75.再生 その3
横浜市内の繁華街にある薄暗いクラブ。
ホールで踊る男女に背を向けたまま、仙崎は煙草を片手にグラスを煽っていた。
手にはスマートフォンに新聞記事が映し出されている。
「関東興和会に解散命令――違法ソフト開発に関与の疑い」
「チッ!」
仙崎は口の端を歪めて、勢いよくブラウザを閉じた。
「尾藤の野郎、ただで逃げ切れると思うなよ」
そういうと仙崎は加え煙草で小型の、刃先が鋭利なナイフを取り出してちらつかせると、薄笑いを浮かべた。
「二人ともおめでとう」
仙崎の思惑を慎也達は知る由もなく、今日は近藤とリコの仕事仲間のハナも一緒にささやかな祝賀を居酒屋で開いた。
「新居も決まったみたいだし、結婚準備は着実に進んでるみたいね」
ハナはグラスを片手に嬉しそうに微笑んだ。
「新しい仕事先も、本当に近藤くんのおかげだよ」
「いやぁ、まあ、良かったよな。これから所帯持ちになるなら、あんまり待遇の悪いところって訳にいかねえし」
リコからの感謝の言葉に、近藤は照れながら答えた。
「けどシン、お前ホントに『本城』に名字変える気なのか?」
「なんだよ、いけねえのかよ?」
「別にいいけど書類の変更とかめっちゃ面倒くせえらしいぜ?」
「あら、女性は結婚したらみんなそれやってたのよ?」
ハナが横から口を出した。
「そうだよな、女って大変だよな」
近藤がグラスを片手に上を見上げながらしみじみつぶやくと、慎也もビールグラスに無言で頷いた。
「あーでもお前らいいよなあ。幸せ真っ盛り、リア充って感じで」
「『リア充』って何?」
「『リアルが充実』、現実生活が充実してハッピー気分って奴だよ」
ハナが聞くと、近藤が説明した。
「コンは巨乳好きだから、選り好みし過ぎんだよ」
慎也はおつまみを食べながら、近藤を横目で見た。
「きっとそのうち良い人現れるよね」
ハナはグラスを持ちながら、近藤にニッコリ微笑んだ。
その時、近藤の目にはハナの大きめのバストがゆったりと揺れたのに目が止まった。
近藤は思わずハナに目線が釘付けになった。
「ん?」
ハナはグラスに口をつけながら、近藤の自分への目線に気がついた。
「その『いいこと』、今あったかも」
近藤の言葉に慎也もリコも理解出来なかった。




