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RISKY―傷だらけの十字架―  作者: 桜井敦子
77/110

76:再生 その4

リコと慎也の新居は二人の元の自宅からそれほど離れていない、横浜市内の郊外に決めた。



慎也の新しい職場とリコの職場から、通勤しやすい位置で周りも静かで落ち着ける環境である。



どうにか、引っ越しの準備も済み、今日からいよいよ念願の同居生活が始まった。

が、慎也の表情はやや緊張気味だった。


「準備出来た?」

寝室でフォーマルドレスに着替え、身支度を終えたリコが声をかけた。

「ああ」

慎也は、社長だった時以来に手を通すスーツに身を包んでいた。

社長の時と違うのは、眼鏡をかけていないことくらいだろうか。


リコは慎也のスーツ姿に見惚れていた。

普段はラフなTシャツスタイルの慎也だが、スーツ姿も結構好きだった。

「なんだよ?」

リコの視線に気が付いて慎也が言った。


「な……何でもない!」

リコはあわてて視線を反らした。



今日は一樹の婚約式以来に会う両親に、リコは結婚の報告をするために実家へ行くことになった。


勿論、前の一樹との件があるので、初めからすんなりは行かないと予想はしている。


特に、慎也は、父親の会社が新聞にも載ってしまっており、リコの両親にも恐らく悪いイメージがついているだろう。




「慎也……」

「ん?」

リコの埼玉を実家へは、慎也の車――社長の時に父親からもらった物――で向かった。


「何か……ゴメン」

「何謝ってんだよ?」

謝るリコに慎也は前を見ながらクスッと笑った。


「その……」

リコは両手を組んで落ち着かなそうにしていた。

「私の所為で、いろいろ慎也に迷惑かけたから……」「いろいろって、よく分かんないけど、気にしてねえよ」

運転席のハンドルを握りながら、慎也が答えた。


「私が沢田さんの件ではっきりさせなかったから、慎也にいろいろ負担かけることになったから……」

「それを言うならお互い様じゃねえか」

「……」

リコは運転をする慎也を見つめながら言った。

「俺だって……自分を見失って、リコの気持ちを信じられずに離れたんだ」

慎也はハンドルを握り、前を見つめながら言った。

「バカだよなぁ。古傷抉られて取り乱したりして」

「……」

「だからもう、お前のことは絶対に離したくないって思った……」

「慎也……」

リコの頬が思わず赤くなった。


慎也はハンドルを握っていた左手をリコの頬に伸ばすと、いきなりプニュっと頬を摘んだ。

「な……何するのよ!」

「お前のほっぺたって柔らかくて触りごこちいいからさ」

慎也は一瞬だけリコに顔を向けてイタズラっぽい笑みを浮かべた。




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