74.再生 その2
横浜某警察署内留置所。
「面会だ」
警察官に促されて、手錠をかけられた一樹が、面会室に現れた。
一樹はガラス越しに見えるリコの姿を見てはっとなった。
リコは複雑な面持ちで一樹を見つめた。
リコの後ろでは慎也が壁に背中をもたれかけて二人の様子を見守っていた。
一樹は無言でリコに頭を下げた。
「それは、私に申し訳ないっていうことなの?」
リコは問い詰めるように言った。
「うん……」
始めの時の自信満々な姿は完全に影を潜めていた。
リコはカバンの中をあさると、かつて婚約式でもらった3カラットのダイヤモンドリングを差し出した。
「これは受け取れません。だから返します」
リコが丁寧に言うと、一樹は黙ってうなだれていた。
「婚約は破棄ということで、私の両親には伝えておきますから」
一樹は黙ってリコの言葉に頷いた。
「刑が決まって出所出来たら、警察署のサイバーテロの対策部署でやらないかと言ってもらえた。これからは罪を償う為にも引き受けようと思う」
一樹の言葉にリコは少し微笑んで頷いた。
「散々他人を引っ掻き回したんだからな。本当なら一発殴らねえと俺としては気が済まねえ」
リコの後ろから慎也が言った。
「けど、お前が罪を償ってリコがそれで許すっていうならそれ以上は言わねえ。言ったことはちゃんと果たせ。俺からはそれだけだ」慎也は腕を組んだまま、一樹とは目線を合わせずに言った。
留置所を出て、リコと慎也はしばらく黙っていた。
見ると慎也の顔は憮然としていた。
「慎也……?」
リコは不機嫌そうな慎也の顔に気が付いた。
「沢田に愛想振りまくなよ」
「え?」
慎也に言われたことにリコはキョトンとした。
「愛想?」
慎也はリコの反応に呆れたように頭をかいた。
「だからその……、他の男とかに笑顔とかあんま見せんなよ!」
リコはようやく慎也がヤキモチを妬いていたことに気が付いた。
チラリと慎也の顔を横目で見てみると、頬を赤らめていた。
そんな風に慎也に思われていたなんてリコは何だか嬉しかった。
「けど……3カラットかよ……」
慎也は今度は別のことが気になり出したようで、はぁっとため息をついた。
「エンゲージリングに3カラットのダイヤなんて、良くアイツそんな金あるよな」
慎也は呆れたように言った。
「確かに、大きくて凄かったよね」
「俺にはあんなの絶対ムリ!」
慎也は両腕を頭の後ろに組んで天を仰いだ。
リコはクスっと笑って見せた。
慎也はスッと、リコの左手を取った。
「あんな高そうなのは無理だけど、俺から必ず指輪渡すから」
リコの手を少し照れながらも愛しそうに見つめた。
リコは微笑みながら頷いた。
「値段じゃないよ。私には慎也から貰える事が大事だから」
慎也は思わずリコを抱き締めた。
「……ってここは警察だからちょっと控えないとな……」
慎也は状況に気が付き、慌てて身体を離した。
廊下をすれ違った警察官に悟られまいと慎也は素知らぬ素振りをしてみせた。
しかし、それが却ってわざとらしく見えて、リコには可笑しかった。




