男運のない私
菊野と一緒に食堂で仕事をしながら、私は菊野の顔を見つめた。菊野は本当に良い人だと思うのだ。もちろん、仕事に対する熱意がありすぎて、怖い一面もある。だが、これまで出会ってきた人たちの中で、群を抜く優しさだ。
自慢じゃないが、私は男運がない。
これまで交際した相手には、大爆笑のエピソードがある。
たとえば、置いてきぼりの男。
彼と付き合っていて、一緒に飲みに行ったことがある。終電を逃して、タクシーで帰るのに、店の前には一台しかタクシーがいなかった。私と彼の家は正反対。一緒に帰ることは出来ない。その時、彼は何も言わずに、一台しかないタクシーに乗った。
「じゃあね」
と言葉を残して。
いやいや、私も一応レディーだし。普通、女性に先を譲るでしょ。それが、交際している人なら、なおさらでしょ。
他にもいる。約束を守れない男。
彼は土日休みだったから、私たちはデートのために休みを合わせなくてはならなかった。彼に旅行に行こうと言われ、私は土日祝の三連休を取った。サプライズするからと、旅行の内容は知らず。そして、前日に電話があった。
「お金ないんだけど、どうしたらいいのかな?」
いやいや、コンビニで下すなりできるでしょ。一体、あなたはどうしたいの?何がしたいの?私に借りたいの?
そして旅行はドタキャン。そのまま破局。たぶん、予約すらしていなかったんだろうね。そんな男だったから。
そして、友達が行方不明男。
食事に行こうと誘われて、私は準備をしていた。しかし、何の連絡も来ない。夕方になって困った私が連絡すると帰ってきた言葉にびっくり。
「友達が行方不明になって、今、みんなで探しているからいけない」
いやいや。嘘が下手過ぎでしょ。あんたから、誘っててどういう了見なのでしょう?
などなど。笑い話にもならない男たちもいる。そう、私は男運がない。
女子会では十分に盛り上がるネタだろうが、私にとってはたまらない。無視や音信不通など、笑えないことが多すぎる。
そう、私は男運がない。
だから、菊野の当たり前の優しさに喜んでしまうのだろう。
缶コーヒーを持ってきてくれるだけで、嬉しい。
これが、男運の無い私。




