勉強する私
TQMの発表が近づいてきている。発表は年明けだから、私は必死に準備をしていた。パワーポイントを駆使して、必死に作る。
サービス残業の嵐。
それでも協力してくれる仲間がいる。
山のように参考書を重ねて、マーカーで線を引いて、業務の合間に、業務が終わってから、必死にするしかない。ナースステーションでは出来ないから、食堂でする。延長コードで電源を引いて、パソコンに向かう。本当は食堂での仕事は禁止だが、今は非常事態。それに、夜遅い時間に食堂にいる人はいない。
なぜ私がしているかって?
仕方ないじゃない。断れない私なのだから。結婚できない私なのだから。結局、どれだけ分担しても、結局最後にパソコンに向かうのは一人なのだ。
認知症チームだから、必死に認知症の文献を読み漁る。ジャーナルを読む。一般図書を読む。そして、まとめていく。
「順調?」
声をかけてきたのは、菊野だった。菊野の手には、コーヒーが握られていた。食堂の暖房は弱く、半袖ナース服の私はちょっと寒かった。季節は年末。外は極寒だ。
「順調じゃないけど……」
応える私に聞くのはコーヒーを差し出した。
「ブラックと、ミルク砂糖入り。どっちがいい?」
私は遠慮なくミルクと砂糖入りをもらった。
「頑張りすぎてない?」
菊野は私の斜め向かいに座った。
「頑張りすぎてないよ。必死に手を抜いているだけ」
「それが出来る人じゃないでしょ。――俺の仕事は終わったからさ、何かふりなっせ。お前、頑張りすぎなんだよ」
菊野は笑い、私の背を叩いた。
菊野はもう一台パソコンを持ってきた。リハビリテーション事務室から持って来たらしい。
菊野に恋をする私。
そして、よくつかめない菊野。
私は眠気と戦いながらパソコンに向かった。
やるからには、完璧に仕上げたい。その気持ちだった。
だから、頑張る。
勉強する。
これが、勉強する私。




