14.「そこだ!」
これで書き溜め分は終了となりました。
第1話の後書きで書いた通り、今後は書き上がりしだい順次投稿していきたいと思います。
※14日の0時に予約投稿したつもりでしたが、設定を誤ったようで即時投稿してしまいました。
やり直すのも何なのでこのままにしたいと思います。
お気に入り登録して頂いている皆様にはご迷惑をおかけします。
「じゃあいくぞ。準備は良いか?」
俺はまず火魔法の《ファイア》で攻撃することにした。
多分俺の魔法では一撃でヴォルフを仕留めることは出来ないはずなので、遠距離攻撃をしてから槍で応戦し体力を削る。
あとはそのまま槍でトドメを刺しても良いのだが、スキルの【蹴撃】で覚えた《前蹴り》も可能だったら使ってみようと思う。
本当だったらさっきセイを守った時に使えば良かったけど、咄嗟のことで思いつかなかったのでどれくらいの威力があるのか確認してみたい。
「こっちはいつでも殺れるよ。」
シャロンが答える。
ちょっと言葉のニュアンスが気になったが問題無いだろう。
「こちらも大丈夫です。何かあったらすぐに助けに入りますから」
セイも答える。
だがさっきのこともあってかシャロンよりも気合いの入り方が違いやる気に満ちていた。
「あぁ、ありがとう」
俺は二人にそう言ってから腰を低くして体の右側で槍を構える。
槍を右手だけで保持しつつ矛先を草の合間から除くヴォルフの赤い体に向ける。
空いた左手で人差し指と中指、そして親指だけを伸ばす形――つまり指鉄砲をつくって同じくヴォルフを狙うようにして腕を伸ばした。
この指鉄砲は魔法の照準をどうやって付ければいいのかわからなかったので何となくこうしてみた。
そしてついに魔法を唱えた。
「――ッ、《ファイア》!」
俺が唱えると赤とオレンジ色が混ざった一塊の炎が出現した。
その炎は狙った通りヴォルフ目掛けて火の粉の軌跡を残しながら飛んでいく。
「あれ?」
俺は小さく呟いた。
と言うのも、俺が予想していた《ファイア》と実際に目の前に出現した《ファイア》が違う物だったからだ。
俺はバスケットボールくらいの丸い球体をした、言うなれば小さい太陽みたいな物が出てくると思っていたのだが、実際に出てきたのはロウソクの火を大きくしたような物だった。
その火もだいたいティッシュの箱くらいの大きさしかなく、お世辞にもあまり強そうな見た目ではなかった。
ボウンッ!
「当たったよ!」
シャロンが言う通り俺の放った《ファイア》は見事ヴォルフに命中したようだ。
炎が目の前に迫って来るとさすがにヴォルフは気が付き、回避しよう体を起こしたようだったがそれよりも速く《ファイア》は着弾し小規模な爆発を引き起こしていた。
「与えたダメージは――おおよそ三分の一程度、でしょうか」
矢を弓につがえてはいるが弦を引かず地面に向け、いつでも戦闘に参加することが出来る様待機したままセイが言う。
赤ヴォルフの体力を現すゲージは全体の三分の一行くか行かないかくらいの量が減っていた。
「まぁこんなもんだね。イオは私みたいに魔法をメインで使う訳じゃないから魔法攻撃の補正もないし、さっきのセイちゃんの弓はクリティカルだったからあんなにダメージが入ったわけだからね」
シャロンが今俺が与えたダメージについて補足を入れていると、ヴォルフはくぐもった咆哮を上げ口を大きく開いて牙を剥き出しにし、口の端からよだれを流しながら俺目掛けて一直線に走り出した。
その体の恐らく《ファイア》が当たったところからは白い煙が細い線となって立ち上っている。
「よし、こいっ」
俺は両手で槍を握りしめこちらに向かって来るヴォルフを待ち構える。
構え方も何となくこんな感じかな?と、適当に左足を前に出し体を斜めにして構えるという構えだが、違和感もなくむしろしっくり来るようだ。
もしかしたら【槍】のスキルを取った効果なのかもしれない。
そうこうするうちにヴォルフが迫る。
セイとシャロンは既に左右に分かれるように待避しているので、俺は遠慮無く戦うことにしよう。
「っ!?」
俺との距離が四、五メートルくらいになるまで駆け寄ってきたヴォルフが一鳴きしてジャンプした。
予想外の行動に俺の体は一瞬強張る。
結構な速度で走り助走が付けられていたヴォルフは、ジャンプすると前足二本を水泳の蹴伸びのように伸ばして、そのまま俺に噛み付こうと大きく顎を開いてきた。
俺の視線は大きく開けられた真っ赤な口内と真っ白な牙に向けられる。
「――ふっ!」
だが俺は一瞬からだが強張っては仕舞った物の、すぐ冷静になりヴォルフのジャンプからの噛み付き攻撃を、前に出した左足を軸にして右足を後ろに引くことで回避する。
セイを守った時もヴォルフ(ただしあの時は青ヴォルフだったけど)は直前でジャンプして跳びかかってきたので、今回はその経験もあったおかげでどう動けばいいのか、大体頭の中に思い浮かべることが出来た。
その為以外とあっさり簡単に回避出来た。
「そこだ!」
俺という目標を直前で失ったヴォルフは、そのままの勢いでさっきまで俺がいた場所を通り過ぎる。
回避するついでに槍を引いていた俺は、すれ違い背中を見せるヴォルフ目掛けて槍を突き出した。
ザシュッ!
