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仕事以外の私


 一に仕事。

 二に仕事。

 三に仕事。

 四に仕事。


そうやって、日々生きている。



 なぜ仕事に尽くすのか?


そんな答えは簡単だ。


それが、他人相手の仕事だからだ。


私が手を抜けば、誰かが困る。フォローしてくれる同僚ならまだしも、患者様だったら申し訳ない。それに、至らない私が担当したことが、悪い結果につながらないように、全力を尽くしていたいのだ。実働部隊として働く五年目の私でも、この業界ではまだまだ新米。技術が足りない面は、熱意でカバーしたい。だから仕事に尽くす。


 それでもたまに思うのだ。


私から仕事を引いたら何が残るのか。答えは簡単。何も残らない。今の私を構成しているのは、全て仕事なのだ。


 だから、去年、一念発起した。


 よし、趣味を増やそう。


 外出しよう。


 結局できてないけど。


 私は、夜勤前の日に、そして夜勤明けの日に習い事を入れること。

 体を動かすことが好きだから、フィットネスクラブに通って泳ぐ。

 ヨガをする。

 走る。


 習い事の定番。

 お花を活けてみる。

 

 変わった趣味。

 絵を習ってみる。


 なんでも、面白そうなことをやってみたい。

 珍しいことをやってみたい。


 そんな思いでいろいろなことをやってみる。


 いろいろしてみる。その時はそれなりに楽しいけれども、終わってみるとなぜだか寂しい。そうか、結局一人なのだと教えられるのだ。


 一人で習い事に行く。

 一人で楽しむ。

 一人で頑張る。

 そして一人で帰る。


 一人なのだと思うと、実家のことを思い出す。結局のところ、実家が好きだから、家族が好きだから、無性に実家に帰りたくなる。それでも、実家に帰ると自分が駄目になることが分かるから、休みの日も一人暮らしのアパートにいる。友達はいないけれど、家族が好きだから。


 一人が好きだからだ。

 仕事が好きだからさ。


 なんて、自分で自分に言い聞かせてみる。


なぜ、こんなにも習い事をしているのか分からない。こんなに習い事をしていても、腐っていることに変わりないのだけれど。習い事の無い日は、家から出る必要がないのだから。習い事に行っても、あまり他人と話す機会はない。


 私は独身貴族だから、結婚した姉や妹が知らない世界を知っていたい。

 独身貴族も悪くないでしょ。

 そんな思いもどこかにある。


 習い事をしてみても、家の中が大好き。実家に帰れないのだったら、1Kのアパートに引きこもるしかない。何のために習い事をしているのか、まったく分からない。忙しければ、それでいいのか、忙しくなければ、それがいいのか。


 それでもいいかもしれないね、なんて思ってみる。だって、仕事の時に一週間分ぐらい話しているから。人の顔色うかがって、作り笑いで、棘が出来ないように、他人のために笑っている。



 一に仕事。

 二に仕事。

 三に仕事。


 それでも、たまに仕事以外のことをしてみる。


 これが、仕事以外の私。


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