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12.「私を頼って下さい」

評価、登録した頂いた皆様ありがとうございます。

徐々に数字が増えてきており作者は嬉しい限りです^^

 

 

 

「二人ともお疲れ様。どうだった? 初めての戦闘は」



 シャロンが俺とセイに向かって問いかける。

 俺はセイとの間にあるこの空気を変えるためにも大げさにシャロンに答えることにした。



「正直なところ最初は『所詮はゲーム』だって侮ってたけど、これは凄いな。何て言うのかな……そう、興奮したって言うのかな。あぁ、別に生き物を殺す行為に興奮した訳じゃなくて、スリルがあったって意味でだけど」 



 まず一般人の日常では体験することの出来ない命のやりとり。

 現実で起きたら俺ならまず間違いなく何も出来ないままやられることになるだろうけど、ここはゲームの世界だから気持ちにどこか余裕があったのでさっき言ったみたいに感じることが出来たんだと思う。



「そうだね。そういうスリルを味わうのもこのゲームの楽しみ方の一つだからね」



 腕を胸の下辺りで組んでうんうんと頷くシャロン。

 いつの間にか頭を下げていたセイも頭を上げて俺とシャロンの会話を見ていた。



「私もベータ版で初めてのモンスターとの戦闘は無我夢中で戦ったっけ。それで後になってから達成感みたいなのがあったなー」



 達成感か。

 言われてみれば俺もスリルの他にもそんな感じがある気がする。



「セイちゃんはどうだった?」



 ここでシャロンが会話のボールをセイにパスした。



「私はイオさんを危険な目に合わせてしまったから……あいたっ?!」



 申し訳なさそうに話すセイの頭にシャロンのチョップが炸裂する。

 腕の振られる速度と当たった音からして別に痛みを感じるほどではないと思うけど、ああいうのって射たくなくても咄嗟に痛いって言っちゃうよな。



「シャ、シャロン? いきなり何を」



 突然チョップをかまされたセイは目をパチパチさせながら、目の前で頬を膨らませ腰に手を当て堂々と立っているシャロンに問いかけた。



「もうセイちゃんは気にしすぎだよ。元々『助け合う』って決めてたでしょっ」



 背後に『プンプン』という文字が浮かびそうな雰囲気のシャロン。



「でも……っ!」



 それでも何か言おうとするセイにシャロンがまたチョップしようとしたが、今度はセイに見極められて振り下ろされたチョップは空を切った。



「わっとと! 避けないでよ……えっとどこまで言ったっけ? あぁそうそう、それにセイちゃんは弓で遠距離から攻撃するスタイルなんだから、ああいう接近戦の場面だったら槍を持ってるイオに任せるのが一番良い判断なの。わかった? わからなかったら」



