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17.『ドタキャンはダメだぞ』

【日常パート】始まります。



※ゲームパートと日常パートをわかりやすくするため、タイトルの括弧を変えることにしました。


「」→ゲームパート

『』→日常パート


となります。

 

 

 

 ――――ピ、ピピ、ピ。



 京谷の部屋から小さな電子音が聞こえる。

 音の発信源はベットに横たわっている京谷が装着しているVRSからだった。



 ピ、ピ……ピ――………。

 チカチカッ。



 電子音が鳴る間隔がだんだんと短くなっていき、最後に緑色のランプが点滅して静かになる。



『……――Save complete.――See you again.』



 VRSのレンズ部分にあたる画面に文字が流れ、電源が落とされた。

 そして俺はゲームをログアウトして現実世界に戻る。



「んっ! んんーっ」



 俺は目を覚ますとまず顔に装着していたVRSを外して、ベットの横にある棚の上に腕を伸ばしてそっと置く。

 上体を起こして体を横へとずらしてペットの縁に腰掛けるように体勢を変えた。



「はぁー、疲れた……。何だか頭が重いぞ? ひょっとしたらこれが『VR酔い』なのかな?」



 VR酔いとは文字通りVRに馴れていない人が、乗り物に乗って体調を崩すのと同じような症状になる事だ。

 ただこれは時間が経てば問題無く治るので心配することはない。



「ふぅ、ちょっと飲み物でも飲むか」



 俺はよいしょと腰を上げて部屋を出た。

 そのままキッチンに足を伸ばしインスタントだがコーヒーを淹れる。



「熱っ!? フー、フー……」



 カチャカチャカチャ。



 ちょっと飲んでみたら熱かったのでスプーンを入れてかき回す。

 ずっとキッチンで立っているのもなんなので、場所をリビングに移しテレビの前のソファに腰掛け、何か面白い番組でも放送していないかとリモコンでチャンネルを回して時間を潰すのだった。



 そして暫くボーッとテレビを眺めていたら、廊下をトットットと誰かが歩く音が聞こえてきた。

 今この家には俺と春香しかいないのできっと春香がゲームを終えたのだろう。



「あ、お兄ちゃん。やっぱりここにいたんだ」



 足音はリビングの前で止まりドアを開けて入って来たのは予想通り春香だった。



「私も何か飲もーっと」



 春香は俺が口を付けていたコーヒーに目をやると、自分も飲み物を飲むためキッチンへと入っていく。

 その後は俺と同じようにソファに座ってテレビを二人で見る。

 合間合間に雑談をしたりして時間は過ぎていく。



 ――こんな感じで俺の初VRMMOプレイの一日は幕を下ろしたのだった。





 ~翌朝~





 昨日感じたVR酔いも夕飯を食べる前には回復して、次の日――つまり今日まで引き摺ることもなくスッキリした朝を迎えることが出来た。

 いちおうテレビを見ていた時に春香にもVR酔いについて確認を取ってみたが、何度かVRを経験していくうちに馴れていって酔うこともなくなるそうだ。



「さてと、朝飯でも準備しますか」



 今日は月曜日だが仕事はオフだ。

 火曜日には仕事のクライアントに会う予定が入っているけど、特に準備をする必要もないので今日はゆっくりと過ごすことにしよう。

 


「そういえば最近遠出してないなー。久しぶりにちょっとどこか行ってみようかな」



 俺は今日何をしようか考えながらキッチンへとやって来て、冷蔵庫を開き卵とベーコンを取り出す。

 あとは食パンも用意してオーブントースター機能もある電子レンジへとセットした。



 ガチャ。

 ノソ……ノソ……――ガタン。



「うぅー」



 電子レンジのタイマーをセットしたところで、リビングのドアが開いて春香が入って来た。

 フラフラとゆっくりゾンビのようにテーブルまで来ると、椅子をひいて座り顔をテーブルに載せて何だかわからない声を出している。

 


