として【火魔法】を取った。

 最初にメインの攻撃手段として槍を選んで、それをカバーする為に蹴撃と火魔法のスキルを選んだ。

 単純に『リーチが長い武器の方が有利そう』という理由で槍を選んだが、この三つの攻撃手段の組み合わせはなかなか良いんじゃないかな。

 ちなみにリーチが長いなら弓はどうかとも考えたが、弓なんて現物を見たこともないし触ったこともないので、最初から習得スキルの候補から除外した。



 あとは戦闘時や移動時は勿論、他の場面でも使えそうな【早駆け】のスキル。

 ステータスを強化する【身体能力上昇】と、もしもの場合を考えて逃げる手段として【隠密】も取っておいた。

 ついでに生産スキルの一つである【薬師】を取ってみたが、これは回復アイテムなんかを作れるはずなので、自給自足出来れば安上がりかもと思い選んだ。

 最後にスキル欄の一番下にあった【幸運】を取ってみた。

【幸運】は謎のスキルだが名前からしてマイナスになる事はないだろう。



 あとはまあ、スキルの詳しい効果とかについてはプレイして行く中でいろいろ試してみようと思う。



『スキルの習得はこれで終了致します。よろしいですか? Yes/No』



 俺はヘルプさんの問いに答えYesをタッチした。



『次にプレイするサーバーをお選び下さい』



 ここはさっさと春香と約束した通りClaris(クラリス)を選びYesをタッチして終了。



 余談だがサーバーそれぞれの名前はAria(アリア)Becky(ベッキー)、Claris、Daisy(デイジー)Elizabeth(エリザベス)と全部女性の名前だった。

 とりあえずABCDEと並んでいるのはわかるけど、どうして女性の名前なのかわからない。



『これで最後となります。あなたのアバターネームを設定して下さい。アバターネームはカタカナのみとなります。また公序良俗に反するようなネームを設定した場合、アバター削除の上でログイン制限をさせて頂く場合がありますのでご注意下さい』



 ヘルプさんがそう言うと横長のウィンドウが現れた。

 そこにはキーボードが描かれていたが、大きさ、配列共に現実セカイの一般的なキーボードと同じ物だった。



「う~ん。これが一番悩むな」



 一度決めたら変えられないからな。

 ちゃんと考えないと。



「じゃあ名前の京谷(きょうや)から、キョ・ウっと。……もう使われてるか」



 試しに入力したネームは《既に使用されています》とウィンドウが現れて使えなかった。



「じゃあキョ・ウ・ヤ。……これもダメか」



 やはりありふれた名前は競争率が高かったようだ。



「じゃあ名字の方の伊織坂(いおりざか)で、イ・オっと。……おっ、これは大丈夫だったか」



 イオという名前はまだアバターネームで使われていなかった。

 う~ん。

 試しに入力したやつだけどこれでいいか。



『アバターネームの入力を確認しました。ネームは“イオ”でよろしいですか? Yes/No』



 俺は最終確認のYesをタッチしてアバターメイクを終了した。



『お疲れ様でした。あなたのアバターは問題無く保存されました。現在既に公式スタートの時間を過ぎていますので、このまま“∞”にログイン致します』



 もうそんなに時間が過ぎていたのか。

 予想よりもアバターメイクに時間を掛けていたみたいだな。



「どうもありがとうございました」



 俺はお世話になった発光体のヘルプさんにお礼を言った。

 いくらAIとはいえこのぐらいの礼儀は当然だろう。



『いえ、こちらこそありがとうございました。――それでは、あなたの行く末に幸おおからんことを。そして、ようこそ“∞”の世界へ』



 茶室に飾られていた掛け軸が激しく点滅し始めた。

 そして太陽を直視したかのように俺の視界を白く塗りつぶしていく。

 


 いよいよ俺はVRMMORPG“∞”の世界へと降り立つのだった。




お読み頂きありがとうございます。


お気に入り登録、感想、評価、誤字脱字報告などお待ちしております^^

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