ちょうどヴォルフが地面に着地したところに俺の槍が襲いかかる。
槍の矛先はヴォルフの右脇腹のやや上辺りに突き刺さり、当のヴォルフは『キャインッ!』と犬っぽい鳴き声を上げて地面に転がった。
そのせいで槍はヴォルフから抜けてしまう。
槍を手にした俺に伝わってきた感触。
例えるなら、発泡スチロールに鉛筆やボールペンなどを突き刺す感じと言ったところかな。
最初に感じた手応えは槍の矛先がヴォルフに突き刺さるのを阻害したかに思えたが、すぐに無くなりすんなりと深くまで刺さっていった。
ちょっと抵抗を感じたのはヴォルフの毛皮だろうか?
俺は自分の気が昂ぶっているのがわかった。
もしかしたらこれが『コンバットハイ』という物なのかもしれないな。
「イオ! まだ来るわよ!」
その声に反応して俺は続けて【槍】スキルで覚えた《二段突き》を使おうとした。
ヴォルフはいつの間にか地面を転がることを止め、今度は鼻先を真下に向けながら俺目掛けて突っ込もうとしてきた。
体当たりしてくるつもりだろう。
「《二段突き》ッ!」
声にすると意図せず腕に力が込められる感覚があり、頭の中にどんな風に攻撃したらいいのかが流れ込んでくる。
俺はそれに従い槍を突き出した。
ザクッ! ザシュッ!
二段突きは簡単に言うと続けざまに二回槍を突く攻撃だった。
一度目の突きは特別攻撃力が上がったりしない普通の突きだが、二度目の突きは一度目と違い攻撃力が少し上がる。
まず牽制して次でトドメを刺すような感じだ。
俺は二回ともヴォルフの頭目掛けて槍を突き刺した。
真正面から向かってきてくれたのでどちらも外すこともなく攻撃は当たり、二度目の突きに至っては槍の矛先を全てめり込ませ柄の部分も少し食い込んでいるほどだった。
そして元々背中に攻撃を受けた時点で、体力のゲージが半分を少し切る程しかなかったヴォルフは、その体を白く光らせ消えていった。
ヴォルフに刺さって見えなくなっていた槍の部分が見えるようになる。
「初勝利、おめでとうございます。イオ」
支えを失った槍が地面に当たり、背後からセイがおめでとうと言って近づいて来る。
シャロンも『お疲れ様ー』と間延びした台詞を言いつつこちらに歩いてきた。
「あぁ、ありがとう」
俺は槍を持ち直しながら二人に振り返ってお礼を言った。
終わってみれば、俺の初戦闘は無傷での勝利という形で幕を下ろしたのだった。
自分でも出来すぎているように思うが、今はこの余韻に浸っていたいと思う。
お読み頂きありがとうございます^^
主人公の初戦闘初討伐のお話でした。
戦闘描写はどうしても説明文っぽくなってしまいますね。
やっぱりモンスターの鳴き声はあった方がいいのかな?
【作品に関係ない話】
13日発売のダークソウル2というPS3のゲームを買いに「新作ゲーム0時販売しています」というのぼりのあるお店に12日の23時に行きました。
友人と一緒に行って、0時まで待ち既に並んでいた2人の後ろに並んでいざ購入……と思ったらまさかの「売り切れ」宣言。
え?入荷数たったの2本?!
仕方がないのでアマゾンで注文。
まあアマゾンの方が安いから……ということで納得しておく今日この頃。