91.布告 その1
夕方の繁華街の裏側にある薄暗いクラブ。
室内はどうみても健全な雰囲気は無く、部屋中をタバコの煙が立ち込めている。
酒を煽り怒鳴り散らす男、無理やり迫ろうとして男女の怒鳴り合う声。
派手に染めた髪の毛にピアスだらけの耳、それに腕や脚、背中にタトゥーが入っている男女。
そのクラブの一角のカウンターでショットをストレートで煽る男がいた。
仙崎である。
このクラブは関東興和会が経営している店であった。
いや、かつてと言った方が正しいかもしれない。
興和会は事実上の解散に追い込まれたのである。
頼みの綱だった沢田も逮捕され、若い不良連中は暴力団組織への上納金の制度に反発し、新しい組員が育って来ない。
「たく、最近のガキ共は組織に入りたがらねえから、身入りが全然ねえな」
仙崎の隣で、長年の付き合いの仲間が仙崎に言った。
だが、仙崎は彼には答えず、スマートフォンを熱心に見ていた。
やがてメール受信の音がした。
仙崎は受信メールに添付されて来た画像ファイルを開けた。
仙崎は映し出された画像を見ながら不敵な笑みを浮かべた。
「尾藤…逃げ切れると思うなよ」
「は?」
隣にいた仲間が仙崎のスマートフォンを覗き込んだ。
映し出されたいたのは、リコの顔写真だった。




