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02.「AIのヘルプと申します」

 


  

 あの日俺と春香が新型VRSを手に入れた日から時間は経ち、現在三月初旬。

 VRMMO“∞”の公式スタートの日だ。

 丁度公式スタートは日曜日と重なり春香も家にいる。



 前々から今日が公式スタートだと春香から念を押されていたので、俺は仕事を入れず丸一日フリーにしておいた。

 今はゲームの始め方を簡単に教えてもらっていたところだ。



「じゃあお兄ちゃん。また後でゲームの中でね。コールの仕方は覚えてるよね?」



 春香は流しに食べ終えた食器を持っていきながら俺に聞いてきた。



「大丈夫だよ。ちゃんとお前のアバターネームも覚えてるから」



 俺はまだ食べ終えていないので口の中の物を飲み込んでから答える。



「うんうん。じゃあ大丈夫だね」



 春香はそのまま『後でね~』と手を振りながらリビングから自室へと向かっていった――が、リビングを出るため扉のノブに手を掛けたところでこちらにUターンしてきた。



「そうだったそうだった。忘れるところだった」



 戻ってきた春香は大げさにフーと息を吐く。



「えっと、このゲームってゲームサーバーがいくつかあるの。それで同じサーバーを選んでゲームを始めないと、お兄ちゃんと一緒にプレイ出来ないんだよ』



 へえ、そうだったのか……というかかなり重要な事じゃないか。

 俺が『そんな大切なこと忘れるなよ』と言うと春香は『えへへぇ~』と恥ずかしそうに頭を掻く。



「私はサーバー名『Claris(クラリス)』でログインするつもり。ベータ版でこのサーバー使ってたんだよ」



 クラリスか。

 何だか外国の女性の名前みたいだな。



「そうか。じゃあ俺も"クラリス”ってサーバーを選べば良いんだな」



 難しい名前でもないし忘れることはないだろう。



「そうそう。じゃあよろしくっ!」



 今度こそ春香はリビングを出て自室へと向かった。

 俺も食べていた遅めの朝食の食パンを食べ終え自室へと向かうことにしよう。







「よっこいしょっと」



 VRSを手に持ちベッドに腰掛ける。

 時計を見てみると時刻は○九:○五になったところだ。

 公式スタートは一○:○○からなので、余裕どころか時間をもてあましてしまいそうなくらいだ。

 


 何故こんなに早く用意を始めたのかというと、ログインする前にアバターを作らなくてはいけないからだ。

 アバターとはプレイヤーがゲーム内で使用する自分の分身、キャラクターのような物のことだ。



「じゃあとっとと作りますかね」



 VRSを装着しベッドに横になる。

 そして本体の電源を入れ準備が整うまで待機する。



『Now Loading……Now Loading……――Load Complete.』



 視界の隅に読み込み中の文字が点滅し、しばらくすると黒色濃い目のサングラスみたいだった視界が明るくなっていく。



「“(エンドレス)”起動」



 準備が整い俺がそう呟くとVRSにインストールしてある“∞”が起動する。

 そしてゲームのタイトルやメーカーロゴが表示されると俺は徐々に瞼を閉じていったのだった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。







「……ん」



 閉じていた瞼を開く。

 まず目に付いたのは『アバターメイク』と達筆――ただしカタカナ――で書かれた掛け軸だった。

 次いで辺りを見渡すとどうやら俺は良い感じに手狭な茶室?に一人立っているようだった。



「えっと、ここでアバターを作るのか?」



 そうだとしたらどうすれば良いんだろう?

 しまったな、春香に聞いておけば良かった。



『その通りです。ここではあなたのアバターメイクを行うことになります』



 俺が悩んでいて独り言を呟いたら大人びた女性の声で返事があった。

 その声は頭上から聞こえてきたので上を見上げると、蛍のように光る物体がフヨフヨとゆっくり降下してきていた。



『はじめまして。私はこのVRMMORPG“∞”でプレイヤーの皆様のサポートをさせて頂きます、AIのヘルプと申します。以後お見知りおきを』



 俺の顔と同じ高さまで発光体が降りてくると、それはまるでお辞儀するように小さく上下し丁寧に挨拶してきた。



「こ、これはどうも。ご丁寧に」



 俺は思わず頭を下げて挨拶を返す。

 というかこの発光体、ゲームのサポートAIだったのか。

 しかし名前が『ヘルプ』って安直すぎやしないだろうか?



