腐っている私
私が勤める病院の勤務体制は二交代制だから、日勤と夜勤と夜勤明けと休みが繰り返される。勤務は看護師長が決めるシフトによって左右され、土日も祝日も関係ない。1Kのアパートに住んで、通勤する。看護師だから急な呼び出しはないけれど、サービス残業当たり前の世界。
休日の過ごし方?
そんな野暮な質問はしないでほしい。休日は、昼に起きて、着替えもせずにテレビを見続ける。もしくは、借りてきた映画を見る。もしくは、家の中で趣味に費やす。外に出ても、当然一人。だって、平日に遊んでくれる人はいる?旧知の仲の友達は、土日に、楽しいハッピーライフをエンジョイしているに違いないのだから。
職場の仲間と遊びに行け?
何を言いますか。仲間と呼べる同期は、激務に耐えかねて退職するか、とっとと結婚して寿退社をしてしまったのだから。
だったら、私も職場を変えろ?
確かにおっしゃる通りでございます。このご時世、看護師資格を持っていればそれなりに転職可能なことでしょう。次なる職場に夢を持って挑むのも自由でしょう。
仕事に費やしたこの五年間。消え去った私の若いフレッシュな月日。
私の預金通帳を見せてあげたい。
特に浪費もしないし、着々と預金は増えていく。自慢じゃないが、同世代の男たちより預金額はある。給料が入るたびに増える数字を見て、ほくそ笑むのが些細な楽しみだったりもする。
だったら、なおのこと職場を変えれば?
その通り。職場を変えてしまえば、環境が変わり、私も変わるかもしれない。けれども、悲しいことに負けず嫌いのこの性格。怒られっぱなしでは気が済まない。そんな気持ちで働き続けること五年。人事異動の白羽の矢が立つこともなく、私はずっと同じ病棟で勤務を続ける。すると、望まずともそれなりの地位を手にすることが出来るのだ。新人指導。主任にだって一目置かれる存在。仕事が出来ない後輩や、おばちゃんたちに苛立ちながら、実働部隊として、通常以上の業務量をこなしていく。
後輩たちよ。先に帰るならば、帰ればいい。
私は働くから。あんた達には、まだ未来があるけれど、若いから良いけれど、もう時間切れの私には仕事しかないんだから。
腐ってる?
それは私生活が?それとも性格が?
ええ、ええ。どちらでも結構。この私を作り上げたのが、この環境たち。
これが腐っている私。