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虚空  作者: だくさん
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赤いリンゴ

今日は雨だった、昨日も雨、じゃあ明日もきっと雨が降るんだろう






今日、久々に会った友達にリンゴを貰った


真っ赤に熟しておいしそうなリンゴ


見たことはないけど、心臓みたいに赤かった


一緒に食べようと、台所へ向かいさっそく包丁で皮を剥き始めた


研いでる包丁なんてない


刃がボロボロの包丁を一つ選び、皮に添える


研いでないせいかなかなか刃が入らない


力を込めると刃が滑り、指に線が入った


赤い血が流れ出した


リンゴのような真っ赤な血


刃がボロボロだったので傷はそこまで深くなかった


赤い赤い甘い血


早くリンゴが食べたくなった


急いで剥いてまた切った


隣の部屋でテレビのチャンネルを次々に変えていた友達が台所にきて僕を見た。


黒い瞳を丸くして、僕の赤い手を見た


その赤い口は僕に言う


どうした、なにがあったと


「ちょっと指を切っただけだ」


「とりあえず手を洗ってくれ。凄く、怖い。」


驚愕と困惑の表情の奥に恐怖が居るのを主張するように、彼の膝は笑っていた


僕を眺めて嘲るように

僕に見られて怯えるように


彼は僕の手から包丁を抜き取ろうとする


別に君を傷つけるつもりはないのに。


弾みで手がまた切れた


また赤い血が出る


包丁を洗う友達を余所に、皮のついたリンゴを口に運ぶ


トマトジュースにケチャップを零したように赤いリンゴはどこまでも黒く、鉄の味がして


なぜだかそれはとてもおいしく感じた。



次に続きます。

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