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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
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88.苦悩 その6

「お帰り、今日休みだから洗い物とか洗濯やっておいたよ。飯もカレーだけど作ったよ」

リコがマンションに戻ると慎也は出迎えてくれた。


「あ、うん、どうもありがとう」

浮かない顔のリコに不思議がる慎也を尻目に、リコはそそくさとお手洗いへ向かった。


『心配なら妊娠テスター買ってみたら?モヤモヤしているよりはっきりさせた方が良いよ』

ハナの言葉を思い出しながら、リコは妊娠判定器を取り出した。


慎也と生活を始めたばかりなのに、まさかこんなに早く?とも思ったが、毎日のように行為を行っていれば当然のことかもしれない。


ドキドキしながら数分後に現れた結果は、陽性だった。


「リコ、どうしかしたのか?」長いトイレを心配して慎也は尋ねた。


リコはいつかは言わなくてはならないのだからと意を決して慎也に告げた。


「出来た…かも…」

リコは慎也に小さな声で言った。

「え?」

「お腹に、赤ちゃん…」

慎也は目を大きく見開いた。そして次の瞬間リコを力強く抱きしめた。


「慎…也?」

「やったじゃん!」

慎也の包容にリコは信じらんないという顔をした。

「喜んで、くれるの?」

「当り前じゃん!俺たち、結婚してんだぜ!マジ!?俺嬉しい!」

慎也は更にリコを強く抱きしめた。


「ま、まだ病院に行ってちゃんと確かめないと…!」「でももうほぼ決定なんだろ?」

「う、うん…検査薬は確率高いから…」

「じゃあ、これからいろいろ準備しないとな、男かな?女かな?」

「もう、まだ気が早いってば!」

既に大喜びの慎也に半ば呆れながらも、やはり慎也が喜んでくれたのはリコには一番嬉しかった。



翌日仕事を急きょ休んで病院に行くと、やはり妊娠していた。


「9週目だからまだ2ヶ月だって」

リコは診察でもらったエコーの映像を車で迎えに来てくれた慎也に見せた。


「へえ…何かまだ良く分かんねえな」

「赤ちゃんの形になるのはまだまだこれからよ」

「そうだな」

そう言いながら、慎也はエコーの我が子の写真を嬉しそうに見つめていた。



「だとしたらこれからはあんまりリコに無理させないようにしないとな。俺も仕事があるから手伝えることは限られるけど、家の中のこととか出来るだけ手伝うからさ。リコも家事とか仕事とかあまり無理するなよ」

病院からマンションへ車を走らせながら慎也はそう言ってくれた。


その慎也の、どこまでも優しい気持ちがリコには心に痛かった。


彼の優しい愛を、残酷な自分の気持ちが壊してしまうのではという恐怖心を、リコは慎也に打ち明けることが出来なかった。




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