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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
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92.布告 その2

「おい、慎也!お前の受けた伝票なんだよ!」


新しく転職したバイクショップで、トイレから手を拭きながら出てきた慎也に先輩社員が、納品書を突き付けた。

「え?」

「こないだの客の注文したヤツ、型番が違うってクレーム来てんぞ!」


憮然とする先輩が型番を指差し、慎也もはっとした顔をした。



客の注文を間違えたのは痛恨のミスだった。


「お前何凡ミスしてんだよ?しっかりしろよ!」

傍らにいたもう一人の先輩社員が慎也にきつく言った。


「すみません、謝って来ます…」

慎也は反論せず、スタッフルームへ行った。



先輩はドアガラス越しから電話で頭を下げる慎也の姿を不快な表情で見つめた。


「整備士免許もあって商品知識も豊富と鳴り物入りで入社したくせにな」

「ああ、それよりアイツ、関東興和会の仙崎とつながりあるらしいぜ」

「それ、マジか…?」

「前の職場はそれでクビになったらしい…」

「……」


二人の先輩は長い前髪を掻き上げながら頭を下げる慎也をじっと見つめた。


*****


一方リコは、妊娠初期に起きるつわりに悩まされていた。


ここのところ、ご飯の匂いがダメになり、急に食べられない物が増えてしまった。


それと職場でも吐き気で気分が悪くなることが多くなった。



「リコ、大丈夫?少し休んだら?」

「そうだよー、あたしだってつわりん時は大変だったんだから」

ハナや妊娠経験のある先輩社員から、リコを心配する声が上がった。


上司にも妊娠は告げてあるが、やはり職場に来ている以上、周りに迷惑をかける訳にはいかない。


「大丈夫です。少しおちついたら、う…!」


残念ながら気力に身体がついて行かなかった。


「ほら、もういいから、リコの仕事私とかが残業して分担すれば大丈夫なんだから」

リコの様子に堪らず、ハナと先輩が叫んだ。



何とか退社時間までは持ったものの、結局あまり自分で仕事が出来ず、少々落ち込みながら帰路に着いた。


「初期によくあるつわりだから仕方ないかもしれないけど…」

歩きながら独り言を言い、リコははあとため息をついた。


仕方ないけど、やはり職場で自分が戦力になれないのはやっぱり辛い。



そうだ、夕飯どうしよう、そう思ったリコは慎也にメールをした。



今頃は慎也も店で忙しい頃だろうか。



スマートフォンを取り出してディスプレイを見ようとした。



その時、リコは背後に刺すような視線を感じた。



「え!?」


振り返るが、姿はどこにも見当たらなかった。



誰もいなくてほっとした反面、付け狙われているのかという不安も覚えた。




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