 そういって口をアヒルみたいに尖らせシュッシュッと言いながら、腕を振ってチョップをする動作を数回繰り返すシャロン。

 セイはどうしたらいいのかわからないようで『えっと』や『あの』とポロポロと口にするだけだ。

 最終的にはチョップの素振りが本当に風切り音を立てる段階になって、困ってしまい俺の方に助けを求めるような視線を向けてきた。



「じゃあこうしよう。今のは貸し(・・)にしておくよ」



 俺は困った様子のセイに苦笑いしつつそう提案した。



「貸し、ですか」



 俺の提案を聞き直すセイ。

 シャロンも空気を読んで素振りをやめて静かになった。



「そう。さっきは俺がセイを守ったから、今度俺が危ないときはセイが俺を守ってくれ。それで貸し借り無し、チャラにしよう」 



 本当は貸し借りもいらないんだけどな。

 もう何を言っても梃子でも動かなそうなセイを納得させるには、こうするのが一番手っ取り早いだろう。



「それにずっとさっきのことを気にされてたら、正直やりにくいからさ」



 セイも自分がこのPTを若干乱しそうになっていることに自覚があったのか、うぅっ、と言葉を詰まらせるのだった。



「わ、かりました……お手数おかけしまして、すみませんでした。シャロンもごめんね」



 最後にセイが俺とシャロンの二人に丁寧に頭を下げて謝った。



「イオに何かあったら必ず助けます。ですからその時は遠慮なんかせず、私を頼って下さい」



 セイは俺と目を合わせて力強くそう宣言する。

 その目は綺麗に透き通っていて、さらに奥の方には今の宣言を証明するかのような光が見えた気がしたのだった。



「よし! じゃあ次行ってみよー……っとその前に、言い忘れてたけどモンスターを倒したらドロップアイテムが手に入いるの。アイテムは所持品に加わるから確認しといてね」



 パンッ!と乾いた音がした。

 音がした方を見てみるとニコニコした顔で手を合わせているシャロンが立っていた。

 俺は言われた通りさっき倒したヴォルフのドロップアイテムを確認するために所持品を確認する。



【ヴォルフの毛皮】×1

 ヴォルフから採れる毛皮。

 生産素材として使用出来る。



【ヴォルフの牙】×1

 ヴォルフから採れる牙。

 生産素材として使用出来る。



「俺はヴォルフの毛皮が一つと同じく牙が一つだな」



 所持品に追加されていた内容を二人に言った。

 すると俺と同じようにドロップアイテムを確認していたセイが首を傾げた。



「私は毛皮が三枚と牙が二本。それと【ヴォルフの尻尾】があります」



 尻尾?

 何それと言うとセイがアイテムに書かれていた説明書きを口頭で読み上げてくれた。



【ヴォルフの尻尾】

 ヴォルフから稀に採れる尻尾。

 生産素材として使える。

 

 戦闘中使用することで短時間だがオオカミ型モンスターの攻撃を中断させることが出来る。

 効果継続時間は状況により変動。



「へぇー運が良いねセイちゃん。尻尾はレアドロップだよ」



 ぺち、ぺち、ぺちと手を叩くシャロン。



「もうわかったかもしれないけど説明すると、ドロップアイテムは戦闘貢献度――つまりどれだけその戦いで役に立ったかだね、それによって貰える量と内容が変わってくるんだ。だからさっきの戦闘に参加してなかった私はドロップアイテムは無し」



 どうやらこのルールは他のプレイヤーに頼りっきりになって、自分は楽をしようとするプレイヤー対策らしい。

 これを『寄生』だったり同じ意味だが『パラサイト』とかそんな風に言うらしい。



 ちなみに戦闘貢献度というと敵に攻撃を仕掛けないと駄目なように聞こえるが、実際には補助系、例えば敵の攻撃で傷ついた味方を回復させるとかでも『戦闘に貢献した』とみなされるとのこと。

 無傷な仲間を回復させるとか既にやられた敵に攻撃してオーバーキルするといった無意味なことはノーカンらしい。



「だからヴォルフを倒したセイちゃんは比較的アイテムが多くて、反対にイオは少なかったってことだね」



 なるほど。

 良くできているなぁーって思うのはゲームをあんまりやらない俺だからなのかな?

 こういうのが当たり前なのか?



「じゃあ次はイオがメインで戦ってみようか。この辺りを歩けばまたモンスターがいるはずだから」



 おっと、今度は俺が戦う番か。

 槍の握りを確認するように何度かグッグッと力を入れる。

 さっきの戦闘の余韻なのか、手の中にある槍がとても頼もしい存在のように思えてきた。



「それじゃあ行こうか。さっきみたいにヴォルフが隠れようとしてるかもしれないから気をつけていこう」



 槍を手にしながらそう言った俺の言葉に二人は返事をする。

 二人とも手にはそれぞれの武器を構えていた。

 今度の陣形は俺を先頭に左斜め後ろにシャロン、反対の右斜め後ろにはセイがいて上から見たら正三角形のような形だ。

 


 そして俺達三人は一度顔を見つめ合い頷くと、次のモンスターを探すためゆっくりと歩き始めた。




 

お読み頂きありがとうございます^^


ドロップアイテムの確認だけで一話使ってしまった><;


作中登場した『寄生』ですが……作者が学生時代、友人達が先に始めていたモンハンに誘われて始めた私のハンターランクを上げるためさせてもらったことがあります(汗)

初心者の私は罠を張ったり目くらましをしたりペイントをしてました。


この場を借りて、あの頃の友人達ありがとう。



次話もよろしくお願いします!

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