86.苦悩 その4
週明けは余りブルーにならないリコだったが、今日は何故だか朝から気分が重くて仕方なかった。
見慣れている筈のパソコン画面も何故か集中して見られない。
慎也と一緒になれて幸せな筈なのに、この物足りなさは一体なんなのだろう。
そんなリコを目ざとく見抜いたのは、やはり親友のハナだった。
「どうしたの、いつものリコらしくないじゃない?」ハナの呼び掛けに半ば呆然としていたリコははっとした。
「べ、別に」
慌てて否定するリコだが、ハナには全て見透かされていた。
「同居早々早速マリッジブルー?慎也さんとは上手くいってないの?」
「そ、そんなことあるわけないじゃない」
リコは苦笑いを浮かべてどうにか言い訳を繕った。
「そう?ならいいけど」
幸いハナはこれ以上の追及を切り上げてくれた。
その代わり、急に何やら一人楽しそうににやけていた。
「は、ハナこそ何をニヤニヤしてるの?」
リコはにやけるハナにおずおずと聞いた。
「聞きたい?」
「何よ?もったいぶって」
ハナはふと天井を見上げ、深呼吸してから決心したようにリコに告げた。
「実はさ、リコ達と別れた後、近藤くんから告られちゃった」
「ええー!?」
驚くリコを尻目に、ハナは構わず幸せそうな顔をしていた。
「近藤くん、ずっと慎也さんの親友だったみたいだけど、彼は明るいし、機回しが聞いて頭がいい人よね」カフェテリアでコーヒーを飲みながら、ハナは近藤のことを思い出して幸せそうだった。
リコはそんなハナに呆れつつも親友が幸せな様子はやっぱり嬉しかった。
「良かったね。ハナにも春が来たんじゃない。で、もうお付き合いしてるの?」
「もちろん。あれから会う度にエッチしてるし幸せいっぱいよ」
ハナの言葉の後ろには絵文字のハートマークがたくさんついているようだった。
「ハナ、こんなところでそんな話はやめてよ!」
リコは聞いていて恥ずかしくなったが、人のことはさすがに言えない。
慎也だって毎晩のように自分を求めて来る。
考えてみれば、エッチというのは、ある意味相手の男性のためにしている行為なのではないか?
男性という性の性質上、恋人同士の関係ではエッチは避けて通れない。
一方女性である自分は、本当に心底から行為を楽しんでいるだろうか?
ふとそんな考えが、リコの頭をよぎった。