『先程も申しました通り、ここはあなたのアバターを作る空間となっています。早速ですがアバターメイクを始める前に説明をしたいと思いますが、よろしいでしょうか?』



 とりあえず俺は『あ、はい。お願いします』と答えておいた。

 ヘルプさんが『了解しました』と言うと、俺の目の前にホログラムのウィンドウとキーパネルが出現した。

 すると目の前のウィンドウに文字が表示され、下から上へとゆっくりスクロールされていく。



『アバターメイクとはゲーム内でプレイヤーの皆様が使う体、()わば分身を作ることを言います。順序としては、【容姿設定】→【スキル習得】→【サーバー選択】→【アバターネーム設定】の順に設定して頂きます。アバターネーム設定後に最終確認があり、その確認前でしたら何度でも再設定が可能です。それぞれ詳しく説明しますと―――』



 ウィンドウに表示された文章をヘルプさんが次々に読み上げていく。

 程々に長かった説明をまとめるとこんな感じだった。



【アバターメイク】

 アバターとはプレイヤーが“∞”内で使うキャラクターのことで、アバターメイクは文字通りそれを作ること。

 アバターは一人一体(VRS一台につき一体)まで作ることが可能。

 作られたアバターはVRSに保存されるため、他のプレイヤーに譲渡また貸し出しなどは出来ない。



【容姿設定】

 身長、体重、髪型、体型、各種色設定などアバターの外見を細かく弄ることが出来る。

 初期設定のアバターの外見は、VRSが読み取った現実世界の自分の姿と同じになっている。

 なお性別は現実世界の自分と同じで変更することは出来ない。

 外見を弄った場合他のプレイヤーと容姿がまったく同じになる事もあり得る。



【スキル習得】

 最初に習得出来るスキル一覧の中から八個まで自由に選んで習得出来る。

 組み合わせは自由で自分のプレイスタイルに合わせた選択が重要。

 この時習得しなかったスキルもゲーム内で条件を満たすことで習得することが可能。

 また未発見の新しいスキルもゲーム内には存在する。



【サーバー選択】

 この“∞”にはサーバーが五つある。

 一度サーバーを決定した後に他のサーバーへと移動することは出来ない。

 違うサーバーのプレイヤーとは現在の所一緒にプレイすることは出来ない。

 春香と一緒にプレイする予定の俺は一緒のサーバーを選ぶ必要がある。



【アバターネーム設定】

 使用するアバターの名前を決めること。

 サーバー内で同じ名前は使用出来ないので、基本的に名前は早い者勝ちとなる。

 文字数制限はないがカタカナのみ使用可能。

 一度決定した後は変更出来ない。

 一般常識と照らし合わせてNGワードに該当する物をネームに設定することは出来ない。



 大体こんな感じだった。

 まあ、もしアバターメイク中にわからないことがあっても、ヘルプさんにその都度質問すればいいので問題無いか。



『以上で説明を終わります。――それではアバターメイクを開始致します』



 すると今度はウィンドウに俺の姿が映し出され、

 


 パンパカパーン!! パンパンパン、パンパカパーン!!



「…………」



 ―――そして突如鳴り響くラッパで奏でられたファンファーレー。

 いきなり何なんだろう?



「あの?」



 ヘルプさんに今のは何だったのか聞こうと声を掛けてみる。



『おめでとうございます。あなたはアバターメイク一一,一一一のプレイヤーとなりました。記念として“特典”をお送り致します』



 ダララララララララッ―――。



 俺が言葉を挟む間もなく始まったドラムロールの音。

 とりあえず大人しく待っておこう。



 ――ララララ、ジャン!



『おめでとうございます。あなたの特典は【称号:ドラゴニュートの友】に決定致しました』



 よく分からないうちに特典が決定したようで、ヘルプさんが結果を教えてくれる。



「はい?」



 そして俺はどうやら【称号】という物をGETしたようだ。

 でも……称号って何?



お読み頂きありがとうございます。


作者のMMOプレイ経験はエオルゼアのみ。

ベータ版に当選し製品版を買って4ヶ月ほど遊んで今はやってませんが……


書き溜め分が無くなるまでは0時に予約投稿したいと思います。

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