71.告白 その3
「じゃあ、沢田さんは……」
「ああ、手遅れになる前に引き止められて良かったよ」
二人はようやく朝食を取りながら、慎也は一樹の正体をリコに話した。
「そんな、犯罪に加担していたなんて……」
「しかも興和会とつるんでだからな。虫も殺さねえ顔してとんでもねえことしやがる……」
「……」
リコは一樹に騙されていたことにショックを覚えながら、どうして今まで気付かなかったのか自分自身が腹立たしくなった。
「あたし……ホント、バカ……!」
「リコ……」
「どうしてあんなに付き合っていて、気が付かなかったんだろう」
「あんまり自分を責めんな」
慎也はリコを見つめながら諭すように言った。
「気付いていたら、慎也をこんなことに巻き込んだりしなかったのに……」
後から悔しさが込み上げて来た。
「リコは、何も悪くない」慎也は優しく言った。
「でも……」
「この作ってくれたチーズオムレツ美味いな」
慎也は話題を変えようとリコの手料理を褒めた。
「そ、そう?有り合わせで簡単にしか出来なかっただけだけど」
「いや、マジで美味いよ」
「……ありがとう」
リコは素直に言った。
「考えてみたら、俺ってマトモに誰かと朝飯って食った記憶なかったんだよな」「……」
そうだった。
慎也は唯一の家族であるお父さんとの関係もギクシャクしていて、こんな風に誰かと朝ご飯なんて経験がなかったのかもしれない。
こんなささやかな幸せさえも彼には縁遠かったのだろう。
ひたすら無言で朝ご飯にかぶりつく慎也の姿はどこか幸せそうだった。
「どうする?」
「え?」
慎也の食べる姿に魅入っていたリコに、急に慎也が話し掛けた。
「何が?」
リコは慌てて尋ねた。
「ヤツ、沢田のこと……」
「もちろん、行かないつもりだけど」
「それもそうだけど、ヤツのこと警察に言うか?」
どうやら慎也はリコに重要な選択肢を渡そうとしているらしい。
「……」
確かに、一樹はリコを騙し、慎也を陥れた。
特に慎也には過去の深い傷まで抉りだし、精神的にボロボロになるまで追い詰めた。
「慎也は、どうしたい?」リコは慎也に選択肢を振った。
慎也は食べていた手を止めて黙って考えこんだ。
「俺は、言う方だな」
慎也は短く、しかしかなりきっぱりと言った。
「やっぱり」
「奴が許せないってとかだけじゃなくて、自分の罪の重さを自覚して欲しいっていうか」
「うん」
「今のうちに捕まった方が、まだまだ更正できる機会が出来るような気がする」「私も、同じ」
リコは慎也を真っ直ぐ見て言った。
「じゃあ、一致したな」
リコは無言で頷いた。
「それより、今日は仕事休み取ってんだろ?」
「あ、うん。慎也は……あ、そうか」
慎也は店の破壊事件で仕事を失っていたのを思い出した。
「俺は今、プータローだからさ」
慎也はトーストをかじりながら自嘲気味に言った。
「この後付き合ってほしいところがある」
「付き合う?」
そう言われてリコは慎也のバイクに乗った。