「おはよう、春香」



 俺はキッチンから顔を出して朝の挨拶をする。



「あ゛ぁー……おあよー」



 たぶん『おはよー』と言いたかったのだろう。

 眠そうと言うかもう半分寝た状態で俺の声に反応していた。



 日中見るいつもの明るい春香からは想像しにくいだろうが、朝のコイツは大体こんなもんだ。

 春香は寝覚めが悪く朝が弱い。

 いつもの調子が出てくるのは朝食を食べた後くらいからだ。

 


 なのでいつも我が家の朝食を作っていた母さんが、出張に行った父さんに付いていってしまった後は俺が毎日朝食を作っている。

 その代わりに夕食は毎日春香が作っている。

 ちなみに昨日の夕食はスープスパゲッティだった。



「もうちょっとで朝飯出来るから、眠らないで待ってろよー?」



 キッチンから声を掛けると小さく返事が聞こえたのでさっさと作っちゃうことにする。



 熱したフライパンの上にバターを少量投入し、それが溶けてきたらフライパンを回して全体に塗る。

 次に薄切りにしたベーコン二枚を投入。

 


 ジュウーーーッ!

 パチッ、パチパチッ!



 ベーコンが焼ける音と香ばしい匂いが漂ってくる。

 頃合いを見て今度は卵をベーコンの上に落としてベーコンエッグにする。

 透明だった白身が熱で真っ白になってきたら蓋をして、コンロを切って余熱で黄身を半熟になるまで熱した。

 ちなみにうちはオール電化。



 ウ゛ゥゥゥゥゥ、チーン!



 セットしておいたパンが良い感じのキツネ色に焼き上がり、時を同じくしてベーコンエッグも完成した。

 最後に母さん特製我が家秘伝のソースを少量パンに塗って、その上からベーコンエッグを載せあとはパパッと手早くサラダを作って今日の朝食『ベーコンエッグトーストとサラダ(牛乳付き)』が出来上がった。



「ほら。出来たぞー」



 俺は出来上がった朝食をお盆に載せて春香が突っ伏すテーブルに並べる。

 すると匂いを嗅いでかむくりと顔を上げて椅子に座り直してモソモソと食べ始めた。



「さて今度は俺の分を作るか」



 さっきと同じ行程でもう一人前作る。

 出来上がった料理をテーブルに運ぶ頃には春香ももう殆ど目が覚めていた。



「お兄ちゃん、今日休みだったっけ?」



 ベーコンエッグトーストを食べ終えサラダを片付けていた春香が俺に話しかける。

 ウチは食事中テレビは付けないので、自然と一緒のテーブルに着いている人と会話をしながら食卓を囲んでいた。



「そうだよ。春香は学校があるんだから遅刻するなよ」



 口の中の物を飲み込んでから答える。



「はぁー、でも他の人は行かなくて良いのに私だけ登校とか……正直面倒くさい」



 今日は一部の生徒だけが登校して入学式の準備をすることになっている。

 一年生の時のクラスでクラス委員を務めていた春香は、その関係で入学式の準備にかり出されたというわけだ。

 俺が卒業した高校は春香とは別の高校だったが、似たような経験をしたことがあるので春香の気持ちもわからないでもない。



「でも一度でも引き受けたんなら、後になってドタキャンはダメだぞ」 

 


 いちおう社会人として注意しておく。

 俺自身ドタキャンで迷惑を(こうむ)ったことがあるので、他の人の迷惑にならないように釘を刺しておいた。



「わかってるよ。さすがにそれはしないから安心して」



 そういって最後に牛乳を飲み干して『ごちそうさま』と席を立ち、食器を流しに持っていく春香。

 


 今日も無事に一日が始まろうとしていた。




お読み頂きありがとうございます^^


今回は料理メイン?

そんなつもりはなかったのですが……。

ベーコンエッグトーストは「天空の城~」で出てきたあれを参考にしました。


次話は主人公の趣味と春香の通う高校が出てくる話になる予定です。

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